呪いの臭み (ショートショート)

 ある政治家が、知人から小包を受け取った。開封と同時に生ごみ臭がした。
 以来、体臭が生ごみになった。例の箱から何も検出されなかった。知人も名前を利用されただけだった。彼は立場を悪用して莫大な利益をあげていたため、世間は誰も同情しない。
 どんな臭い消しも効かず、誰かに呪われていると繰り返しつぶやくようになり、とうとう引退した。

 同じようなことが宗教の教祖や著名人に起きた。世間は彼らの嘆きと衰退を楽しんだ。閉塞的な社会に風穴を開けた呪いの臭みを、祝いの くさびと称して報道されるたびにお祭り騒ぎになる。一通りの人物を淘汰したあと、犯人が名乗り出た。テレビの生放送の前で彼は金色の皮膚と八つの瞳と牙のある口元を隠さず叫ぶ。

 ねえタノチカッタ? 今度ハ本格的にヤリマチュヨ?

 上空にはUFOが待機中で、そこから悪臭が出た。以来全人類は生ごみ臭がする生き物になった。文化が衰退していくのを犯人たちは嘲笑うだけだった。

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