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なるべく動物園  (バレエショートショート)

ある レッスン後に先生から各自動物を選んで即興で踊ろうという提案があった。

皆さん、今から1分。ワルツを流します。一斉に踊って動物園のようににぎやかにやりましょう! さあ、スタート!

皆は小鳥や、猫を選び踊った。小鳥なら青い鳥、もしくは白鳥。ねずみならくるみ割り人形。猫なら「長靴を履いた猫」の振付があるので、それをなぞって踊る子が多い。だが藍は、オリジナルの方が面白いはずだと思った。

考えている時間はないので、龍になったつもりで勇壮なイメージで踊った。そこへ井伊野が飛び跳ねてきた。しかも自前の音声付きで。ダンサーは発声なぞしないのに。

きえええ、きえええっ

サル? 
結構瞬発力があって、しかも宙返りもやる。皆は最初はあっけにとられていたが、自然と拍手が湧いた。井伊野の発声に触発されてワンワン、ニャーニャーの声もジュニアから出た。先生もおかしそうに笑っている。

藍はクラシックの基礎を踏まえてオリジナルで踊ったのに誰にも注目されなかった。とても悔しく思った。

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たらはかにさまの企画に参加中です。
今週のお題は、なるべく動物園

今週の藍は頑張っても埋もれてしまって、目立たなかった。上手な子という設定ですが、こういうときもあるということです。

大昔の話ですが、受賞歴のある子がセンターレッスン時に、最前列で真ん中で踊らせてもらえないと気分が悪い、先生からの注意がないとイヤだといっていたのを思い出して書きました。レッスン時は常にそういう強気さがないと、上手になれないのかもしれない。一見おとなしくて内気そうな子も、結構気が強い。上手だったら、そうであるべきなのか……と、万年ヘタレバレエをやるわたしはうなずくしかなかったです。

ありがとうございます。