#0063【イブン・バットゥータ(イスラム世界、14世紀)】

1日1分歴史小話メールマガジン発行人の李です。

今週最後は、イブン・バットゥータです。

0061と0062で紹介した知識人二人と同じように、イブン・バットゥータもイスラム世界の中を移動していきます。

彼もイスラム法学者として各王朝を渡り歩きますが、後世へ与えた影響は、知識体系の提供ではなく、自分の旅の記録を『大旅行記』として残したことです。

14世紀の世界を描写する重要な史料を提供してくれました。彼は「史上もっとも偉大な旅行家」の一人として数えられています。

1304年にモロッコで生まれたイブン・バットゥータは、今週紹介した他の二人と違い、イスラム世界の外にも足を踏み入れます。ギリシア、インド、東南アジアを経て最終的には中国まで旅をします。万里の長城の記述も残っています。

旅の目的は聖地巡礼でした。

イスラム教徒には「六信五行」が求められています。
六信とは「唯一絶対神、天使、啓典(コーラン)、預言者(ムハンマド)、来世(終末の日)、予定(運命)」の六つを信じることです。
五行とは「信仰告白(イスラム教への帰依)、礼拝(一日五回)、喜捨(貧者への施し)、断食(ラマダン月の日中の断食)、巡礼(メッカへの巡礼)」を行うことです。
このうち、「巡礼」に関しては必達ではなく努力目標とされていました。もちろん、メッカまでの旅行が可能な体力と経済力があれば実施すべきというものですが、出来ない場合は免除されています。

イスラム世界ではこの巡礼による旅が奨励されていたことから、国家権力でイスラム世界が分断されていても巡礼者の保護が要請されており、巡礼者が移動することで情報や物の流通がイスラム世界全体で促進されていました。

商人や遊牧民がイスラム教徒に改宗する事例が多くなっていきますが、イスラム法学者でもあるイブン・バットゥータの目からみると正統的なイスラム教徒ではないとの印象を持つこともあったようです。

世界中を旅した後に、自分の旅行体験を『大旅行記』に纏めた後の消息は不明ですが、1368年~1369年頃にモロッコで死去したと伝えられています。

以上、今週の歴史小話でした!

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