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0072-20171210【ビジネスパーソン必読の主要ニュース解説】

今週の振り返り、時事ポイントは以下のとおりです。

1.日本の所得税改革 2.エルサレム問題 3.ロシアドーピング問題 4.ドイツ政治情勢 5.中国経済統計

1.日本の所得税改革

2018年度税制改正で焦点となっていた所得税改革は、首相官邸と公明党が12月6日(水)に自民党税制調査会の所得税改革案を大筋で受け入れて、事実上の決着となりました。

今回決着した所得税改革の中身は、12月14日(木)に纏まる与党(自民党・公明党)の税制改正大綱に盛り込まれ、2020年1月から実施されることになります。

今回の改正で1000億円を超える財源が新たに確保され、個人所得税の改正で税収が増える試算となりました。

今回の所得税改革のポイントは「所得が高めの会社員に負担増。自営業者やフリーランスの所得税を減税」です。

年収800万円超の会社員の「給与控除」を見直すことで、公務員を含む給与所得者の5%程度にあたる約300万人が増税対象となります。

これまでにも、給与控除は2013年に245万円を上限とされていたものが、2016年に230万円、2017年は220万円と段階的に下げられてきました。

今回の改正でさらに減らす一方、会社員だけでなく、全ての人が使える「基礎控除」は増やします。その結果、中低所得層は増減税なしとなりますが、年収800万円超の給与所得者は増税となります。

また、年金以外に収入が年間1000万円を超える高齢者約20万人も「公的年金等控除」を縮小し、増税となります。

ただし、子育て・介護世帯は負担が増えないよう配慮する方針です。

今回の改正は、働き方が多様化する中で、勤務形態などで「控除(=税負担の軽減措置)」に差が出るのを見直すものです。

財政収支の厳しい状況を考えると、高所得者に一定の負担を求めることはやむを得ない措置と思いますが、「取りやすいところから取る」といった安易な姿勢にも見受けられます。

所得がガラス張りに補足される会社員と違い、事業所得や農業所得は透明性が低く、昔から「クロヨン問題(注)」と言われています。所得の捕捉率を高めないと、新たな課税のゆがみを生む恐れがあります。

(注)給与所得、事業所得、農業所得を税務当局が捕捉できている割合が「クロヨン(9割・6割・4割)」や「トーゴーサン(10割・5割・3割)」とされ、会社員以外に対して、適切な課税がなされにくい問題のこと。

児童手当や保育料、介護や医療の保険料なども所得に応じて変わります。所得の捕捉率に格差があると、社会保障制度の公平性を保つことができません。

社会保障を負担能力に応じた制度に変えていくためにも捕捉率を向上させていくことが必要です。

マイナンバー制度と銀行口座情報などを組み合わせることによって、所得をしっかりと補足し、適切で公平な課税制度を構築していくことが、中長期的に財政健全化や国民の負担に対する納得感を高める上で重要であると考えています。

所得税は20年以上も抜本見直しをせず、社会の変化に立ち遅れています。

税の大原則は公平・中立・簡素。

所得の捕捉率ができるだけ高く、働き方で大きく税負担が変わらないしくみが理想です。

2.エルサレム問題

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