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後に世界が翻弄されることとなった一国の選挙

※これは以前FBに投稿したシリーズ第4弾です。つい先ほどBrexitについて触れましたが、同年ポピュリズムという言葉が流行るきっかけとなった重大な選挙がありました。今回は私が幼少期に過ごし、第二の故郷とも言っている米国の大統領選挙について記したものをご紹介します。

2016/9/11【人が団結する時…それは奇跡をも起こすだろう】
久しぶりの政治関連投稿です。イギリスで図書館詰めだった時の息抜きに書いたもので、これまでに見聞きしてきたことをもとに大統領選挙予想分析をしてみました。まあ学生としてのアマチュア分析ですので、あくまで個人の一意見として読んでください。意見・反論大歓迎です!まずは談から始めますが、私が5年間過ごしたワシントン州(WA)は民主党の州なので、周りには常にリベラル思考の強い方々ばかりでしたが、帰国してみると何故か自分は保守的な思想(共和党的ではないです)の方が強くなっていました。おそらくそれは別にリベラルな政策に問題があると考えているわけではなく、ハードな政策の方が現実的で効果的だと感じているからだと思います。これについてはこれ以上述べませんが、そう言った意味で私はこの選挙を必ずしもどちらかを支持するというわけではなく、民主党と共和党の中間にいると考えています。

[※ここから本題] (政策一覧 http://www.bbc.com/japanese/35470423 )
私は「ヒラリー・クリントン」が選挙で勝つと予想する。それは別に現状の支持率を見たからでも、民主党支持者だからでもない。純粋に民主党・共和党の候補者の考えとそれを取り巻く環境を見て感じたことである。
まずは民主党のヒラリーについて記述してみる。ヒラリー氏は当たり前だが、従来の民主党政治家らしい発言が多い。更には強靭な精神を持ち合わせており、トランプ氏との応酬に集中することなく自分のペースを維持していることが評価できる。経歴的にも弁護士、米国大統領夫人、上院議員、米国国務長官とあらゆる経験を積んできたベテランだ。彼女は民主党のために銃規制派、女性層、非白人層からの一定の支持を得ている一方で、イラク開戦に賛成している等タカ派を含む一部の保守層からの指示をも得るために中道・保守的な姿勢も見せている。外交的にはリベラルホーク(民主党タカ派)の立場であり、米国の強いプレゼンスを示すべきとの立場であり、米国的自由主義的価値観の拡散(軍事力や政変)による世界秩序の安定化を方針としているのが特徴だ。こうしたスタンスが仇となり民主党候補を争ったバーニー氏の支持者を巻き込めるかが微妙なところがある。バーニー氏は社会主義的な政策(医療国民皆保険、最低賃金引上げ、インフラ整備投資拡大、富裕層課税強化、巨大金融機関解体、大学無料化)が多く、決してヒラリー氏の掲げてきた政策(雇用創出、インフラ整備、最低賃金引上げ、男女賃金格差の解消、医療制度改革拡充、犯罪司法制度改革、大学学費負担軽減、包括的移民制度改革)や思想と一致しているとは限らない。それに民主党は全国委員会のワッサーマンシュルツ委員長が辞任したこともあり、結束力が崩れかけた時期もある。それでも民主党全国党大会でヒラリー氏は「(トランプ)はわれわれを他国から引き離そうしている」批判した。何より聴衆を惹きつけたのは「女性として主要政党の候補になったこと、そして大統領になることによって、ガラスの天井は壊され、それによる恩恵はすべての女性が受ける」とし、「米国の障壁が崩れ去る際には必ず、すべての人たちにとっての道が開かれるからです。天井がなければ、空は果てしないのです」とした部分だろう。私の中で印象に残ったのは彼女の出自に関する話と「私たちはこの国の亀裂を癒さなければならない。銃だけではありません。人種、移民、その他に関する多くの亀裂です」といった部分である。同大会でオバマ大統領は「アメリカは今でも偉大だ。アメリカは今でも強い。恐怖をかきたて、アメリカ国民をだましている…アメリカン・ドリームは、壁に閉じ込められるようのものではない」とトランプ氏を真っ向から非難し、バーニー支持者がクリントン氏不支持や棄権を表明していることを念頭に「民主主義はスポーツ観戦じゃない。民主主義は誰かがやってくれるではない。自分たちにはできる、それが民主主義だ」とクリントン氏の勝利のために各自が行動するよう強く促した。トランプ陣営はオバマ氏の楽観を「この国に住む数百万人もの素晴らしい人たちにとって、この国は『すでに偉大』とは思えない。数百万もの素晴らしい人たちが、貧困と暴力と絶望のなかで暮らしている…民主党が描くアメリカの姿はほとんどの人にとって存在しないものだ」と真っ向から対立したのが伺える。保守的な民主党候補だが、一貫として主張してきたリベラルな政策により支持者を継続的に集め、仮に大統領となって過激な外交政策に出たとしてもそれが今のアメリカから激変するわけではない。いかんせんブッシュ・オバマ大統領時代から軍事力行使は一貫として変わっていないのだから。それに経験がモノを言うだろうし、落ち着いて力強い発言によりトランプ氏と違い支持層からの魅了が上下することなく、一定した指示を得ているのが何よりもの証拠である。さて、次に本選挙で対立するトランプ氏について分析してみよう。まず彼が当選すると起業家かつ公職や軍務を務めたことがない米国史上初めての大統領になるらしい。何よりトランプ氏が共和党候補者になるとは誰が予想しただろうか。私はこの面白い人は誰だろうかと常に彼の発言に注目してきた。他の候補者と比べ明らかに挑発的で、過激的発言を繰り返す彼に共和党候補者の中で議論に勝てる者はいないだろうと感じていた。何故なら戦術的に彼は直接的に議論をするのではなく、まず相手を掻き乱し、自己防衛姿勢(受け手)になってから余裕を持って自分が優れていることを論じるからだ。論理的に考えれば相手から暴言が飛んでくることはないだろう。だがその油断の隙をついてきた訳だ。ホッブスの『リヴァイアサン』から引用するとすれば「人間はいかなる時も先制攻撃をする体制になければならない。なぜなら先手を打つのが早ければ早いほど後手に回る危険が少なくなるから」ということになる。そして彼がトップになった何よりもの理由はその過激な発言が(パフォーマンスでしかないと言われて1年経つが)、ある程度丸くなったとは言え一貫しているからだ。壁を作り、一部の入国を厳しくし、経済政策を一変し、モンローの孤立主義を思い出させるような安全保障政策を提案する等で「Make America Great Again」することを謳っている。支持者の意見を見てみると①問題の透明性を行っている、②実現したら有効な提案が出ている、③カリスマある経営手腕で政界に新風を呼べるなどがある。①に関しては不況やテロリズムという「直視できる脅威」を言っているだけである。確かに人々は「見える脅威」を中核として団結するのが集団心理である。②は密入国者を防ぐために「壁」を作る(確かに対麻戦争ではメキシコの麻薬カルテルと戦い)、テロリスト・過激主義者が一定の民族のために入国を制限する(対テロ戦争は中東が舞台)、現状の通商貿易は産業をダメにしているからやめよう、日米安保は不公平だから撤退しよう等が実現したら、確かに短期的な利点はあるだろう。だが、まず「人」を一括にまとめて問題発言を言えば反感を買うし(買ってるし)、長期的に見た時に例えば、国境制限(出入国や輸出入)を厳しくするのはグローバリズムに逆らう政策であり、労働力や経済的利益を損ないかねないし、外交上の信頼も失いかねない。政策以前に倫理的な問題として差別発言が問題となっている。③は確かに不動産王としてその地位に君臨するだけの手腕があるのだろう。つまり世の中を徘徊する「見える恐怖」に対抗する姿勢を仮にその政策に現実性がなくても、見せることで市民にそのカリスマ性をアピールしているのである。だが、それを大統領として活かせるのかはわからない。これが決して悪いわけではない…だが、4年、8年後に政権が替わった時にその地位にいる者がそれを引き継ぐことはできないだろうし、新しく方向転換するとなるとまたアメリカは混乱期を迎えることになるだろう。これまで常に疑問だったのだが、トランプ氏はいつの時代に米国を戻したいのだろうか?経済や軍事力は未だにトップに君臨しているし、発言力も低下したわけではないのに。トランプ氏はその過激な発言が結果的に「誠実」と人々の目に映り支持を得てきた。だが、時折の失言により絶対的な指示を除く変動的な支持層が上下しているのが問題だ。11月までにトランプ氏の主張を強化するような事件(致命的不況・テロ等)が起きない限り、ヒラリー氏を超えることはないだろう。だが逆に言えばいつでも逆転できる状況が整っていることは民主党は警戒を怠ってはならないだろう。さて、長くなってしまったが、私は言いたかったことはどちらが大統領になったとしてもアメリカの舵は大きくきられるということだ。多くのメディアを見ているとトランプに対して警鐘が鳴っていることに気がつく。それでもこれだけの支持層があることを考えるとどうやら強固な基盤をコツコツと築いてこれたのだろう。以下の動画は過激な発言を繰り返すトランプ支持者をまとめたNYTImesの動画だ

( https://www.facebook.com/nytimes/videos/10150863688069999/  )。

英国EU投票後にも投稿したが、選挙は「〇〇的視点のみ」で行われるわけではなく、日常的な感情が生み出す不満や疑問から選ぶこともある。特に「恐怖」を対象とするキャンペーンは民主主義を操るツールとしては最も効果的であることは歴史を見ても分かることだ。もし、従来の政治が「恐怖」に立ち向かうことなく、「不安」を除去することなく来たと民衆が判断したのであれば、新しい形態の大統領が生まれるだろう。こうした国民の声を拾うのが政治家の本来の仕事である。民主主義はいかに人々が経済・社会・文化的身分が違っても平等に一票が与えられている制度である。だが圧倒数が「権威」も持って少数の「権利」を攻撃してはならない。それはホッブスの『リバイアサン』の言葉を借りれば…「(国家による)保護と(国民の)服従は相互に規定し合っており、保護を与える権力を持たない者は、他者に服従を求める権利を持たない」のである…唯一正当な国家の使命とは市民を内外的危機から保護すること」にある。選挙を得て選ばれた元首はその付与された極めて巨大な権力を借りて全ての者を支配下に置くことができ、威嚇することによって国内の平和を維持し、外敵に団結して対抗するように向けることができる。それを選ぶ主権者は自由意志に基づいて権力を元首に移譲するのだ。それが意味することはたとえ自分が数億人の中の一人であったとしても、自分の一票の重さを知った上で投票して欲しいということだ。正義の仮面を被った恐怖に気づいて欲しい。そして何より英国EU投票と同じ轍を踏まないことを願っている。最後に12年前にオバマ氏は民主党党大会で、私にとって党派を越えた選挙の本質をついて、言った心に響く箇所を引用して締めくくりたい。「この国には赤い州も青い州もない、あるのは合衆国だ」

…アメリカ合衆国大統領選挙後…

2016/11/10【民主主義が問われる時代へ】
米大統領選挙を終えて絶望している知り合いは多数いるが、嘆きに意味はない。誰もが言っていることだが、これからどうするかである。民主主義とは51%が49%虐げる制度であると同時に力持つ者の自制にこそ真髄があり、強者の自制を法律と機構により制度化したのが民主主義である。むしろ今回の大統領選挙でトランプ氏が選ばれるシナリオを想定して、事後対策をした者が本当の「勝者」となるうるだろう。今回の勝敗を分けたのは一つに「政治家として露骨なご機嫌取り」をしたか否かである。確かにマイノリティーの票は勝敗を分ける要因になりうるが、予期せぬ事態を招くのは「隠れ支持層」の票だ。彼らはご機嫌取りをすることができない。なぜなら自分の置かれている社会的立場と政治的私感が異なるからだ。彼らは政治家やマニフェストの本質を分析している。彼らは自分の置かれている環境と現実を観察して現実的な判断をしているのだ。知能数が高いほど単純な話術に踊らされずに両候補者の本当の政策案を視ているだろう。こんなことを言うと私も軽蔑されるのだろう、だが言わなければならない。今あらゆる方面でトランプ氏とその支持者をを叩く動きが見られるがそれは可笑しい。8年ごとに政党が変わることは第二次世界大戦以降のアメリカの流れであり、別に民主党・リベラリストが常に国権を有している訳ではない。人々は変化を望んでいるのであり、民主党はそれを打ち出すことができなかったのだ。それだけのことなのかもしれない。それを考えもせずにトランプ支持者を闇雲に批判することは民主主義国に住む者としてあるまじき行為だろう。確かにトランプ氏は暴言王で、他にも問題が多いだろう、彼の考えに反対することも正当な権利である。だが、彼に共感する者もいる中で、思想や言論の自由を保障するのが民主主義だ。別に私はトランプ氏を支持している訳ではないが、近年の国際的な流れを考察してみると「現実的な問題(極論も多い)」や「真新しい解決策(実現するとは言ってない)」を提示した者が力を持つ傾向がある。皮肉なことにアメリカは何世紀に渡って海外で戦争を引き起こしてまで拡散させようとしている「民主主義」がこんな場面で半数の国民にとっては牙を剥くことになるとは考えもしなかっただろう。これを「衆愚政治」と言えば簡単だ...衆愚政治とは議論が停滞したり、扇動者の詭弁や知的訓練を受けた僭主による誘導、地縁・血縁からくる心理的な同調、刹那的で深い考えにもとづかない怒りや恐怖、嫉妬、見せかけの正しさや大義、あるいは利己的な欲求などさまざまな誘引に導かれ意思決定をおこなうことで、コミュニティ全体が不利益をこうむる政治状況を指すためだ。だが、一番の問題視すべきなのはこうした環境を作り出した社会であり、それを無視し続けた国民である。選挙において、国民はチェスの駒ではない、候補者の演説を通して思惑通りに動かせるほど人間は単純ではない。感情を持って、自分の信念を信じて動くのだから。そういう意味でも人々はBrixitから何も学んでない。経済・安全保障・人権的恩恵から何も得られない人は「不幸な現実、輝かしく幸福な未来」を見せた方が支持され、勝つという事実に。余談だが、私が仮に米国民だった場合「大統領令による政策」と「最高裁判事の任命権」の二つが最も不安になる部分だろう...今後4年間どのように米国を創造又は破壊していくのか見届けることしかできないが。

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