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天才たちの原論文を読んでみよう

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数学史や物理学史に名を残す、天才たちの論文を原語で追っていくのは、不遇を強いられている知性にとって大きな慰めとなるだろう —— スティーヴン・ホーキング(うそ)
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記事一覧

e^i はいつ、どうやって量子論に混入しだしたのか?

「量子力学」の名称は、今からちょうど百年前に提唱されました。 前に紹介したとおりです。ド…

KK
3日前
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量子力学に伴う「こんな親戚の人いたっけ?」感覚について

線型性とか双対性とか、数学には「〇〇性」が頻繁に出てきます。 厄介なことに、物理学を学ん…

KK
8日前
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量子力学はどうしてこう初学者に冷たいのか

愚痴まじりの前振りから これまで何度か吐露したことですが、私はある段階よりずっと、数学…

KK
9日前
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ブラケット記法で数学の内積を記したらいかんの?と大学生らしき方が呟いていたので「それ共役複素数に特化した内積やよ」と返信。どうやらディラックがこれを発明した経緯を知らないらしい。考えてみれば量子力学の教科書は冒頭から「はい覚えましょう」が目立つね。私が何か解説を書き下ろすべき?

KK
9日前
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迷える数学学徒&物理学学徒たちに、そっと耳うちしてあげる本を

幼い頃、数理物理の方面に進みたかったこともあって、作用素論には今でも心惹かれます。ちなみ…

KK
2週間前
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「行列」は数学・東海道本線の支線

高校数学から一時期姿を消してしまった「行列」。私はああいうのが割と好きでさっさと独習して…

KK
3週間前

書評『ゲーデル 不完全性定理』(岩波文庫)

ゲーデルですゲー出る。映画で話題のオッペンハイマーが「人間知性の限界を示した定理」と大間違いな賞賛を送ったという、あのゲーデル不完全性定理の書物です。 ゲーやんの原論文の翻訳と、その訳者解説の二部構成です。 原論文の日本語訳は数十ページで、残りは訳者コンビによるながあい解説です。 この訳者解説がなかなか読ませる。いい味です。ゲーデル論文についての解説として、むしろダフィット・ヒルベルトの数学思想遍歴を語っていくのです。 私が担当編集者だったら「ここ、たぶん読んでる方の

少年ジャンプでバナッハ空間を語ろう

百年前の最先端とはいえ、現代の目で見てもけして易しくはない、当時の最高知性たちの死闘をテ…

KK
3か月前
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量子力学に「複素共役」が現れたいきさつ

私もそうだったように、量子力学を学びだすと誰もが一度は戸惑う(そして次第に脱落していく)…

KK
3か月前
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きまって量子力学の入門書では省かれるドラマ

先日、こんなのを綴りました。 その後さらに気になることがあって、1925~1927年当時の論文を…

KK
3か月前
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フォン・ノイマンによる論文「量子力学の数学的基礎付け」(1927年)https://gdz.sub.uni-goettingen.de/id/PPN252457811_1927?tify=%7B%22view%22:%22info%22,%22pages%22:%5B5%5D%7D
抽象的ヒルベルト空間(abstrakten Hilbertschen Raum)を定義。

KK
3か月前
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量子力学黎明期の論文を追っていくと1926年にフリッツ・ロンドンが「ヒルベルト関数空間」について言及していますね。肝心の論文を今のところ見つけだせないでいます。 Über die Jacobischen Transformationen der Quantenmechanik.

KK
3か月前
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神童ウィーナーとボルン、大魚を逃がす(1926年)

1925年にヴェルナー・ハイゼンベルクが奇妙な論文を出しました。 原子における電子の軌道につ…

KK
4か月前
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量子力学の本質は、複素数で回る数学的空間を、どうやって実数で回る物理的空間に落とし込むかということに尽きる。ここがわかれば学習者は道に迷う恐れをうんと軽減できるのに、どの教科書も専門書もそこをすぱっと語らない。語ったものはないのでしょうか。