摂取コンテンツ記録〜5月〜

前回に引き続き、ひたすら読んだものをまとめていくだけの記事となっております〜

5月が一年の中で一番好きな月なんだけど、今年は寒かったり雨ばっかりだったり、逆に急に暑かったり、5月の良さをほとんど感じられなかったのが残念。気温でいうと22℃が一番好きです。みなさんは何℃が好きですか。おすすめの書籍とともにぜひ連絡ください。

1  小説部門

◯華氏451度
正直、うーーーーん....という読後感。
期待しすぎていた上に、少し急いで読み進めてしまったから、きちんと読み切れていないように思う。

あらすじはこんな感じ。

舞台は、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりの社会。そこでは本の所持が禁止されており、発見された場合はただちに「ファイアマン」(fireman)と呼ばれる機関が出動して焼却し、所有者は逮捕されることになっていた。(表向きの)理由は、本によって有害な情報が善良な市民にもたらされ、社会の秩序と安寧が損なわれることを防ぐためだとされていた。密告が奨励され、市民が相互監視する社会が形成され、表面上は穏やかな社会が築かれていた。だがその結果、人々は思考力と記憶力を失い、わずか数年前のできごとさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民になっていた。
そのファイアマンの一人であるガイ・モンターグ(Guy Montag)は、当初は模範的な隊員だったが、ある日クラリスという女性と知り合い、彼女との交友を通じて、それまでの自分の所業に疑問を感じ始めた。ガイは仕事の現場で拾った数々の本を読み始め、社会への疑問が高まっていく。そして、ガイは追われる身となっていく。(wikiより)

設定は面白いと思ったのだけど、テーマの面白さと勢いだけでグイグイ読み進められる感じでもなく、中途半端だった。後半の失踪劇はゴールデンスランバーを彷彿とさせて、久々に再読したくなった。

これ、映画もめちゃくちゃ有名なんだよな。以前部活の先輩も勧めてくださったし、戸田山先生が『教養の書』(超面白いのでオススメ)で詳しく書いてくれていたのは書籍ではなく映画版な気がしてきた。見てみよ。


◯ミュージカルスパイス
先月に引き続き、こそあどの森シリーズ第5作。
登場人物たちが不思議な実の粉(=ミュージカルスパイス)を食べて、歌い出してしまうと言う愉快な内容。作品の半分くらいが「歌っている」と言う設定だった。初めて読んだ小学生の私は、これに自分でメロディを付けて読んでいたんだろうか。

第2作でチラリと出てきたホタルギツネが再登場。第6作のはじまりの樹の神話への伏線が張られている。そうだ、「全身で呼ぶ」を教えたのはトワイエさんなんだった、ってのを10数年ぶりに思い出してぐっときた。大好き。やっぱ全巻買おうかな...


◯はじまりの樹の神話
第6作。2巻、5巻に伏線が貼られているので、『森の中の海賊船』と同様に、きっと作者の岡田淳さんはかなり初期からこの物語を構想していたんじゃないかな、なんて想像。
尾が光り人間の言葉を話すキツネに導かれてこそあどの森にやってきた、神話時代の樹と少女ハシバミ。ハシバミは戦うことを知り、ホタルギツネと共にもといた時代へ戻ることを決意する。

ウニマルへやってきたハシバミがスキッパーにものを尋ねる場面は、読み返す前から鮮明に覚えていた。

「これは?」
チーズが牛乳からつくられていることを、スキッパーは知っていました。けれど実際につくったことも、つくっているのを見たこともなかったし、ハシバミが牛を知っているかどうかも疑問でした。そこで、こうこたえておくことにしました。
「それはチーズ。つくりかたは知らない」
「つくりかたを、知らない……?」
ハシバミはふしぎそうにつぶやきました。
「だれがつくった?」
「……知らない」
「どうして、ここに?」
「バーバさんが買った……」
「バーバサン?カッタ?」
「バーバサンっていうのは、ここにぼくといっしょに住んでいるひと。でもいまはよそに行っていて、ここにはいないんだ。買ったっていうのは、……お金ととりかえたんだ」
「オカネ?」
ーーーヒトとモノがつながっていて、おちつく……。
ハシバミのことばを心のなかでくりかえしてみました。
スキッパーときたら、クラッカーやチーズだけでなく、紅茶も皿もカップも、百科事典もストーブも、だれがつくったのかはもちろん、どのようにしてつくったのかさえ、知りません。ところがハシバミは、まわりにあるもののそういうことが、ちゃんとわかっているというのです。
さっきハシバミは、なにもかもわからない、といいました。けれどスキッパーは、なにもかもわからないのは、ぼくのほうかもしれない、と思ってしまいました。

始めて読んだ当時の私もスキッパーと同じように「なにもかもわからないのは、自分も同じかもしれない」と思った。でも「なにもかもわからなさ」でいったら、大人になった今の方がよっぽど「なにもかもわからない」かもしれない。

こそあどの森シリーズの良いところは沢山あって語り尽くせない。
お話の構成の美しさ、個性的な登場人物、大人の物語でも子供の物語でもなく、皆が対等に役割を持って生きていること、魅力的な挿絵、劇中の物語の面白さ、など、好きなところが全部詰まってるのが「はじまりの樹の神話」だと思った。ほー〜んとに好き。8月に劇団四季でミュージカルがあり、他の予定との兼ね合いがうまくいけば観劇しに行こうと思ってます。

◯だれかのもぞむもの
第7作。これも読み返す前から10年以上前の記憶が比較的鮮明に蘇ってきた巻のひとつ。

他人の心を読み、その人が望むものを知って自由自在に体を変化させることができる不思議な生物「フー」と、こそあどの森の人々の出会いの物語。
スキッパーがホタルと再会して、でもその正体がホタルではないのだと気付くシーンが切ない。好き。

◯二分間の冒険
こそあどの森のことをTwitterで書いていたら、後輩が勧めてくれた岡田淳さんの作品。

こそあどの森とは違って、実生活に地続きな感じがする。
ファンタジーではあるものの、舞台は小学校で、主人公は6年生。自分が小学六年生だった時があるのがもう信じられない…と思って過去の日記を引っ張り出して読み返したら、毎日かくれんぼしていた。主人公の方が数百倍しっかりしてる。

不思議な黒猫の力で異世界に連れてこられた主人公、悟は「この世界で一番たしかなもの」を見つけるため、異世界で恐れられる竜を倒すために旅をする。別世界で老人になるくらいの時間が、現実世界では二分間。子どもならではの、クロノスとカイロスのズレみたいなものの表現なのかな〜とか思った。

竜との戦いのシーンはゾクゾクした。単なる勧善懲悪じゃないのも、変に教訓めいてないのもいい。小学生の時に読みたかったなあとも思うし、23歳が読んでも面白い!


2 漫画部門

◯ストレンジ
先月、DMMのキャンペーンで購入。
いろんな2人を描いた短編集。
全体的に共通しているなあと感じたのが、登場人物たちの素直さだった。自分はどちらかというと考えすぎる節があるというか、説明を試みてもうまく言語化できなかった自分の感情を途中から見捨てて無視する傾向にあるので、作品全体に漂う真っ直ぐさが眩しかった。見習いたい。心が洗われる作品。


3 実用書部門

◯日本語の作文技術
the 古典。課題でザッと読んだ。基本的には、確かにそうだよね、という内容が多かったが、ありがちな指摘であっても文章上の実験を通して説明しているのが面白かった。

例えば以下のような感じ。

①初夏の雨がもえる若葉に豊かな潤いを与えた。
②初夏の雨が豊かな潤いをもえる若葉に与えた。
③もえる若葉に初夏の雨が豊かな潤いを与えた。
④もえる若葉に豊かな潤いを初夏の雨が与えた。
⑤豊かな潤いを初夏の雨がもえる若葉に与えた。
⑥豊かな潤いをもえる若葉に初夏の雨が与えた。

同じ語群を用いて文章を作る場合でも、6パターンの順序があり得る。それぞれに差はあるものの、文章が崩壊している訳ではなく、また決定的にどれがわかりやすいか決めることは、この段階では厳しい。
でも、この中の「初夏の雨が」を「雨に」にしたり、「豊かな潤い」を「潤い」にしたり、「もえる若葉」を「若葉」にしたりなど、少しずつ修飾語を変化させていくと、それぞれの場合でどれが一番良いかがはっきりしてくる。

この本の中では6パターン×4種類を並べ、比較検討している。だんだん訳が分からなくなってしまったが、わかりやすさの違いは確かに存在しており、感心した。
単に修飾語の長さだけでなく、言葉の親和性による配置の意識も必要だというのが目から鱗だった。

◯文章読本
日本語の書き方といえば、『陰翳礼讃』を買ったとき、後ろに一緒に収録されていたような気が…と思い出して引っ張り出してきた。上のやつよりこっちの方が好き。谷崎潤一郎は小説あんまり好きじゃないけど、随筆(?)は何度読んでも凄くいい。一緒に収録されている『厠のいろいろ』も『文房具漫談』も好き。

◯DXの教養
最近の大きな疑問の一つが「DXって結局なんなの」であり、その問いを探求するために手に取ってみた本1冊目。定義からさらって少しずつ応用領域まで広げる書方だったのはとてもわかりやすかったのだけど(教科書に近い感じ)最終章が発行元の企業の話ばかりだったのが、結局宣伝か〜〜い、と思ってしまって急に萎えてしまった。

最終的にDXは何をゴールにしているのか、あと組織の根本的な変革なしに業務やシステムのDXはなし得るのか、というのがここ数日で新たに芽生えた疑問。関係あるようで別にないんだけど、攻殻機動隊を見返したくなった。

◯嫌われる勇気
読書会でしばらくビジネス書を読むことになり、その第一弾がコレだった。
伊坂さんが初版の帯に推薦コメントを寄せているということは発売直後から知っていたが、売れている本(しかも天敵、自己啓発本)を買う気になれず、読まずにいた。思っていたよりも面白かったので、読めてよかったと思う。

全体としては新しい気づきもあったし、どちらかといえば好きな部類には入る本だったが、疑問を感じるところもかなりあった。
詳細を述べ出すとキリがないので大雑把にしか書けないが、アドラーの心理学は、結局何も変える気がないのではないかと思った。これは社会的構造によって虐げられることのないマジョリティがより"善く"生きるための方法を示しているに過ぎず、現状に不満を持っている人、何かを変えようとしている人の助けにはならないような気がする。

あと目的論って怖いね。確かに思考の転換としてはめちゃくちゃ面白いけど、劇薬だと思った。

創刊男
じゃらん、ゼクシィ、フロム・エーなど、2000年以前のリクルートを支えた新規事業立ち上げマンによる、指南書のようなエッセイのような。

書かれていることを1000字くらいで要約したら、かなり勉強になるし面白かったが、タメになるポイントの3倍くらいイラつくポイントがあり、全体的な読後感としては「72時間働けますか?の時代の、パワハラセクハラ親父のあの頃はよかったなあ語り」感が否めない。いやほんと、めちゃくちゃタメになることも書いてあるんだけど。

◯ドーナツを穴だけ残して食べる方法
タイトルに惹かれて購入。大阪大学の様々な分野の教員が「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」にそれぞれの専門分野で挑んで行く。

一番面白かったのは数学の章。4次元空間を考え、穴だけ残して食べる方法を説明している。受験数学はあまり得意ではないのだけど、学問としての数学はかなり哲学に近い気がしていて好きなんだよね。ABC予想の望月教授のブログとかめちゃくちゃ面白いのでおすすめ。直感に反することが起きていることを、すんなり受け入れられる柔軟な思考を持ちたいものです。


4 学術書部門

◯はじめてのスピノザ
かなり前に学科の先輩に借りており、ほぼ自分の本棚と同化してしまっていたのを発見して読んだ。すみません、次会ったときに返します。

バトラーの解説本を読んでいた印象が強くて、スピノザ=コナトゥスの人、という認識だったので、何を主張している哲学者なのか概観を知ることができてよかった。ただ、正直飲み込めてない部分も結構多いな... またしばらくして読み返したいが、後半から急に出てきたデカルト哲学の部分読んで、むしろデカルトの方気になってしまった。入門書探して読もかな。

ここまで読んでくれている人はきっと付き合ってくれるだろうから、せっかくなのでコナトゥスとバトラーについてもう少し。
コナトゥスとは、「自分の存在に固執しようとする努力」を意味する。コナトゥスは「承認」を必要としており、コナトゥスのみでは「社会的存在」を十全に捉えることはできない。つまり、コナトゥスはその人間が置かれた社会的状況とは無関係に、誰もが追求できる欲望なのかといえば、そうではなく、承認を求める欲望として再定式化されなければならない。

バトラーはスピノザの影響を強く受けていて、コナトゥスを重要概念として紹介している(バトラーが初めて触れた哲学書はスピノザの『エチカ』だという話もあるらしい!)
ジェンダー・トラブルの後に出版した『ジェンダーをほどく』でバトラーは、「(ジェンダー・トラブルは)ジェンダー規範から外れ、その規範の混乱において生きている人々が、それでも自分たち自身を、生存可能な生を生きている者としてだけでなく、ある種の承認に値する者としても理解できるような世界を想像する試みだった」と述べ、「規範に近づくことができない人たちが生きながら死を宣告されることがない」世界を想像しようとしている。

これ、すごくない?初めて読んだときは感動で思わず一旦本を閉じてしまったし、今こうしてメモからコピペするだけでもなんだか泣きそうになる。バトラーの思想のほんの一部、端っこしか理解できていないにも関わらずこれだけ力をもらえるのだから、ジェンダー・トラブルを一つの思想的支柱としてクィア・スタディーズが立ち上がったというのも良く分かる。

スピノザの話からかなり離れてしまったな。4月に「5月は学術書も読むぞ!」と思ったのに結局ほとんど読めなかったが、どんなに忙しくても1,2冊は読みたいところ。また國分先生だけど、責任の生成を積んでるので読みたいと思ってます。


5 総括

・GWの記憶が薄くて、遥か前に感じる。5月はとても長かったような気がしています。研修も濃かったし配属もされてかなり環境変わったからかなあ。

・この前高校同期とちょっとお出かけしたとき、往復6時間の車中がほぼカラオケで、懐かしのあれこれを久々に3人で熱唱したのが本当に楽しかった。黒バスキャラソンの歌詞をめちゃくちゃ覚えている自分にびっくりしたし、自分はほぼ触れてないうたプリの楽曲が歌えてしまうのもウケたし、アイナナ聴いてると自然と指動いた。冷静に考えて、人生初の通信制限が受験直前の高3の1月なのやばいんだよね。気分転換の域を超えてる。

・周りの優秀さに圧倒されて、自分があらゆる面において全ての人より劣っているような感覚に陥るときもあるのだけど、たまに褒められることを自信として大切にして、とにかく頑張っていきたいものです。週末は割と忙しいのだけど平日夜は暇してるので、オンライン近況報告会してくれる人がいたら連絡ください!!

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