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投資と投機とギャンブル

日本人は投資が嫌い又は苦手と言われることがあります。実際先進国の中では個人資産のうち預金としている比率は最も高い国です。

しかし報道やSNSなどで「投資について」として寄せられる意見や感想を見ると、投資でないものも含めて「投資」として語られていることがよくあるように感じます。

「消費としてではなくて、一度お金を減らして、その結果、リターンを得てお金が増えるかもしれないし減るかも知れない取引」(※)のもろもろを「投資」として捉えている人が多いように思います。

(※)の中には投資も投機もギャンブルも含まれているが、それぞれ、リターンの性質が違うのでリスクや収益率の内容も違うものです。その内容を私なりに整理してみました。


1.投資(Investment)
✓ カネを使わせることと、リスク(信用リスク・事業リスク)を負うことへの対価としてのリターン
✓ 長期の投資全体の収益率はプラス(プラスでなければ成り立たたない)

2.投機(Speculation)
✓ 時価の変動により利益を得ることを目的とする売買
✓ 時価の変動の予想が当たればリターンとなる
✓ 収益率は個々に異なる

3.ギャンブル(gambling)
✓ ギャンブル参加者の閉じた集合の中で、偶然が関わる勝負や勝負の予想の結果によって賭け金のやり取りをする
✓ リターンの内容は勝負等の結果
✓ 偶然のみによって勝負が決まる場合の長期の収益率は手数料分マイナス


まず投資のリターンとは、ヒト・モノ・カネという三大生産要素のうちの一つであるカネを提供することの対価です。

ヒトの労働力の提供に対して対価として賃金が支払われ、モノの提供に対して買取代金や賃料が支払われるのと同様に、カネの提供に対して利子や配当金といった対価が支払われるものです。

投資にはリスクが発生するので、短期的には収益率がマイナスになることもありますが、長期的に考えてもマイナスになると予想される場合には、期待値としても対価が支払われないということになり、そのような投資をする人はいなくなりますから、長期的には投資の収益率はプラスになります。

実際に、債券への投資も株式への投資も長期で見るとプラスの結果となっています。

逆に言うと、長期的にも期待値的にプラスとなるか分からないような案件は、「それは投資ではない」ということになると考えます。

なお、カネを使わせることへのリターンとは、リスクゼロの場合でも使うことができない時間に対して生ずるリターンで、リスクフリーレートといい、信用や事業に対するリスクへのリターンをリスクプレミアムとして、投資へのリターンは分解して考えることができます。


次に投機について

投機とは短期的な時価(取引価格)の変動によって売買差益を得ることを目的とする取引で、目的によりFX取引も先物取引も株式取引も債券取引も投機になることもならないこともあります。

債券取引を投資の例として挙げておいてさらに投機になることもあるというのはどういうことかというと、時の経過によって実現する金利の部分は、カネを使わせる対価なので、投資の結果と言えるが、金利の部分以外の要因でも債券価格は変動し、変動により利益または損失は投資ではなく投機の結果であるということで、投資と投機の混合取引と言えます。

現在のマイナス金利の状況では、日本国債の売買も投機として行われている部分が多いと言えそうです。

投機によって利益が得られるかどうかは、価格の変動に対する予想の正解率によるので、投機の能力が高ければ利益が得られる可能性が高い。投機家全体としてみた場合の収益率は「分からない」ものだと考えられます。

また投機の収益率は長期になればなるほど各人の能力による部分が大きくなり、短期では運による部分が大きくなることにも留意すべきでしょう。


三番目にギャンブルですが、ギャンブルは「参加者による閉じた集合」のなかでのやり取りだという特徴が重要です。

公営ギャンブルである競馬、競輪、競艇、オートレースは、(例外除き)1つ1つのレースごとにそのレースの参加者によって閉じた集合の中でされています。パチンコはホールと個々の客がそれぞれ閉じた集合となっています。麻雀は4人の集合です。カジノも基本的にはホール(ディーラー)と個々の客の集合です。

閉じた集合の中でのやり取りであるので、その合計がプラスになることはない。というのがギャンブルの特徴です。

ただし、完全に運のみで結果が決まる種目(カジノにおける種目のほとんど)でなく、実力が結果に影響する種目では、実力により収益率をプラスとする人はいます。

もっとも、ギャンブルの主催者による手数料率は投資や投機とは比較にも何にもならない程度にとんでもなく高い場合がほとんどなので、長期的に、手数料を超えてプラスの収益を得られる人は非常に少ないもので、その種目におけるトッププレイヤーと言えるでしょう。


投資と投機とギャンブルを分けて考えることの実際上の意味

以上の特徴を踏まえて、投資なのか投機なのかギャンブルなのかを識別することで、長期でプラスの成果を出すことができるかどうかを判断する基準になります。

すなわち、投機やギャンブルに資金を使うことは、その取引や種目に関する人並み以上の能力があって参加者の中で優秀でなければプラスのリターンを得られる可能性は小さいですが、投資の場合には、十分に分散すれば、長期では誰でもプラスの収益率を得られるものなのです。








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