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トヨタが国内初の利回り0%の社債を発行 債券投資家が購入する理由

トヨタ自動車の連結子会社であるトヨタファイナンスが国内の事業会社で初めて、利回りが0%の普通社債を発行するという報道がありました。

(日本経済新聞電子版より引用 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50887920R11C19A0MM8000/


記事では、『日銀は金融調節の一環で定期的に社債を買い入れており、発行価格より高値で売却できれば売却益が得られるためだ。』としています。利回りが0%でも、日銀の社債買い入オペに応募して、社債の取得価額より高く売却できれば売却益が得られることが投資家視点でのメリットになるというものです。

日銀も社債なら何でも買入れ入札をするというわけではなく、対象銘柄の指定はしていますが、トヨタ系の普通社債であればその指定に外れることは無いだろうということでしょう。


今回の社債の概要と日銀の社債買い入れオペの概況を簡単に確認します。

■トヨタファイナンス㈱ 第89回無担保社債
社債総額:金200億円
年限:3年
利率:年0.001%
各社債の金額:金1億円
発行価格:各社債の金額100円につき、金100円00銭3厘
償還年限:2022年10月25日
払込期日:2019年10月25日

発行価格が100円につき100円00円3厘(100.003円)ですので、額面1億円であれば1億3000円が発行価額になります。

利率は年0.001%ですので、額面1億円に対しては1年間の利息が1000円支払われます。

3年後に1億円で償還されるので
取得支出 △1億3000円
利息受取  1000円×3=3000円
償還収入  1億円
計     0円

となり利回りは0%となるということです。


一方で日銀の社債買い入れオペの概況をみると、社債等買い入れオペは、「金融調節の一層の円滑化を図る趣旨から、コマーシャル・ペーパーおよび社債等を、入札によって買入れる資金供給オペレーション。」です。

日本銀行のコマーシャル・ペーパーおよび社債等買入の取引概要によれば
買入店:「日本銀行本店(業務局)とします。」
買入対象:「社債等のうち、日本銀行が適当と認めるものとします。」
一発行体当りの買入残高の上限:「社債等について1,000億円とします。」
買入方式:「買入対象先が売買利回りとして希望する利回りを入札に付してコンベンショナル方式により決定し、これにより買入れる方式とします。」
とされています。

希望する利回りを入札に付してコンベンショナル方式により、とは、利回りが高いほど債券価格は低く、利回りが低いほど債券価格は高くなるので、入札としては希望する利回りが高いものから順に、買入れ予定額に達するまで希望する利回りに基づく価格で購入するということです。

最近3か月及び公表済みの今後の社債等買入れオペの概況は以下のとおりです。(2019年)

7月23日実行 応札額2287億円 落札額1250億円 平均利回り △0.063%
8月26日実行 応札額2756億円 落札額1250億円 平均利回り △0.073%
9月24日実行 応札額2910億円 落札額1250億円 平均利回り △0.054%

10月24日買入(予定) オファー額1250億円程度
11月29日買入(予定) オファー額1000億円程度


今回のトヨタファイナンス第89回無担保社債について、仮に額面金額1億円の残存期間が3年丸々残っているときに、利回りが△0.050%となる価額を計算すると、およそ101,512,000円になります。

つまり、最近の日銀の社債等買入れオペの相場で転売できれば、1億円に対して100万円以上の売却益が得られるというわけですね。




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