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禍記③

 人類が滅亡する時ってどういう状況だろうと考えたことがある。戦争だとか人口減少だとか食糧難だとかそういうことより地球の環境が大きく変化して、それに耐えられなくて絶滅してしまうんだろうなと思っていた。例えば地殻変動とか隕石の衝突とか、宇宙人の侵略とかでもいい。
 しかしどうだろう。もし今回の出来事がもうちょっと感染力が強くて、もうちょっと発症が遅くて、もうちょっと致死率が高かったとしたら。あっという間に世界中に広がって、ある日突然発症して、みんな死んでいたかもしれない。
 隕石なんて降ってこなくても簡単に滅亡するんだ。私はまだ罹患していないけれども、毎日100人200人と感染者が増えているのだから、順番待ちをしているようなものかもしれない。
 本当に不謹慎かもしれないが、変わってしまった世界のことを残念だとは思わない。
 今まで人と人との距離が近くて落ち着かなかった。
 人がごったがえしていたスターバックスには行かなかったが、自粛期間に完全閉店し、再開後は座席間隔を開けて営業してからは頻繁に行くようになった。通勤電車が混まずにゆったりしていたときは本当に快適だった。在宅勤務は朝ゆっくりできて余裕がある。春先や冬以外にもマスクをつけたいときもある。熱があったらゆっくり休んだ方がいい。
 適切な距離をとって、無理しない。そういう世の中になるのであれば喜ばしい。
 その代償はあまりにも大きすぎるけれど、私達が絶望する前に、うまく付き合っていけるように生きていくしかない。

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 ということを実は一か月前に書いていた。結びは「そうはいっても感染者はそのうち落ち着くよね」と思いながら「これから」の事を考えようとしていたのだけれど、実際には状況はより悪くなる一方だった。旅行や会食がすべて原因ではないだろうけれど「それがいいならこれも……」「このくらいなら」が積み重なったとでも言えようか。長く辛い冬になりそうだ。

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