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年間ベストアルバムトップ50 in 2022

今年も食らったアルバム50枚の感想を書いていきます。3年目。過去の記事はこちらから。

50-41位

50位 The Chats – Get Fucked 

13曲28分

オーストラリア出身の3ピースパンクロックバンド。13曲28分から伺えると思うが、どの曲も疾走感のあるパンクっぷりでカッコいい。バンドメンバーもキャラが立っており、ライブでは観客の大合唱。Wet Lengが彼らの曲をカバーしたり、Genesis Owusuとtriple jでコラボしてたり、なんか面白いバンドが出てきたぞ感ある。パンクが好きなら若い人から80~90年代のパンクが好きな人から愛される作品ではないか。 

49位 Destroyer - LABYRINTHITIS

10曲 43分

2011年に出した「Kaputt」で有名なバンドの13番目のアルバム。ボーカルの声質がそんなに好きじゃないから聴くまでそんなに気乗りしない気分で、まあ聴くかっていう感じで聴いちゃうんだけど、やっぱそこまでして聴こうって行為に起こすのって本能的にDestroyerはカッコいいからだって気づいてるんですよね。相変わらず生楽器の音の出方がカッコいい。グルーヴ感がやっぱベテランのバンドらしく、テクニカルさを主張しているわけでもないが、カッコよさがにじみ出てる感じ。
 

48位 Charli XCX - CRASH

12曲33分

この人はもうアルバムを出すだけで、どんなカッコいいポップが出てくるかワクワクさせてくれるような領域までとっくにきてますよね。キャッチーなエレクトロポップなサウンドに囲まれたポップソングが並び、退屈なバラードが無く33分と短い構成なだけに気軽に聴ける軽快さが今の時代に合っているなと思う。それでもアルバムの最初から最後まで一貫とした同じようなサウンドが立ち並んでいるので、後半はちょっと飽きてくるのでこの順位ではあるが、それでも今年のアルバムの中ではかなり良い。
 

47位 Djo – DECIDE

13曲36分

Djoというステージネームをもつジョーキーリーさんはネトフリで大人気のストレンジャーシングスに出ている俳優さんらしい。それを聞いて納得したのはこのアルバムがドラマチックな音作りで、なんというかドラマや映画の世界みたいな幻想的さを感じるポップスだなって感じだと思ったから。雰囲気作りが仕上がっている。音楽自体は似てはいないが、どことなくElectric Light Orchestraのひねくれたポップの匂いがしていて、この人の過去の作品では影響元に挙げていたらしいから、今作でも出てきているのだと思う。あとは70年代後半からインスピレーションを受けた作品だなと思う。妖しさのあるポップスっていう見方も出来るし、今の時代にあえてこの音楽はなんか渋い。だからカッコいい。

46位 Ethel Cain - Preacher's Daughter

13曲 75分

アメリカのフロリダ出身の歌手による作品。音楽的にはゆったりと重々しい雰囲気の曲を歌い上げる感じのが多くて、そこにアメリカーナな空気があったりして、どれも長尺な曲が並んでいて、聴いているうちに陶酔していくような曲が多い。こういうスタイルは今の時代、Lana Del Reyが先にやっているので、どうしても彼女の存在を思い出させるが、中にはTaylor SwiftとLordeの中間みたいな底抜けに明るいAmerican Teenagerっていう曲があるのだが、これがめちゃくちゃ良いポップ。そういうダークさとポップな一面もあって、彼女のポテンシャルやこれからに期待できるアーティストだなと見出したものの、この作品はまだ唯一無二なところを出しきれてないし、75分と長いしで、ちょっと惜しいと思える作品になった。

45位 Ravyn Lenae – Hypnos

16曲 53分

アメリカのR&Bシンガーによる作品。心地の良いR&Bの曲が並んでいて快適な時間を送れる作品である。それにNaoとかネオソウルが好きなら聴いたほうが良いってぐあいに勧められる。どの曲も良くてハイクオリティな精度の作品だなと思うけど、「めちゃくちゃ好きだ!」って思うほどの曲に出会えなくて少し決め手に欠けた作品だなと思った。でもまあランキングに入れるぐらいなので良いアルバムだっていうのは間違いない。

44位 Logic – Vinyl Days

30曲 71分

この一世を風靡したラッパーをこの作品を聴くまでは一回も聴いたこと無くて、確か引退するのは知ってるけど、これが引退作なのか復帰作なのかも曖昧なままだ。多分復帰作。それでこの人がどんな路線でやってたかは知らんが、今作は90年代のヒップホップみたいで硬派なラップが聴ける。ゲストにもRZAやAZやDJ Premierもいたりして、どんな事ラップしてるのか把握してないけど、この作品は90年代のヒップホップ黄金時代にリスペクトを向けた作品なんだろなってのは何となく思う。収録曲は30曲と長いけど、一つ一つ短いのでそこまで気にならない。声質も良いし、ラップも上手いし、良いヒップホップ作品でしたね。

43位 billy woods – Aethiopes

13曲39分

ニューヨークを拠点とするアメリカ人ラッパー。Danny Brown程ヘロヘロしてないけど、それなりにヘロヘロしていて声質が割と好みな感じで、ビートも変質的でまさにエクスペリメンタルヒップホップ。Danny Brownの例えば2016年のアルバムはヘロヘロ声に変態的なアップビートで頭揺れるけど、この作品においては全体的に渋めで、聴いていると顔が渋くなってしまうような味のある作品。今年の色んな作品の中でもめちゃくちゃ評価されてるけど、それほど話題になってなさげなのはやっぱ渋いからだと思う。名作。

42位 Florist – Florist

19曲 57分

ニューヨークのバンドによる作品。今年のインディーフォークは目立ちはしないものの、なんやかんや良作が出そろっていて、(まあインディーフォークっていうジャンル柄、毎年こういう傾向かもしれないけど、)今作はそんな調子で良いインディーフォーク。19曲57分とボリューミーな中身はアルバムの色は最初から最後まで同じカラーに染まっていて、一曲目から虚ろ気な雰囲気から始まり、癒しとかゆっくりな時間を演出できる。フォークにはフォークにしかできないムードを作り上げるが今作はそんな需要を適える作品だなと思う。

41位 Courting – Guitar Music

8曲 31分

UKリヴァプールのロックバンドのデビューアルバムで、ポストパンクにエレクトロニクスな要素をいくつか融合させた音楽で、オートチューン×ポストパンクを合わせた楽曲とか新しいなと思わせられ、最近のバンドでも面白い試みをしている作品という印象。エレクトロニクスさがあんまりやりすぎなだと、インテリロックバンドだなっていう印象持っちゃいそうだけど、このバンドは溌溂とした若手バンド!っていう音作りでまた活きの良いバンドが出てきたな!って気分になる。8曲31分と聴きやすいので、まあとりあえず聴いとけ!って言っておきたい。

40-31位

40位 Petrol Girls - Baby

11曲34分

ロンドンのパンクロックバンド。今年はラウドな音楽から結構お気に入りのアルバムを見つけたけど、その一つはこれ。この手のパンクロックは「riot grrrl」と呼ばれる、フェミニストによるパンクミュージック、音楽とフェミニズムや政治を組み合わせたものに当てはまるらしい。まあ音楽的には90年代のロックっぽい雰囲気があって、パンクバンドと呼ばれるに相応しいうるささも兼ねつつ、キャッチーなところが気持ちいいところを突いてきて素晴らしい。
 

39位 MICHELLE -  AFTER DINNER WE TALKS

14曲 37分

ニューヨークを拠点とする6人組のインディーポップバンド。男2人、女4人とここまでは見かける事もあるかもしれないが、女性4人がボーカル、パート分けして歌ったりして、割と珍しい構成のバンドだな~って思う。どういう付き合いでそのバンド構成に至ったの?って思って調べたら最初は男2人が結託して、女性陣は後で入ったとか。Wikiによると、デビューアルバム「HEATWAVE」では面々と合う前に作られたとか。そのうち誰かソロになったり脱退しない?とか、よこしまな考え実は持ってる事は許して欲しいんだけど、肝心の音楽は結構ノスタルジックな雰囲気のあるR&Bで、10代から20歳前半のメンバー構成の割には、渋めで味わい深い音楽やっていると思う。

38位 Diplo – Diplo

14曲 52分

Diploってなんか色々やってるけど、ちゃんとアルバム聴くのは今作が初めて。Miguelと歌った「Don't Forget My Love」が神曲だったので、ついでにアルバムも聴くか~、でもこの手のDJのアルバムはそこまでタイプじゃないけどな~っても思いながら聴いてみたら結構良かった。Miguel以外にもLeon Bridges、性別判断が難しい中性的な声を持つKareen Lomax、TSHAやJungleもいて、なかなか良いチョイス。作風はいわゆるディープハウスで、EDMとかパーティーピーポー等のウェイ系とは真逆のクールなハウスサウンド。それで色んな曲ボーカル付きで、僕みたいな歌メロもちゃんと楽しみたい!って人も楽しめる。クールでスタイリッシュで踊れるアルバム。

37位 Alex G – God Save the Animals

13曲44分

アメリカのフォークシンガーによる最新作。やっぱ現代のインディーフォークを代表するシンガーだなと思わせる、他の同じ界隈のものとは次元の違うオリジナリティある作品だなと思った。個人的には今作いたるところに様々な声が聴けて、バラエティ豊かなボーカルワークとそのセンスがカッコよくて、この辺りが他のインディーフォークには無い点だなと思った。

36位 redveil – learn 2 swim

12曲 35分

聴き終わった時、カッコいいアルバムだな~という驚きと、この人がまだ18歳という若さという2重の驚きがあった作品。アメリカのラッパーで、個人的にはSabaのスタイルに近いジャズラップで、それよりかはオルタナティブヒップホップっぽいノリを感じる。僕はオルタナティブヒップホップってBROCKHAMPTONみたいなヒップホップの枠に収まらず世間ウケできるキャッチーな曲も歌うっていう目線で見ているんですけど、つまりはredveilの今作もコアなヒップホップファン以外にも気に入られる聴きやすさが備わっているっていう感じです。「Automatic」の後半盛り上がる部分はアルバム屈指の名シーンで心惹かれますね。ちょっとラップにぶっきらぼうさがあって、もうちょい柔らかくラップできたらもっと聴き心地よさそうだな~と素人ながら思った。

35位 TSHA – Capricorn Sun

12曲50分

去年あたりからちょいちょい自分の中で歌モノなハウスが自分の好みだと自覚し始めていて、今作はそんな自分の好きを突いた作品。ロンドンベースのDJでUK感あるスタイリッシュなハウスサウンドがお洒落。洋楽は好きだけど、時々聴くみたいなスタンスのライトリスナーな人々に勧めるのも安心!って感じの「お洒落でスタイリッシュ」感が良いね。なんか軟派な感想文になっちゃったけど、個人的には上記のdiploと同じ理由で好きって感じ。つまりはdiploの作品が好きならTSHAも聴けるし、その逆もOK。

34位  Foxes – The Kick

12曲40分

かつてZeddのClarityでボーカルを務めたことで脚光を集めた女性シンガーによる作品。上半期の段階ではトップ10ぐらいにいたけど、聴きなおしてこの位置に。結構好きなタイプなダンスポップ。Carly Rae Jepsenが好きな人には合いそうな作品。

33位 Foals - Life is Yours 

11曲 41分

前作の時点でメンバー減ったけど、今作ではもう一人減って3人に。Foalsはなんとなく5人の集合体でカッコよく映えているという勝手なイメージもあって3人って寂しいじゃんって思ってたし、新曲もちゃんと聴かずにさらっと聴いた感じだと軟派なインディーダンスロックって印象受けたし、Foalsまでも最近流行りの30分そこらで終わる消化不良な作品出すなよと思ってたけど、いざリリースされると、まったくそれは杞憂で良い作品だったので、良かった。個人的にはFoalsの良さはグルーヴの重さにポップなメロディが好きだったけど、年々メンバーが減るにつれ、その要素は無くなってきたとは思いつつ、まだグルーヴィーな演奏はあるし、演奏の重さが軽くなった分が、かえってこのバンドの新しい魅力のように感じた。今作はFoalsに新しいリフレッシュさが見える作品。

32位 Grace Ives – Janky Star

10曲 27分

個人的に少ない収録曲、短い収録時間のアルバムってあっさりしていて内容が良ければ好きだが、あっさりしすぎると物足りないなって思っちゃうんだけど、最近の作品ってそういうのばっかで、「こういう傾向はいかがなものか」ってちょっと思うんだけど、この作品においては、あっさりしていて内容も良い。作風はインディートロニカ。まさに「インディー」って感じのオタク感、なんか最近の流行りに媚びなさそうなメロディーとセンスが独特で良い。

31位 Beach House – Once Twice Melody

18曲 84分

元々批評筋の評判の高いBeach Houseの存在は知っているけど、好きでもなく嫌いでないぐらいの興味の無さではあったんだが、今作なんとなく聴いてみたら結構好きな作品だった。ノイズが流れるドリームポップを聴いてると、なんだか70年代の浪漫な雰囲気を感じて、ABBAとかElectric Light Orchestra的なノスタルジーさ溢れるポップを想起させる音楽だった。シンセやらギターやら「ボワーーー」とした音を聴き流していると銀河鉄道的な映像が脳内に流れてすごいロマンチックで素晴らしい。

30-21位

30位 Cass McCombs – Heartmind

8曲 42分

2003年からアルバムを出しているキャスマックームスさんはアメリカのシンガーソングライターで、フォークロックやオルタナカントリー、サイケデリックなジャンルに属していて、ザ・アメリカのアーティスト。なんか気の利いたこと書けないんだけど、ほんとに高水準なフォークロックとかカントリー、アメリカ特有の乾いた空気感のある作風が心地よくて、この手のジャンルはカントリーすぎると、よくわかんないし、メロディの起伏が無いと魅力的に感じないなあとは思うんだけど、この人の今作はほんとに良い音楽で何度聴いても飽きないメロディ作りであるところに惹かれましたね。

29位 Saba – Few Good Things

14曲47分

 Sabaはシカゴのラッパーで、Chance the Rapperの大ヒット曲、Angelsにゲスト参加していて、あの曲はアップチューンだったけど、Sabaの作品はどちらかというと雰囲気落ち着いたジャズラップなんですよね。チルさとシリアスさが良い具合のバランスで、チルなところで心地よさを覚え、シリアスさなところで聴き入っちゃう感じ。Saba本人のラップはめちゃくちゃ上手くて、早口のフロウもカッコいいし、少しねっとりした声質がR&Bやネオソウルの雰囲気もある今作に合っている。

28位 Laufey – Everything I Know About Love

13曲44分

Laufeyはアイスランド出身で現在はロサンジェルスを拠点にしている女性シンガー。彼女の作風はジャズポップとベッドルームポップをミックスした音楽ってWikiに書いてあるけど、まあその通りでして、ジャズの落ち着いた気持ちの良い雰囲気とベッドルームポップの身近な距離感が現代の癒しを求める人々に良い作品だなと思う。彼女の歌い方も昔のブルースやジャズボーカルから影響を受けていて、ベッドルームポップさが若者にも合うし、昔ながらの歌い方が中高年にも気兼ねなく聴けると思う。

27位 The Beths – Expert In A Dying Field

12曲 44分

ニュージーランドのバンドによる3作目のアルバム。The Bethsは2020年のセカンドから知ってあのアルバムも良かったけど、今作はそれ以上の印象を受けた。今作を聴いていると、「これぞインディーロック」って感じで、「最近こういうインディーロック聴いてなかったなあ」とノスタルジックな気分にもさせる良いギターポップ。溌溂としたパワーポップ、透き通った声質の女性ボーカル、そして歌メロ、どれも良い。青春。

26位 Nick Leng – Spirals

15曲45分

Nick Lengは南アフリカ出身で現在はロサンジェルス在住のシンガー。この人の音楽はもっと聴かれても良いし、個人的に現存の知っているアーティストの中でもトップレベルのイケメンなのにそんなに話題にならないのは不思議。作風はインディーポップ、バロックポップ、ジャズ、フォーク等多彩、バラエティ豊かなアルバムでインディー音楽好き万人に好かれそうな作品だなと思う。Spiralsって曲では中盤に転調してパレードのような盛り上がりを見せる曲でカッコいいし、風通しの良い音楽が中心だが、Bobbyではテクノに挑戦しているし、色んな音楽書ける才能あるアーティストだと思うから、もっと売れてほしい。

25位 Gang of Youths – angel in realtime.

13曲 67分

Gang of Youthsはオーストラリア出身のロンドンベースのロックバンド。このバンド、結構化け物級であり、2017年に出たサブスクには無い名作のセカンドではオーストラリア版のグラミーと呼べるARIA Music AwardsではAlbum of the Yearに選ばれているし、今作もどうやらまた候補に挙がっているみたい。今作は前作程の男臭いロックの熱はおさまっているものの、ポップに力を注いだって感じ。このバンドの魅力はまずリスナーを惹きつけるバイブスの高いボーカル力。例えるならBruce Springsteenみたいな男臭い説得力のある感じ。それとストリングスの使い方が絶妙で、今作のポップな作風にストリングスが加わっていることで壮大さが演出されていて、他のバンドに無い魅力がある。名作具合では2017年の前作が勝っているが、より万人ウケするならこっちの方っていう印象。

24位 FKA twigs – CAPRISONGS

17曲 48分

FKA twigsは過去2作のアルバム聴いたけど、そこまで自分のタイプを通ってなくてそこまで印象無いんだけど、今作のミックステープ聴いて、「あれ?こんなにFKA twigsって聴きやすかったっけ?」って印象を覚えた。もうちょい前衛的な音楽やってるイメージあったけど。今作は実験的な要素はあるものの、気難しく構えずとも楽しめるダンスR&B。中でもoh my loveは今年聴いた楽曲の中でも特にお気に入りの楽曲で、めちゃくちゃキャッチーなメロディに「アイ アイ アイ アイヤー」とか「なんとかかんとかワッサー」とかゆるいフレーズがなんか耳から離れない。

23位 Viagra Boys - Cave World

12曲40分

スウェーデンのポストパンクバンドによる1年ぶりのアルバム。前作より完成されてるなって思う作品で、ガチャガチャしたダンスパンクはかっけーし、ボーカルはちょっとTom Waitsっぽい雰囲気あるし、楽曲のひねくれた実験的なアレンジ自体もTom Waitsをなんだか感じるね。そのセンスが滅茶苦茶良くてこの位置にいるわけですね。前述したとおり実験的なダンスパンクではあるけども、インテリさを売りに出すより、パワーで押し切ってる脳筋っぽさが、個人的にロックバンドに掲げる理想的なイメージであって、このバンドは信頼できるなと今作を聴いて確信した。

22位 Father John Misty - Chloë and the Next 20th Century

11曲50分 

2017年、来日した数か月に好きになってもっと早く聴いとけば良かったと思ったFather John Mistyの新作。FJMといえば2018年のアルバムがくたびれた顔しているジャケットに冷めた空気でのフォークロックと渋い作品であったが、今作はストリングスを多用し、ジャズスタンダードでもあり、昔のアメリカの音楽を根差したトラディショナルポップ。何より一曲目のChloë が20年代のジャズサウンドに歌をのっけた曲がつかみとしては最高。一回目聴いた時はこの昔の音楽を根差したコンセプトに気付かなくて、なんか地味な作品だなと思っていたが、聴き通していくうちに、Father John Mistyにしかない歌い回しに心惹かれ、上品な作風に惹かれ、良い作品だなと気づいた。

21位 Tomberlin - i don’t know who needs to hear this…

11曲 50分

USフロリダ出身のシンガーソングライターで、今年のインディーフォークでトップレベルで良い作品だと思う。静寂な空間の中にアコースティックやピアノの音、そこにTomberlinのボーカルがのっかっていて、聴いていると何もない野原で寝転がりながら夜空を見ている映像が脳裏に浮かぶ。Joni Mitchellとか聴いているとフォークの癒しサウンドにキラリと惹かれる歌メロがたまに出てくると、もうその一瞬で心奪われる。そういうのがTomberlinのこの作品にある。2020年のPhoebe Bridgersの作品が好きならコレも気に入るはず。

20-11位

20位 Fred Again.. - Actual Life 3 (January 1 - September 9 2022)

13曲 40分

ロンドン出身のプロデューサー、Fred againの新譜。Fred Againは過去2作聴いているけど、今作が一番完成されていると思うね。今回はアルバムとしてなんかコンセプトが筋通っている感じがする。乾いたUKハウスサウンドで、この先来たる冬にぴったりな音だと思う。ハウスミュージックは基本踊れるものが多いけど、Fred Againの音楽はなんかアンビエントな空気もあっていて、これを聴きながら人通りの無い道を歩いていると音楽と視界に広がる世界がマッチしてよりエモい気持ちになる。今作はアルバムとしてなんかストーリー的なものがあって、聴き通していって終盤にあるWinnie (end of me)を聴くとエモーショナルすぎて感情が爆発しそうになってしまう。

19位 Black Country, New Road – Ants From Up There

10曲 58分

AOTYのユーザー評価で今年一番の評価を受けている作品。僕はポストロックがそこまで身体に馴染んでないんで、昔の評判高い名作でもそこまで良さが伝わらなかったりするけど、これは例外。美しい。サックスやヴァイオリンの綺麗な旋律など演奏陣は時には繊細に、時には暴れまわる。美しくも作風はポップネスで親しみやすさもある。確かにこれは現代では唯一無二感あるアートだと思う。

18位 Sharon Van Etten -  We've Been Going About This All Wrong

10曲39分

アメリカはニュージャージ州出身のシンガーソングライター。今年のロック作品の中でもお気に入りの作品。アメリカ感あるドライでどよんとしたインディーロック。暗いけど骨の芯まで染みわたるような美しさがあって、そしてI'll TryやBornなどではサビでは熱い展開が来て、それがロック作品として良いなと思える。一見地味だけど、聴き入るうちに魅力にハマる曲が多い中、後半でMistakesでシンセが目立つポップソングをあえて後半に置くのも曲順としては意外で面白い手筋。好きな作品ですね。

17位 Arlie - BREAK THE CURSE

11曲 41分

今年のダークホース的存在。あまりにも素晴らしく感じたので今年の年間ベスト10に入りそうだったけど、最終的にはこの位置。ナッシュビルのインディーポップバンドだけど、なにより曲が滅茶苦茶良い。爽やかなインディーポップで、やっぱこういう音楽聴いていると、昔はこんな音楽いっぱい聴いてたなあという懐かしさを覚えるし、実際曲が良くて感動する。 夏にぴったりの甘酸っぱさがあって、Wallowsの1stを聴いた時に感じたのに似た良さを感じる。曲のアレンジも良くて、段々とバイヴスが高まって盛り上がるKarmaや甘酸っぱいポップであるPoppin、Glass Animalsっぽいアレンジのdon’t move、ビートルズに影響を受けてそうなサイケポップのcool等沢山の魅力的な曲に溢れる。サマソニに合いそうなバンドだが、知名度が無いのが悲しい。LANYみたいなが日本で火が付いたような売れ方してほしい。

16位 Big Thief -  Dragon New Warm Mountain I Believe in You

20曲 80分

今年のロック好きの中で最も盛り上がった作品の一つ。現代のフォークロックバンドの一つの到達点というか、このバンドのポテンシャルを超えるバンドってこの先なかなか現れなさそうってぐらいに完成されている。一曲目のChangeから名曲だし、その次のTime Escpaing、Spud Infinityのリズム感や楽曲の作り具合から他のバンドと比べて非凡。録音環境やら音響やらサウンドデザインがもう王たる風格って言う感じでめちゃくちゃカッコいいんだよな。フォーク、カントリーやロック等のUSロックのくくりで現代最高のロックバンドだなと思う。あとBig ThiefってThe Bandって比べられていて、確かに両方とも最高の楽器隊がいて理想的なサウンド鳴らしているのは分かる。でもまあThe Bandって泥臭さがあって地味中の地味っていうポジションが自分好きなんだけど、Big Thiefはどちらかというとインテリコースって感じで、The Bandみたいな愛し方は出来ないな笑

15位 The Callous Daoboys – Celebrity Therapist

8曲36分

今年は珍しくメタルで自分に合う良盤多いなあ~って感じる中でコレは最も気に入った作品の一つ。メタル界隈でこの人たちがどんな評判をしているのか全く分からないんだけど、バンドメンバーも美男美女、曲も華があって案外聴きやすいし、Code Orangeみたいなメタルの期待バンドって感じに思えるんだけど、実際どうなんだろう。この人たちの音楽はマスコアってジャンルみたいで、マスコアがどんなもんか全然分からないんだけど、曲を聴く限りではやたら細かく刻まれてるリズムの事を指すんだろうか。イメージなんだけど、この手の音楽のバンドってメタルのサブジャンルの一つでいわゆるマニア受けで、自分みたいな普段メタル聴かない層には難しい印象あるんだけど、The Callous Daoboysの今作は激しいメタルなんだけど結構ポップで聴きやすくてカッコ良さを見出せる。どっかのインタビューでボーカルはメタルじゃなくて他のジャンルばっか聴いてたって言ってた気がするんだけど、そういうところでも音作りに反映していて、自分みたいなメタル聴かない層にもハマったのかなあ。

14位 The Weeknd - Dawn FM

16曲 51分

架空のラジオを仕立てたコンセプトアルバム。つい最近The Weekndのアルバムリレーをしていたのだが、The Weeknd、めちゃくちゃ素晴らしい曲もあるけど、アルバム単体で見ると中盤から後半に微妙な流れもあったりしてアルバムとしての完成度はちょっと惜しいかなと思うのが個人評としてStarboyまであったが、その次のAfter Hoursはアルバムの完成度も高くなって、序盤から最後まで良い曲だった。まあ個人の好みっていう話だと思うんだけど、今作のDawn FMもAfter Hours程ではないけど、良いアルバムの流れを汲んでいるような気もする。それはやっぱコンセプトアルバムっていうテーマがあって、「アルバム」として評価すると以前より完成度高まっているように思える。The Weekndは歌い方が確立されていてめちゃくちゃ歌が上手いんだけど、今作は例えばGasolineの低い声の歌い回しは今までに無い展開を試していてこの曲は結構好き。今作はtiktokでもバズったりしたポップスターという目線を勝手に考えると、ポップソングではあるけれどもちょっと毒っ気があって、パーティーとかそういうものに皮肉な目線を与えてるような感じもする。アルバムリレーをやったってこともあるけど、The Weekndをアーティストとして最近尊敬の念が強くなってきてますね。

13位 Alvvays – Blue Lev

14曲 38分

カナダのインディーポップバンドによる3作目となる新作。Alvvaysは1stからドリームポップ好きにとって「正解!」って感じの好みのドストレートな音を鳴らすバンドですね。そして今回も正解だった。ドリームポップ、シューゲイズな路線で言えばBeach Houseもそうだったけど、Alvvaysのはどちらかというと青春時代とか甘酸っぱい若い頃の記憶を思い出させるサウンド。別に自分の若い頃こういう音楽聴いてなかったけど。音楽は時折マジックのように働き人の心を動かす。ドリームポップって個人的にノスタルジーな気分にさせたり、ドリーミーなサウンドによって精神的ストレスから逃れる意味で逃避行的な役割を期待しているんだけど、そういう意味でこの作品って求めるドリームポップサウンドだし、ドリームポップ好きには絶対聴いてもらいたい良作になっていて、何年経っても価値が残り続ける作品になるなと思いますね。個人的にはPomeranian Spinsterっていう曲が前のめりなメロディのパンクな作風が今作一番のお気に入りですね。カッコいい。

12位 Loyle Carner - hugo

10曲34分

UKのラッパーLoyle Carnerニキによる三番目の新作。Loyle Carnerといえば2017年の1stからめちゃめちゃ話題になっていて当時聴いたけど、正直あまり良さが分からなかった。まあ多分当時UK訛りのラップにそこまで身体に馴染んでなくてハマらなかったと思うんだけども、あれから数年色んなヒップホップを聴いてきて今回聴いたLoyle Carnerの新作、めちゃめちゃ素晴らしいなと思いました。つってもヒップホップの知識まだまだ全然無くてニワカだなっていう保険をかけたうえで、ニワカな事書かせてもらうと、今回のLoyle Carnerの新作はジャズラップっていう系譜で、ジャズラップといえば前述したSabaも同じ路線だったけど、Sabaの声質はソフトな感触で、軽やかさがビートのチルい雰囲気に合っているけど、対してLoyle Carnerの声質はどちらかというと固い、かってぇ声質でより渋い。同じジャズラップではあるけれども、こっちは渋カッコいいなっていう印象ですね。ビートはなんだか空間を感じるものでこういう余白のあるビートはこの先来たる冬の季節にも合うなって個人的に想いますね。

11位 Arctic Monkeys - The Car

10曲 37分

現在のロックで最も有名なバンドによる新作。僕の周りも「Arctic Monkeysいつの間にこんな感じになってしまったん?」って戸惑いを隠せないくらいにバンドは変わってしまったし、その分成長したと思う。まさに今作は王者の貫禄。リアルタイムで1stから見てきた人はこうなるとは思わなかっただろうな。だからこそロックは面白い。とは言っても、僕は前作は良作程度の評価で大好き!ってポジションに踏み込めなかったんだけど、その理由としてはAlex Turnerのボーカルがどうしても鼻につくっていうかあの感じが好きになれなくて、今作もそのまま不安を抱えてたんだけど、今作は良い意味で不安を裏切る、素晴らしいクオリティの作品になりましたね。作品の路線は前作の延長線上といったところで、更にストリングスとかどっかの映画のシリアスシーンで流れているような聴き馴染みのあるバロックポップ風味に仕上がっていて、個人的にこういうストリングスの使い方は万々歳なほどウェルカムなんで、一曲目を初めて聴いた時から心惹かれましたね。前作苦手だったAlex Turnerの歌い方も今回は気になる事も無く、完成されたサウンドスケープにぴったりと合っている、最初はガレージロックを歌っていたとは思えない程、「この手の音楽の専門家だったんですか!?」と思わせる世界観の作り方が上手くて素晴らしい。とある作品が無ければトップ10濃厚だったけど、今作は今年一年のアルバムの中で最も素晴らしい作品の一つだと思う。

10-1位

10位 Kendrick Lamar – Mr. Morale & The Big Steppers

18曲73分

恐らく世界で一、二を争う新作のハードルがめちゃくちゃ高かったKendrick Lamarの新作。(もう一人はFrank Ocean)初めて聴いた時はそこまで腰を落ち着かせて聴いた状況じゃなくて、この内省的な内容に「おいおい、微妙か?」と思ったわけだけど、改めて落ち着いて聴くとあまりの仕上がり具合に感動を覚えた。流行りのヒップホップって全然知らないんだけど、最近はハウスビートが人気なのは何となく分かるんだけど、Kendrick Lamarの新作はそこに媚びるまでもなくより自分の世界に目を向けていそうな内省的な内容になっている。でもただ暗いっちゅうわけでもなく、ビートの心地よさは素晴らしいし、やっぱKendrick Lamar死ぬほどラップが上手い。"N95"は今作ではアップテンポ寄りな曲でノレるし、Kendrickがたまに出す酔っ払いみたいなフロウも死ぬほどカッコいい。誰が酔っ払いフロウがカッコいいと予想したんだろう。このタイプのフロウはKendrickの発明なんだろうか。その次のWorldwite Steppersのぐるぐるとした短いループに遠い方でピアノが鳴っているビートが良いし、Die HardはR&Bな内容でロマンチック。個人的に今作のハイライトだと思うRich Spiritのビートはアンビエントな空間で余白を上手く使っている出来で、そこに淡々とKendrick Lamarがラップをしていくんだけど、それがめっちゃカッコいいんだよね。まさかKendrick Lamarがここまで仙人気質なラッパーだとは思わなかった。この作品は18曲あり、9曲に分けた二部構成だけど、前半は全部最高な反面、後半はやや勢い落ちるけど、トップ10に入れたいくらい完成度が高いアルバム。富士山程のハードルを悠々と越えてしまった。

9位 Chat Pile - God's Country

9曲 40分

オクラホマ州のロックバンド、ロックというよりかメタル。まさかメタル作品が自分の年間ベスト10に来るとは思わなかった。しかし「これは絶対入る!」って思うほど今作にガツンとやられてしまった。今作はスラッジメタルって言うジャンルに属されているらしくて、正直スラッジメタルって全然わかんないんだけど、兎に角くっそ重い重低音なメタルサウンドに泣いてるみたいにシャウトするボーカルスタイルはちょっとKornっぽいなと思った。ちょっと前に90年代のメタルを聴いていてその時はFear FactoryとかMeshuggahとか良かったなと思うんだけど、中には全然肌に合わないデスメタルもあったりするぐらい、メタルっていうジャンルに慣れ親しんでないんだけど、Chat Pileは全くその悪い点が見当たらず、アルバム聴き流している間、ずーっと食らっていたね。むしろ「これは聴きやすいメタル」って人に推したいくらい。って書きながらふと考えると90年代のメタルに触れていたからこの作品気に入ったって思うくらいChat Pileのこの作品って90年代の雰囲気もあるような気がしてきた。メタルにわかから言わしてもらうと、自分みたいなメタルをメインに聴かない人がコレを気に入ったら、90年代のメタル、イケるんじゃないの~って思いますね。

8位 black midi - Hellfire

10曲 38分

英国出身のロックバンドのblack midiの勢いは若手バンドの括りで見ると最も勢いのあるバンドだなと思う。去年の作品もめっちゃ良かったのに、今作もそれに負けないくらいしむしろ前作を上回るくらいの作品を作り上げた。こういうのを飛ぶ鳥を落とす勢いって言うんですかね。音楽性は相変わらずノイジーで実験的なグルーヴ。でもどこか計算されていてポップネスさもあって、リスナーをどんどんblack midiの世界観に引きずり込む。そしてこの手のボーカルスタイルではなかなか気づきを得ないんだけど、ボーカル、めっちゃ歌が上手いんですよね。ミュージカルみたいに舞台を見ているオーディエンスの心をつかむような歌い方ですげえサマになっている。聴いていてキャラ立ってるなあと思うくらい今の沢山のロックバンドと比べてオリジナリティあるなと思う。一番心惹かれたのは「The Race is About to Begin」って曲で、中盤にボーカルがめっちゃ早口で歌い上げるパートは圧巻。そしてこの曲自体もゴッサムシティのくっそ治安の悪いサーカスみたいな曲で混沌としたプログレサウンドだけど、ちゃんと世界観が出来上がっている。この人たちはこのアグレッシブなプログレサウンドでジャズをやっているなと思いますね。

7位 Sudan Archives – Natural Brown Prom Queen

18曲 53分

ロサンジェルスを拠点とする女性シンガーの新作。これが今年のR&Bの中で最もレベルの高い作品の一つだと思いますね。これを聴いて思ったのは2020年代の現代、最新のR&Bを作り上げようとしている実験的精神があるところ、そして一辺倒な流れではなく、あらゆるタイプの曲があって、それのどれも完成度が高い。やっぱ自分以外に聴いているリスナーもね、この作品の曲から見える、やべえもん作り上げようっていうクリエイティブ精神、そして実際に曲がめっちゃ良いってところに評価高くしていると思うんですよね。18曲と比較的曲が多い構成となっているけど、ほんとどの曲も良いし、後半ちょっとダレるかなと思ったら、「Freaklizer」みたいな圧倒的キラーチューンが出てくるあたり、この作品にも、この人の才能にも驚かされることになりましたね。

6位 The 1975 – Being Funny in a Foreign Language

11曲 43分

今年サマソニのヘッドライナーでパフォーマンスに圧倒されたこともあり、新譜も出たし、2022年のMVPはこのバンドだな。今作の情報が初めて出た時、11曲構成って書いてあって、「アルバムに曲を詰め込むThe 1975がこんな短いアルバム出すわけない」って思ったわけなんですけど、結果的に今作は今までのマンネリを壊すようなコンパクトな出来に仕上がりましたね。というのも恐らくジャックアントノフニキのプロデュース力が如何とも発揮されていて、この人がいなかったら、Part of the BandやLooking for Somebody (To Love)とかもうちょい違うサウンドになっていたと思う。The 1975は元々アルバムの世界観をきっちり作り上げていたけど、今作はコンパクトな出来も相まってより分かりやすい作品だなと思う。作風としてチャンバーポップ、たまに80年代由来のサウンドが出てきて、愛とか暖かい雰囲気がアルバム中に漂っている。シングルにもなったI'm in Love with Youは最初聴いた時は「まあいいんじゃない?」って感じの興味だったけど、今作中盤に出てきてめちゃくちゃ良く聴こえた。序盤のロマンチックな流れから聴くこの曲が凄い良く聴こえてきたし、アルバム構成も今回もしっかりしていて素晴らしい。前半は暖かい雰囲気でリスナーを引き込みつつ、後半は暖かい雰囲気を踏襲しつつ、少し寂しさも感じられる。アルバム5作も出せば微妙な作品も出てきてもいいが、The 1975は今回もハズさなかった。The 1975は現代の流れを良い音楽にする嗅覚があって、たぶんこの先出るアルバムもセンスある作品だなと思うよ。

5位 Weyes Blood - And in the Darkness, Hearts Aglow

10曲  46分

Weyes bloodと書いて、ワイズブラッドって読むらしいんですけど、そんなの知らない時はウェイェズとかそんな感じで読んじゃいますよね。ペンシルベニア州出身の女性シンガーの今作によって、Arctic Monkeysはトップ10からハズれてしまったわけなんですけど、Weyes Blood、確かに新譜期待していたけど、まさかここまで素晴らしいとは思わなかった。Weyes BloodはJoni Mitchellの影響を公言していて、ほんとに歌い方はJoni Mitchellを思わせるところがある。去年のLana Del Reyの作品でJoni MitchellをカバーしてWeyes Bloodも参加していたけど、ほんとJoni Mitchellが降臨している歌いっぷりで最高だった。そして今回もJoni Mitchellを彷彿させる美しい歌唱っぷりが最高。多分Weyes Blood、BlueとCourt and Sparkが特に気に入っていると思う。今作は簡単に言うならバロックポップ。悠々と美しいストリングスが鳴らされ、Weyes Bloodの美しい歌唱に圧倒され。そして今作はJoni Mitchellだけでなく、Carole KingとかThe Carpentersっぽさもあり、中でも今作のベストとも呼べる「Children of the Empire」はABBAみたいな多重録音のバックコーラスから後半にかけて壮大で美しいサウンドになりゆくサマは最高。今作は70年代の良いところを吸収したような音楽で、もうこういうの大好き!って気持ちになりますね。

4位 JID - The Forever Story

15曲59分

USアトランタ出身のラッパーによる3rdアルバム。元々ヒップホップ好きには有名だったみたいだけど、初めてこの人の作品に触れた自分にとっては「なんかやべえのが出てきたぞ!」って感じで興奮した。実際今作はAOTYのユーザー評価でも超名盤級の87という高い評価。実際、何にこのアルバムに驚かされたというと、JIDのラップの上手さよ。フロウがめちゃくちゃ聴いてて気持ち良いし、多彩でスキルフル。Kendrick Lamarと比較されたりしてるらしいけど、分かる。声質がどことなく似てるし、ラップスキルの見せ方も似てる。アルバム序盤にあるRaydarとDance Nowでなめらか~にラップする人だなって分かった後、Crack Sandwichでは低音の声でフロウしたり、Can't Punk Meではフックのあるリズミカルな発声だったり、この作品においてJIDの多彩なラップスキルを堪能できるところに今年屈指に楽しめたところがある。あとは、トラックもめちゃくちゃ出来が良くて、Crack Sandwichのビート、「バンバーラバンバンバーラ」と頭に残る声が入ったビート、Sistanemのメロウでチルなビート、そしてJames Blakeがこの曲に参加していて、とても素晴らしい貢献をしているし、サビもキャッチーで良い。Can't Make U ChangeやLauder TooなどのR&B、ソウルな楽曲もヒップホップファン以外にも楽しめる、レベルが高い曲。こうしたJIDのラップスキルだったり、楽曲の素晴らしさであったり、非の打ち所がない素晴らしいアルバムだなと感動したため、4位に入れた。

3位 Soul Glo - Diaspora Problems

12曲 39分

ペンシルベニア州結成のハードコアパンクバンド。これ、3位に入れるくらいちょーーカッコいい。一曲目から心をエグってくるバイオレンスな音。基本的に作風はハードコアパンクでノイジーで混沌としたサウンド。ボーカルはずっとシャウトしながら歌うんだけど、ラップも出来たりして、めちゃくちゃ器用。叫ぶし、ラップも出来るって相当凄いし、そのスキルを遺憾なく発揮するのにトラックの雰囲気も合っている。基本ノイジーでうるさい演奏だけど、ところどころ聴き入ってしまうキャッチーさがあって、ボーカルスキル、演奏どっちも◎。昔の80年代のハードコアパンク、勿論良いものもあるけど、基本的なイメージは音質悪いし、最初から全力疾走。聴き通して聴くと一曲一曲の区別つかなかったりしたけど、一方現代のSoul Gloの新譜は一曲一曲、重いパンチをかましてくる。なぜかというとやっぱハードコアパンクだけじゃなくて、シャウトもラップも上手くできるボーカルのスキルフルな技術や、演奏陣のカッコいい演奏、このバンドのレベルが高いからアルバムも良く聴こえるんだなと思う。特にDriponomicsって曲はDeath Gripsみたいなインダストリアルヒップホップで、不穏な金属音みたいなビートで魅せるラップはカッコいいけど、中盤でゲストのMother Maryroseへとラップリレー繋げる展開の音場面がめっちゃカッコいい。今年のロックで一番完成されたアルバムを作っていると思う。

2位 Beyoncé - RENAISSANCE

16曲62分

 Beyoncéはまた傑作を作り上げた。2016年の作品はパーソナルな内容で繊細さも兼ねつつ多彩なジャンルでなおかつ完成度の高い曲が並んだ傑作だったが、今作はどうやらダンスアルバムを作ったようだ。先行シングルの「BREAK MY SOUL」はハウスビートな曲だったが、アルバムも全体的にハウスサウンド。最近、こういうハウスビートの曲が流行っている気がしているが、 Beyoncéのこの作品は一つの理想。BREAK MY SOULからして万々歳の出来であったが、COZY, ALIEN SUPERSTAR, CUFF IT, CHURCH GIRL, VIRGO'S GROOVE, PURE/HONEY他、いっそのこと全曲挙げたいぐらいの名曲のオンパレード。作曲のクレジットを見てると一曲一曲かなり大勢の人が関わっているみたいだが、よくこんんだけ人を集めたアルバムに統一感を出せるなあと感心する。普通、その辺のポップアーティストが一曲一曲ライターがとっかえひっかえな曲が並んだら路線迷子で退屈なものになりそうではあるが、 Beyoncéのは全然そんなことなく、最初から最後までパワフル。ハウスポップ、ディスコ、80'sポップみたいに多彩な方面から攻めてくる完璧なポップソング集、そして Beyoncéのボーカルもめっちゃ最高。普通に歌っても圧巻の上手さだし、ラップも出来るし、繊細な表現も出来る。今作はまさにQueenとは誰かを思い知らされる2022年を代表するポップアルバムだ。

1位 DJ Sabrina The Teenage DJ – Bewitched!

13曲 87分

ロンドンを拠点にするデュオによる作品。The 1975のHappinessの共同ライターということをきっかけに知り始めたわけだけど、最初にWikipediaでDJ Sabrina the Teenage DJって名前を見た時は、正直変な名前だな・・・って思ったわけだし、Wikipediaなので情報が正しいかどうか疑わしかった。でもまあ試しに何か聴いてみるかと思って、今作にも収録されているCall Youを聴いた時は、聴いた事の無いサンプリングミュージックの美しさに正直ちょっと混乱した。怪しい名前のアーティストがこんな良い音楽作れるのってぐらいに頭がこんがらがったけど、Under Your Spellを聴いたら、もう今年最大級のやべえアーティストを見つけたって興奮したね。DJ Sabrina the Teenage DJの音楽って、サンプリングという散りばめられたピースを組み合わせて多幸感のあるハウスミュージックが特徴なんだけど、その多幸感がずーっと続くんだよね。ずっと。ずっとこのままで良いよっていうのがずっと続くの。例えば好きなポップソングのこのメロディが好きっていうのを、DJ Sabrina The Teenage DJの曲では、その好きなメロディを延々と繰り返していくようなループミュージックを何分も続けるんだけど、ループしてるとはいえずっと聴き続けられる。そんな魔法がこの人たちの音楽でかかっている。それで一瞬で魔法にかかり、彼女らのアルバムを全部聴き漁ったんだけど、サンプリングだけじゃなくて、たまに自らでボーカルを取ったり、Princeみたいな80'sソング、トランス、ロック、ヒップホップ、R&B等多彩なジャンルを扱っていて、このセンス、間違いなく天才だなと思った。
そして本題であるBewitched!なんだけども、DJ Sabrina the Teenage DJのアルバムって2~3時間と長尺の作品を作る傾向があるんだけど、今作は87分とこの人たちの作品の中では比較的コンパクト。でもまあ87分ってめっちゃ長いじゃんって思うでしょうけど、今作は全然飽きずに聴き続けられる。
この人たちの作品は2020年からアルバムデザインするのが上手くなっていて、それ以前は「楽曲集」っていう印象も受けられるが、それ以降はアルバムを聴くと、今回はこういう傾向でいくんだなと分かるようになる。
それで今作はというと、清純で美しさに特化した作品だなと思う。冒頭のUnder Your SpellからA Part of Meで美しく儚いノスタルジックな音で包み込み幻想的な雰囲気を演出し、You Never KnowやI Should Have Triedではボーカルサンプリングを用いながらリスナーを躍らせ、その次のYou Always Loved Meや綺麗なボーカルにエコーが響き、とてもロマンチックな印象を与える。こうして序盤は幻想的でロマンチックな音でリスナーを魅了しつつ、中盤にはMatter of CourseとI Wish For Thatのボーカル有りの楽曲も良い。Matter of Courseは00年代のティーンエイジのドラマみたいなポップロックだがこれもまためちゃくちゃノスタルジックな気分にさせる。そしてラストにあるギターソロの素晴らしさはこのアルバムのハイライト。まるでThe CarpentersのGoodbye to Loveのギターソロみたいにポップソングにエッジを加えた印象的なギターソロで必聴ポイント。I Wish For ThatもThe 1975のFrail State of MindみたいなUKガラージな曲調でキャッチーな曲。
この2曲の流れから次の曲のサンプリングを使いつつ、どんどんゴージャスな展開になるCall Youは格別。The High Roadではカントリー/ハウスと実験的かつアルバムの色にあった曲もある。アルバム全体的に見て、曲順もしっかり練られているので、だから87分でも飽きない。
ここまで幻想的な美しさ、そしてノスタルジックな気分にもさせるハウスサウンドで魅了してきたが、ラストを飾るBeautiful, All Aloneは今作の総括と呼べる有終の美に相応しい楽曲。アンビエントな空気にピアノの美しい音が鳴り行く中で、透明度の高い女性ボーカルはまさにこのアルバムにあった幻想的な色にぴったり。10分ある曲で徐々に盛り上がりを見せていき、途中からサックスが鳴り始め、感動のフィナーレを迎える名曲。今作は最初から最後まで曇り空の無い美しいサウンドで占められていて、だからこそ長い収録時間とはいえ、そのサウンドに魅了され続けあっという間に終わる。今年も不景気で暗いニュースが多かった中、美しい世界の提示でうっとりと陶酔できる作品を作ったDJ Sabrina the Teenage DJが優勝だ。
 


 


 


 


 


 




 



 




 

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