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キーボードの趣くママに〈時代の切れ目〉NO.2


 僕にとって衝撃的だった漫画家の一人は、森下裕美さんです。彼女は、『少年アシベ』で有名な漫画家さんですが、彼女は、『ガロ』で「アル中少女」という作品でデビューしています。

ひさうちみちお を思わせるタッチでしたが、幾つもの伏線が織り込まれているひさうちみちおとは違い、純粋なギャグ漫画でした。普通の可愛い高校生がアル中であるという設定です。
 朝起きて冷蔵庫を開けて菊正宗を一杯クイット行くところから始まります。水筒に日本酒を詰めて登校する。

 <わたしも女の子ですから、授業中には飲みません。友達とお弁当を食べながらチビチビやるのです>というくだりは、衝撃的でした。<森下、俺にも>と先生がやってくる・・・<先生もアル中です>という切り返しも驚きました。まるで幻燈紙芝居のような、小気味の良い進行も魅力的でした。

 屋台で酔っ払ってクダを巻いている娘を、娘がアル中になってからお酒をやめた父親が<裕美帰ろう>と迎えにくる・・・。

 当時、高校生だった僕にとっては衝撃的でした。

 やまだ紫や近藤ようこ、杉浦日向子とも違う新しい才能。その背後に、ジェンダーそのもの、外から決められた生き方を蹴飛ばすような一種のサッパリした印象を受けたものです。
 考えてみれば、彼女の作品の中には、男性が喜ぶような女性は一貫して、造形されてないと思います。


 この作品の衝撃が強すぎて、週刊ジャンプの「JUN」とか「少年アシベ」に入ることができなかったです。

  彼女の黒の使い方が、今でも好きですが、彼女は、太い線と細い線、そして全体の黒白の割合が、作品によってはかなり変わるところもあるようです。

お詫び:漫画のセリフの引用ですが、記憶を辿っているので、そのままではないかもしれません。

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