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展示感想: 「館泰子展」巷房

巷房の館泰子展行ってきました。地下の階段下のスペースから、地下の巷房2、そして階段を登って巷房1とまわりました。

階段下は、ワインをモチーフとした作品とコルク、まるで、館さんの日常、身体性を現すかのようです。

 額にいれられて遺影を思わせる作品は、ワインの身体の象徴のような姿を刷り出した画像を、精神を語り出す口元を彩どるコルクの姿に貼り合わせています。

階段下の傍の巷房2は、川辺の葦のように下からのびるモービルです。

 紙と金属の組み合わせは、儚げでありながら、立体感を示しているようです。それは、表と裏を行き交いする館さんの作品の象徴でもあり、また、作品と日常の交差の象徴でもあるのでしょう。


現実、現世にあって、冥界に想いを馳せ、天上に祈りを捧げる、ないものを形にするアートの世界の象徴にも思えました。

 そこから、長い年月を耐えた奥野ビルの階段を三階まで登っていきます。

巷房1では、いつもの作品が並びます。
いくつかはきぎ工房の特殊な額を使っていて、リバースにできるものでした。

ポピーオイルを使い作品の表と裏に作用させる手法は、存在の立体性をあらわにします。それは、現と冥、虚と実の行き交いでもありますが、制作と作品の交差でもあります。

地下から地表、地表から地下への道行きを交え、わたしの家から、みんなの広場へ、過去と今と、その立体的で輻輳的な世界を、作品と展示の構造に象徴的に表わした意欲的な個展でした。



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