ただのドラえもん好き
ドラえもんのひみつ道具がタイトルの短編小説です。
いつかこの独り言を、演劇にしていきます。
そこには、 綺麗な花が咲く丘も、 底のよく見える海も、 果てしなく続く星空もない。 ピカピカの夜景もなければ、 オシャレな建物があるわけでもない。 そこには、一つのベンチがあった。 君と座るこのベンチでの時間はあっという間だった。 昨日あった出来事、 頑張った仕事の話、 行ってきた場所、 何度繰り返したか分からない思い出話。 他愛もない会話と、君の笑い声で作られたそのベンチは、 そこに座る僕にとっての、 花であり、 海であり、 星だった。
彼女が胃腸炎になった。 彼女は胃腸が弱いのか、冬は毎年のように胃腸炎になっている。 「何か食べられそうな物ある?」 その問いに、弱々しく首を振る。 「無理しないで、水分だけは取ってね」 そう言って、枕元にポカリスエットを置いた。 部屋を出ようとすると、微かに彼女の声が聞こえた。 「どうしたの?」 「……ハンバーグ食べたい」 今の君に1番似つかわしくない食べ物の登場に、思わず笑みがこぼれる。 「治ったら食べに行こうね」 ただのハンバーグじゃないよ。とびきり美味しいハン
台風の過ぎ去った沖縄は、まるで君を待っていたかのように爽やかに晴れていた。 「ねえねえ、晴れてるよ!」 嬉しそうに君が笑う。 そして自慢げに、 「すごくない?昨日まで飛行機飛ぶかもわかんなかったのに」 と、ドヤ顔を見せる。 「本当に来てくれたんだね」 「どこまでだって行けるよ」 「ホント?ベトナムとかでも?笑」 「うん」 そんな、当たり前みたいな顔して。 「簡単に会える距離じゃないでしょ」 「関係ないよ」 会える距離も、時間も、お金も、 「会いたいから」 その気
晴れた日の午後、河川敷で見上げた空は、一面青かった。 「飛べちゃいそうな空だね」 本気でもない、でも冗談でもなさそうに君は言った。 「青いから?」 「うん。ほら、晴れた日の海とか見てても思うじゃん。泳ぎたいって」 そりゃあ、海は泳ごうと思えば泳げるけど。 そんな事を思っている僕の横で、君はあの歌を歌う。 「空を自由に飛びたいな〜」 そんな、願ったら本当に飛べちゃうような顔で歌う君の横で。 君の隣で、僕も空を飛びたい。
高校の同級生が、上司をパワハラで訴えた。 「怖い声で怒鳴られた。 行き過ぎた指導をされた。」 割と大きなニュースになってしまうほどには、 彼はその上司を許さなかった。 私は、彼がどんな仕打ちを受けたのか、 どんな事を言われたのか、知らない。 だが私の脳裏には、ある場面が思い浮かぶ。 そう言われて涙を流していたのは、 彼ではなく、彼の後輩だった。 それは、彼が高校生の頃、 彼の後輩に対して投げかけていた言葉だった。 泣いている彼の後輩を、 慰めながら帰ったあの日の事