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望まずしてウクライナの前線に送られる若者と、心配するロシアの母親達


1 望まなくても前線に送られる若者達

  ロシアでは27歳以下の男性について1年の徴兵義務が課せられ、徴兵された普通の若者達もウクライナに送られている(ロシア政府は徴収兵の参加を否定していたがその後で認めた)。ロシアの家族の情報によると、ウクライナの国境に訓練に行くと説明されて連れて行かれたり、徴兵されて2か月で実地に送られる若者達もいるという

 ウクライナの国連大使は国連で戦闘で死亡したロシア兵から回収したスマートフォンに残されていた兵士と母親の会話とされるテキストを読み上げた(一部抜粋)。

母:それなら、どこにいるの?お父さんが小包を送れるかどうか聞いているの。
兵士:ママはどんな小包を送ってくれるの?僕は今すぐにでも首を吊りたいんだ。
母:何を言ってるの? 何があったの?
兵士:ママ、私は今ウクライナにいるんだ。ここでは本当に戦争が起きているんだ。怖いよ。

2 息子を守ろうとする母親達

 情報統制がしかれているロシアでは、息子がウクライナに送られていることを知らなかったり、ウクライナの方から戦争を始めたと信じている人もいる。反対する行動は厳しく処罰される(息子を万歳で戦地に送りださなければならなかった第二次世界大戦下での日本の母親達に似ている)。一方でウクライナの情勢を知って、息子達の安否を必死になって照会したり、確認しはじめている家族もいるという。

 ウクライナ側では、戦地で死亡した若者や捕虜になった若者の写真をウェブサイトにアップし、家族を探すロシアの家族に連絡を呼び掛けている。

 戦争によって一番苦しむのは、数か月前まで街を歩き未来を描いていた若者達、その若者達を愛情をこめて育て上げた母親達だ。

 最近、多くの政府が世論に邪魔されずに政治を推し進めるため、情報統制や言論統制を進めている。国内にいながら政府の方針に意見するのは命がけだ。戦時の日本ではなしえなかったが、最後に政府を動かす力は息子達を守ろうとする家族の声ではないか。息子を戦場で失いたくないという母親や父親達の思いを政府はどこまで封じこめられるだろうか(徴収兵が攻撃に参加していた事実を国民に認めようとしなかったロシア政府の対応がそれを示している)。

ウクライナかロシアかという国籍を超えて、理不尽に家族を奪う戦争の非人道的な面に目を向けていきたい。