なかそね則

TVドキュメンタリー・ディレクター。&(自称)ブロガー。ロンドン、東京、ニューヨーク、…

なかそね則

TVドキュメンタリー・ディレクター。&(自称)ブロガー。ロンドン、東京、ニューヨーク、ミラノの順にドキュメンタリー、報道番組を中心に監督・制作。イタリア在住。方程式【もしかして(日本+イタリ ア)÷2=理想郷?】の解読にも頭を悩ませている。 慶応義塾大学、ロンドン国際映画学校卒

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  • 小説

    多くの幽霊案また企画倒れに終わったフィクションたち。オーソドックスな文体と尺を目指して形にすることにしました。

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かがやく日々の祭りの果てに

電話は世論調査のインタビューのように突然かかってきた。 「外線からお電話です」 交換手が短く言って回線が切り換った。 「もしもし。こちら連邦政府衛生研究所の疾病専門官(ディジーズ スペシャリスト)ですが、誰にも聴かれない場所で私と話しができますか」 女の声だった。ビジネスの話、とアメリカ人が割り切って電話をかけるときに特有の、事務的な率直さと生真面目さがにじみ出ている。 「連邦政府――衛生研究所?」 「そうです。連邦政府衛生研究所。N・I・O・H」女はまるでそれが身分証明

    • 2777歳のローマは腐っても鯛の「永遠の都」だ

      伝説によると「永遠の都」ローマは紀元前753年4月21日に誕生しました。今から2777年前のことです(考古学的には、紀元前1000年にはすでに人が定住していたことが証明されています)。 ローマを建設したのは、ギリシャ神話の英雄アイネイアスの子孫で、オオカミに育てられた双子の兄弟ロームルスとレムス。2人はローマの建設場所を巡って争い、ロームルスがレムスを殺害します。 造られた街は、勝ったロームルスにあやかってローマと名付けられました。その後ロームルスは初代のローマ王となり、

      • ことしも復活祭のあやしい楽しみを楽しむとしよう

        復活祭は移動祝日。ことしは3月末日でした。英語のイースター。イタリア語ではパスクア。イエス・キリストが死後3日目に復活したことを祝う祭です。 キリスト教の祭典としては、非キリスト教国を含む世界中で祝される祭礼、という意味でクリスマスが最大のものでしょう。だが、宗教的には復活祭が最も重要な行事です。 クリスマスはイエス・キリストの生誕(誕生日ではない)を寿ぐ祭り。誕生は万人に訪れる奇跡ですが、死からよみがえる大奇跡は神の子イエス・キリストにしか起こりえない。 宗教的にどち

        • コロナ犠牲者追悼記念日

          イタリア政府は先日、毎年3月18日をコロナ(犠牲者)追悼記念日と定めました。 4年前の2020年3月18日、おびただしい数の新型コロナの死者の棺を積んだ軍トラックが、隊列を組んで進む劇的な映像が世界を駆けめぐりました。 コロナ禍に苦しむイタリアを象徴する凄惨なシーンでした。 当時世界最悪とも言われたコロナ禍中のイタリアは、全土ロックダウンを導入し最終的には20万人近い犠牲者を出しました。 コロナパンデミックはイタリア人に対する筆者の認識を大きく変えました。 筆者はイ

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          5本

        記事

          多様性信者を装うはねっ返りの痴態

          イタリアの有名なストリートアーティスト・ジョリット(Jorit)が、ロシアのソフィで開かれた青少年フォーラム中にプーチン大統領と一緒に撮った写真が物議をかもしています。 ジョリットはフォーラム会場で突然立ち上がり、壇上にいるプーチン大統領に「あなたがわれわれと何も変わらない人間であることをイタリア人に知らせたい。なので一緒に写真を撮らせてほしい」と語りかけました。 プーチン大統領は気軽に要求に応じ、ジョリットの肩を抱いて嬉々としてカメラに収まりました。 写真そのものも、

          多様性信者を装うはねっ返りの痴態

          名優アラン・ドロンの夢幻泡影

          フランス映画の大スターアラン・ドロンが、自宅に隠し持っていた拳銃とライフルあわせて72丁と銃弾3000発余りを警察に押収されました。 彼は無許可で大量の銃器を所有していたのです。自宅には射撃場も密かに設置されていました。 ここイタリアを含む欧州には銃の愛好家が多い。アラン・ドロンはそのうちの一人に過ぎません。 公の射撃場も掃いて捨てるほどあります。プライベートなものはさすがにあまり聞きませんが、人里離れた広大な敷地の屋敷内ならあってもおかしくありません。 スター俳優の

          名優アラン・ドロンの夢幻泡影

          文字のあるとことろには悉く文学がある

          もう少し文学にこだわります。 文学論争は数学や物理学とは違って、数式で割り切ったり論理的に答えを導き出せる分野ではありません。「文学」自体の規定や概念さえ曖昧です。それらを探る過程が即ち文学、とも言えます。 曖昧な文学を語る文学論は「何でも可」です。従って論者それぞれの思考や主張や哲学は全てパイオニアとも言えます。そこには白黒が歴然としている理系の平明はない。人間を語るからです。だから結論が出ません。 文学とは要するに「文字の遊び「と考えれば、文字のあるとことろには悉く

          文字のあるとことろには悉く文学がある

          文学という迂遠

          文学とは、文字を介して学ぶ芸術性の低い芸術です。 なぜ芸術性が低いのかと言いますと、文学は文学を理解するために何よりも先ず文字という面倒なツールを学ばなければならない、迂遠でたるい仕組みだからです。 片や絵画や音楽や彫刻や工芸その他の芸術は、見たり聞いたり触れたりするだけで芸術の真髄にたどり着けます。文字などという煩わしい道具はいりません。 文学以外の芸術(以下:鑑賞するのに何の装置も要らないという意味で純粋芸術と呼ぶ)は、それらを創作できること自体がすでに特殊能力です

          文学という迂遠

          日独GDP逆転の目くらまし

          日本がドル換算名目GDPでドイツに抜かれて世界第4位になりました。 そのことに胸が騒ぐ人々は、日独のGDPが逆転したのは異様なほどの円安のせいで、実態を反映しているのではない、などと強がります。 それにも一理あります。 しかし両国のGDPが反転したのは単に円安のせいではなく、日本経済の凋落傾向が加速しているから、と見たほうがもっと理にかないます。 実はドイツ経済も万全ではなく、むしろ日本同様に衰退トレンドに入っています。 欧州随一の化学メーカーBasfや家電のMie

          日独GDP逆転の目くらまし

          ナワリヌイ殺害はプーチンの弱さという幻想

          アレクセイ・ナワリヌイ氏が死亡、というBBCの速報を見るとすぐに筆者はなにか記事を書こうと試みました。 だが思い浮かぶのはプーチン超自然現象大統領への憎悪だけでした。 身内にじりじりと湧く怒りをそのまま記そうと思いましたが、そういう趣旨の記事は筆者はもうこれまでに何度も書いています。 無力感に襲われました。 ナワリヌイ氏が毒殺未遂から生還してロシアに帰国し即座に逮捕された頃、プーチンもののけ大統領はその気になれば彼を簡単に殺せるだろうが、今回はそうしないのではないか、

          ナワリヌイ殺害はプーチンの弱さという幻想

          生き物語り~ヴィットガビの受難~

          猟犬のヴィットガビは、呼吸がうまくできないので、とても苦しかった。 でも、飼い主の猟師の命令なので、瓦礫(がれき)の下にうずくまってじっとしていた。 ヴィットガビは文字通り息を殺して這いつくばっていた。息を詰めたのはあえてそうしたのではなかった。呼吸がほとんどできなかったのだ。 それでもヴィットガビは我慢した。我慢をするのは慣れていた。 生まれてから13年間ヴィットガビはいつも我慢をしてきた。 若い時は忍耐が足りずに少し騒いで、飼い主にぶたれたりしたこともある。

          生き物語り~ヴィットガビの受難~

          Zen的Perfume

          Perfumeが好きです。 いまPerfumeを香水と思った人はオッchanでありオバchanです。 ならばPerfumeとは何か。 Perfumeは若い女性3人組のアイドルグループです。 Perfume好きをもっと具体的に言えば、実はPerfumeの歌「ワンルーム・ディスコ」が好きです。 それは♪ジャンジャンジャン♪という電子音(デジタルサウンドと言うらしい)に乗って次のように軽快に歌われます。 ♪ディスコディスコ ワンルーム・ディスコ ディスコディスコ ディス

          文学あそび

          文学とはなにか。 それは言葉通りに「文字を介しての学び」です。学びは知識を包容しています。 文学は芸術としては程度の低い貧弱な形式です。なぜなら最低限でも文字を解し言葉を知らなければ内容を理解できないからです。 片や、例えば音楽や絵画は、文字を知らなくても内容を理解できます。少なくとも耳と目に入る情報だけで楽しめる。好きか嫌いかの判断ができる。 人の情感に訴える知識が芸術ですから、言葉などという面倒な手段がなくても心に沁みこむ音楽や絵画は文学よりも高尚な芸術です。

          文学あそび

          トランプ再選よりきな臭いドイツAfDの躍進

          米大統領選に向けた共和党の候補者選びで、トランプ候補が第1戦第2戦と連勝しました。 共和党は11月の米大統領選へ向けて、どうやらトランプ候補を彼らのエースと決めたようです。 それを受けて世界の魑魅魍魎たちがあちこちでが呟いています。 ~~ 先ずイスラエル・ネタニヤフ首相: 米大統領選までは何があっても戦争は止めない。トランプが勝てばこっちのものだ。俺と同じ穴のムジナのトランプにとっては、パレスチナ人なんて虫けら以下だ。極端なイスラエル擁護者の彼は、大統領に返り咲けば

          トランプ再選よりきな臭いドイツAfDの躍進

          SNSの広がりと限界

          テレビをはじめとする大手メディアは資金や人的資源を豊富に持っています。彼らはそれを縦横無尽に使って一次情報を収集します。大手メディアの報道や番組は一次情報の宝庫です。 いうまでもなく一次情報は、それがありのままに正直に提示されたものなら、客観的な事実であり真実である場合がほとんどです。 片やSNSで情報を発信している個人には、自分以外には人材も金もないため、足と時間と労力を使って得る独自情報や見聞は少ない。せいぜい身の回りの出来事が精一杯です。 そこで彼らは大手メディア

          SNSの広がりと限界

          経歴フェチみたいな人もいる

          SNS発信では、今何をしているかが重要であって、過去の出来事はあまり意味がない、と筆者は考えています。 SNSの面白さはSNSが出発点、というところにあります。 例えば筆者はFacebookでは、いただく友達申請のほかに、これはという投稿を見た場合はこちらからも迷わずに友達申請をします。その際には自分については「イタリア在住者です」とのみ名乗っています。 「今筆者が何を発信しているか」だけが重要だから、敢えて余計なことは書かないのです。 後はその方が筆者のタイムライン

          経歴フェチみたいな人もいる