思い出の味を探す旅 〜ローマのカルボナーラ編〜
1年ほど前に、メディア「かがみよかがみ」にてこんなエッセイを載せてもらった。
私はずっと、7年前にローマで食べたカルボナーラを探していた。
もう一度ローマで食べたいの思うのだけど、お店の名前も覚えていないしメモもしていない。
ローマのナヴォーナ広場を見渡せるテラス席で食べたことは覚えているけれど、Googleマップで探しても、これだ!と確信できるお店がない。
もうそのお店だって無いかもしれないし、ローマに行く機会も当たり前にそうそう無い。
びっくりするくらい黄色くて、濃厚で、少しクセのある独特な香り。
あのカルボナーラの最初の一口が忘れられなくて、国内でどうにか食べれないものか…とずっと考えていた。
日本でよく見かけるカルボナーラは生クリームベースなのか白くてクリーミーなものが多くて、もう、全然、それじゃないのだ。
なんなら私はカルボナーラがそこまで好きではなくて、その白いカルボナーラなら断然トマトベースのパスタとかの方が好きだし。
しつこいようだけど、私はローマで食べたあの味が食べたいのだ。
一緒に住む彼には何度もその話をしていて、彼がカルボナーラを作ってくれたこともあるけれど「美味しいけど、これじゃない…」と正直に答えてしまった。
YouTubeでイタリア人シェフが作っていたカルボナーラを見ると、ウワーーーーー絶対これじゃん!!!というものが出来上がっているのだけど、
この肉はカルディでも成城石井でも見つけられなかったし、チーズを刷る機械も家に無いし、作るのは現実的に不可能。
あの味を食べたいのになかなか叶わない悲しみに暮れていた時、彼が「めちゃくちゃ本格的で評価されてるカルボナーラをちゃんと食べに行こうよ」と言ってくれた。
そして見つけたのが、外苑前と千駄ヶ谷の間にあるこのお店だ。
1番の看板メニューは、「究極のカルボナーラ」。
すごい。すごそう。
これは期待できる…!!!
日曜の夜に予約し、彼とドキドキしながら向かった。
外苑前駅を出て少し歩き、坂を上がって行った所にある、こじんまりとしたこのイタリアンレストラン。
席数も少なく、落ち着いた空間。
オーナーの奥さんからのお手紙とメニューをもらい、ワクワクした気持ちで注文する。
サラダとラザニアも注文した。
何も言わなくても一人分の量に分けて持ってきてくれた。取り分ける必要もなく、親切…!
サラダもラザニアも最高に美味しい。
私たちの席からはキッチンが見え、オーナーシェフの手元が時々チラリと見える。
カルボナーラをまだかと待っているとき、オーナーの手元にパスタらしき料理が見えた。
「俺たちのじゃない、トマトベースっぽいし」と隣に座っている彼氏が小声で言う。
確かにオレンジのような赤のような色のソースが絡められたパスタだ。
…いや、待って。
あれは、濃い黄色。
絶対に私たちのカルボナーラじゃん!!?
そして予想通り、それは待ちに待ったカルボナーラだった。
驚くほどの黄色。これは、ローマで見たやつに限りなく近い!!!
「仕上げに羊のチーズをかけますね。ローマでは基本は羊のチーズなんですよ」と言われ、振り掛けられたチーズは独特な香りがした。
ドキドキしながら、一口食べると、
ローマの記憶がぶわっと駆け巡った。
ミルクとは全く違う、卵だけの贅沢なクリーミーさ。
口の中で後を引く独特な香りは、日本のあまりメジャーでは無い羊のチーズの香りだった。
そりゃなかなか日本で味わえないわけだ。
強いて言えば、ベーコンが少し違っていたのだけども。
ここでローマを上回られても悲しいので、日本でここまで近いものを見つけられてベストだったと思う。
最後の一口を食べるときは、「もう無くなっちゃう…」と思わず声が出た。
「また来ようよ」と彼が言ってくれて、ローマのカルボナーラ探しの長い旅は幕を閉じた。
旅先での思い出の味を日本で探すのは、とても楽しい時間だった。
そりゃあ簡単には見つけられないし、すぐ見つかっちゃっても悲しいし。
あの最高の味を食べれる場所を近くに見つけられたことは、最高にラッキーな出来事。
大好きな人と食べれたことも、そのお店がとても素敵なお店だったことも。とても幸せ。
思い出の味探しの旅。
次回はウズベキスタンで食べたプロフを探したいと思う。
たのしみ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?