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すべてはノンフィクション

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最近の記事

27 研究者とうつ病

20年ぶりくらいにしっかり休んだ。最低限の仕事だけして、研究に関係ない本を読んだり、好きなだけ寝たり、休むことに専念した。原稿の締切はあるが、後からでも間に合うと考えて手をつけなかった。 そして一週間。死にたいと思う気持ちはなくなった。 仕事の依頼を断り続けたおかげでこの時間ができた。こんなに安心して過ごせたのは10代以来だと思う。 研究者を志したときから、publish or perish (出版か死か)と教え込まれ、いつも身の丈以上の仕事を抱え、頼まれたことはなんでも

    • 26  勤務校を愛す

      職場の悪口しか言っていなかった自分だが、ある教授の最終講義を聞いて己を省みた。 「ここはよくわからない大学だった」 「この学部で自分は外様だった」 「まあ別にそれでいいんだけど」 こうはなりたくない。 大学行政に責任を負う中枢にはいられず、周辺においてもなんの役割も果たせなかったからこそ、こういう言葉が出てくる。 「この大学にいられてよかった。雇ってもらえてよかった」 「最初はジャングルかと思ったが最高の学部になった」 そう言って去りたいではないか。 自分の所属を愛し

      • 25 口頭試問でださい教員

        卒論、修論、博論の口頭試問で、ださいと思う教員がいる。 ・学生に対する質問に自分が答えてしまう。 あなたに質問していない。指導教授として学生をかばったつもりなのだろうが、実際には発言の機会を奪っている。 ・学生の論文を読んでいないことを誤魔化して乗り切ろうとしている。 忙しくて読めないのはわかる。学生のやっつけ仕事に向き合う気がしないのもわかる。しかし、その場でそれなりの質問をして誤魔化すだけの力がないなら、ざっと「見る」だけでもしたらどうか。 ・手ぶらで来て、学生の論

        • 24 選択定年

          とある名誉教授が早期退職について書いた文章があり、もう何度も読んでいる。 この先生は、早稲田大学の教授として本来であれば70歳まで勤められるところを、66歳に早めて退職されたそうだ。退職後に周囲から「全然変わらず元気そうだから仕事を続けたら」と勧められても、年寄りは若い人たちの邪魔をすべきではないと書いている。本当にすばらしい心掛けだと思う。ほかにも参考になることが多々書かれており、自分も真似したい。 もちろんこのサイトを見る時というのは定年退職した先生がいつまでたっても

        27 研究者とうつ病

        マガジン

        • 大学教員の退職
          4本
        • 公募戦士
          3本
        • 大学教員のしょぼい愚痴
          15本

        記事

          23 誰にも話を聞いてもらえなくなる日まで

          定年退職した教授が大学に現れた。 最初は皆、わっと湧いて「先生、先生」と迎え入れるが、近況報告が終わると話すこともなくなってくる。気がつくとポツンとされていた。 自分もいずれそうなるのだろう。 話をしても誰も耳を傾けなくなるし、腫れもの扱いで批判もされない。 今、卒論の指導が詰まっている。学生がひっきりなしに研究室を訪れる。疲れる。でも、いずれは誰も来なくなる。 授業もそうだ。自分の話を聞きに教室に人が集まってくる。こちらは長々と好きなことを話した挙句、金までもらえる。

          23 誰にも話を聞いてもらえなくなる日まで

          22 大学教員の労働条件

          いまだに休暇の取り方を知らない。実際に働いてみて不明な点があるたび事務局に問い合わせるが、常に「ルールはありません」と返ってくる。こんなに適当でよく回っているものだ。いずれ労働基準監督署に相談しようかと思っている。 現状はさておき、これまで専任教員としてどのように条件を通知されてきたか。 ある大手私大 任期付きポスドクだが一応書いておく。着任前に郵送された労働条件通知書に給与の目安と勤務日、業務内容、任期が具体的に書かれていた。 ある地方私大 着任前に届いた労働条件通知

          22 大学教員の労働条件

          21 大学を移った理由

          せっかく自分に合った大学に勤めていたのにどうして辞めてしまったのだろうか。大学を移ってからずっと考えてきた終わりのない問に、最近になって答えが見えた気がする。 給与が安すぎた。 大学の公募には年収の目安が載っていればマシな方で、基本的に就職するまで正確な金額はわからない。それでも買い手市場ゆえ、求職者に条件を問う余地はない。 また研究者の間には俗っぽいことにガタガタ言わずに研究できる環境だけを望むべしという規範もあるように思う。 要するにこの業界で給与の額は問題にならない

          21 大学を移った理由

          20 なにをしてるんや自分

          超尊敬している先生に学会の部会を立ち上げて発表しようと言われた。断ってしまった。 超尊敬している先生に講演を頼まれた。断ってしまった。 自分の名前を思い出していただけるだけで嬉しいし、こんなチャンスもう無いかもしれないのに大バカ野郎だ。なんでこうなるんや。でもどうしてもやりたいと思えなかった。いつもみたいに無理して引き受けて無理して無理して当日こなすことが考えられなかった。もう日常を生き延びる以上のことができない。 今抱えてる締切は一つだけ。どうしてもやりたい、やれると思

          20 なにをしてるんや自分

          19 辞めた先生になにを言われても

          SNSで教員論を発信している教員が実はすでに退職しているとわかると「あーあ」と思ってしまう。 たしかに続けられないくらいの辛い思いをした人だからこそ退職に至り、わざわざネットで教員論を書きもするのだろう。自然なことだ。 しかし、なにを書かれてもあなたはもう当事者ではない、もうここから出たのではないかと思ってしまう。 辞めた先生に励まされてもなんとも思わない。10年担任やったとか言われても、でも辞めたんだろと思ってしまう。管理職の辛さを知らないうちに。 私はこうやって人を

          19 辞めた先生になにを言われても

          18 ぬるま湯温室大学院

          新しい職場の大学院で院生がほとんど専門的な指導を受けていないことに驚く。それでは論文を書けるはずがない。 異動するたび、所属大学の入試上の偏差値は上昇している。しかし各大学の上位一割は本当によくできるという意味で同じだし、下位一割の勉強の出来なさも変わらない。 旧帝大の院生でも問題意識がはっきりしない学生もいるし、無名私大でも出来がよすぎて学会で驚かれる学生もいる。 だから大学の偏差値が上がったから院生のレベルも上がるということはない。見通しが甘かった。 私自身はぬるいゆ

          18 ぬるま湯温室大学院

          16 誰にも会いたいと思わなくなった

          新しい大学に来てから死にたいという気持ちがぶり返した。最近はマシになってきて仕事のために死ぬなんて馬鹿馬鹿しい、また公募戦士に戻るか別の仕事に就けばよいと考えるようになった。 しかし依然として変わらないのが人に会いたいと思えなくなったことだ。友達にも家族にももちろん老害研究者にも会いたくないし、尊敬している研究者にさえいまいち会いたいと思えなくなってしまった。 忙殺されて時間がないというのは確かに理由の一つだが、それよりももう会えないままで自分か相手が死んでしまっても仕方な

          16 誰にも会いたいと思わなくなった

          15 授業準備は永遠

          新しく担当する講義があると生活が一変する。 教えようとする内容の何倍も論文を読むことになるので、自分の勉強になり楽しくはある。しかし精神的余裕は全くない。いくら準備しても、すぐ次の授業がやってくる。回し車に乗せられたねずみの心境だ。 若い頃、偉い先生が学会で論拠のない発表をするのが不思議だった。院生が同じ発表をしたら叩かれるだろうに、大先生なので誰も咎めない。代わりに質問も一つも出ない。 授業をしていると、学会発表よりもはるかに無責任にものを言えてしまうことに驚く。そんな

          15 授業準備は永遠

          14 公募と愛校心

          公募で書類落ちが続いていた自分が面接に呼ばれるようになったのは、審査する側に大学への愛着があることに気づいてからである。 ある大学の学長が、自分の大学は偏差値が低いと嘆きつつ、そういう学生を愛してくれる教員を求めているとも言っていた。そこで気づいた。一部の教員は自分の大学を好きであることに。 当たり前だと思われるかもしれないが、そんなこともわかっていなかった。 特に人事選考を任されるような教員は、他大学に出ていかない(いけない)ベテラン管理職か、それなりに仕事ができて学

          14 公募と愛校心

          13  研究費はもういらない

          みんな自分の研究に役立つ手足がほしい。だから目下の者を研究費獲得のチームに入れる。 これまで私も多くの声をかけていただき、ありがたいと思っていた。 しかしやってみて気づくのだ。 みんな手を動かさない。発表しない。論文書かない。 偉い先生ほど忙しいので仕方ないところもある。 そうすると下っ端の自分にお鉢が回ってくる。一応お金もらってやりましたよというアリバイめいた仕事のため大した業績にならない。本当にやりたい研究はどんどん後回しになる。 必要な研究費は自分で取れている。枯木も

          13  研究費はもういらない

          12 「あなたと話してみたいと思って」

          大学院生の頃から、「あなたと話してみたいと思って」「あなたの研究の話が聞きたい」と言われることが多々あった。相手は同じ大学院生やポスドクの場合もあれば、大学教員や編集者、ジャーナリストの場合もあった。共通するのは年上の異性ということだ。 当時はコネ作りの一環として応じなければならないのかと思っていたが、いざ行ってみると、 役に立たないアドバイスを聞かされるばかりで、 誰も私の話を聞かなかった。 いわゆる「クソバイス」であり「マンスプレイニング」である。本当に時間の無駄だ

          12 「あなたと話してみたいと思って」

          11 ハリキリ教員の無駄な労力

          学生はそこそこ教員に気を遣っている。こちらの思う以上に圧力を感じてもいる。しかし基本的には剥き出しの存在である。 「つまらない」「やる気がない」「自分の貴重な時間を使ってくれるな」という気分を隠さない。その一方で、「自分のやる気を出させてみろよ」という甘え。悪気のない差別発言や詮索。迷惑をかけてきた割に一方的な頼み事をする。すぐ連絡が途絶える。 そういう相手に時間を費やし、何度も許し、相手をする。疲れる。 内心で見捨てて適当にやればいいのに、中途半端に学生と交流の場を作っ

          11 ハリキリ教員の無駄な労力