三社を初詣
20日正月も過ぎて、ほろ酔い気分が覚めた今頃、何を語ろうというのかと思われる方が居られるかもしれません。
昨今、明治神宮外苑の森の一部を伐採するという計画をめぐって、議論が沸騰している折から、昔の初詣を思い出していたのです。
私が、元日に毎年お詣りしていた三社とは、明治神宮、靖國神社、それと氏神さまです。
この年初めの年中行事は、娘の頃の私にとって、母との貴重な思い出なのです。
父親の頻繁な転勤で、地方に住むことが多かった我が家は、終戦後間もなくから、東京に住みつくことになりました。
太平洋戦争の終結までの元日は、休日ではなく、官庁でも学校でも、宮中の四方拝に倣って、講堂に飾られた両陛下の御真影の前で、厳かに式典が行われました。校長先生の訓示があり、君が代と、「年の初めのためしとて」で始まる「一月一日(いちげついちじつ)」を合唱したものでした。
終戦後、その代わりというわけでもなく、我が家では、元日には明治神宮に出かける習慣になったと記憶しています。
今でも、初詣の社寺として、明治神宮は、最もお詣りに訪れる人の多い名所の一つです。浅草の浅草寺、成田山新勝寺、築地の本願寺などを初詣に訪れたことはありませんが、新年にふさわしい厳かな雰囲気では明治神宮がNo 1でしょう。
明治神宮は、1920年に創設されましたから、今年は104年になります。荒地だった代々木に森を作る計画が、日本初の林学博士、本田静六氏を始めとする専門家たちにより、150年先を見据えた植林計画が立てられて、今私たちが見る神宮の杜まで育ったと、語られています。
平野のど真ん中に、人間の知恵と努力が100年かけて作り上げた壮大な森の中の、大鳥居から神殿までの長い参道を、玉砂利を踏みしめる音のみを聞きながら、黙々と歩き続ける。
この初詣は、私が結婚で母の元を離れるまで、父亡き後も2人だけで続けられました。
笑ってしまうような話もあります。参拝者があまり多くて、神殿の前までなかなか辿り着けないせっかちさんは、お賽銭を遠くから投げる。すると、それは賽銭箱まで届かずに、前方にいる人の帽子の縁に収まってしまうことが、よく起こりました。そのお賽銭の行方までは知りません。
60年ぶりに古家に戻ってから、先日ようやく初詣をしました。ここの氏神さまは大変古くて、今では鳥居と社殿しかありません。バスの行先に二宮神社というのがあったので、カーナビに頼りながら行ってみたら、なかなか立派なお宮でした。初詣らしき方もぼちぼち居られたし、社務所の女性が優しく応対して下さったので、交通安全のお札を頂いてきました。
今年も無事故無違反で、良い運転者として家族の役にも立てることを祈りつつ、帰途についた陽光の午後でした。
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