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生き返ったちび太


 noteに何回か登場して、お馴染みになって下さっているちび太の事で、書かずにはいられない或る経験をしました。それは、43日間にもわたる感動の物語です。

 庭中を駆け回り、元気いっぱいだった娘の愛猫ちび太が、2月27日の夕方、突然後脚が動かなくなりました。苦しそうにもがいているので、急遽かかりつけの動物病院へ連れて行きました。

 原因は、脚へ行く動脈の分岐点に、血栓が詰まった故と診断されました。 元々心臓に持病があったので、検査の結果は非常に悪く、とりあえず入院させたものの、明日の命もわからないと宣告されました。

 ちび太を息子のように溺愛している娘は、ロンドンで仕事中でしたが、メールが届くや否や、パスポートを片手に、通常の3倍にも跳ね上がっている航空運賃もなんのその、飛んで帰って来ました。

 病院の酸素boxの中のちび太は、呼びかけても撫でても反応がなく、息のあるうちに間に合ったのがせめて、という状態でした。 

 翌日、娘が何度も声をかけたり撫でたりしているうちに、奇跡が起こりました。少しずつ反応するようになり、次第に口からも食べるようになり、9日後には、我が家にレンタルの酸素室を設置して退院しました。

 感動したのはその後のことです。 前足でしか移動できないちび太のため、 我が家にいろいろなものが取り付けられました。すべてDIYなので、連日Amazonから資材が届きます。縁側から庭へ下りるためのスロープや、庭で心地よく寝そべることができるように、 花壇の一部を削って芝生を植える。種からでは間に合わないので、土を掘り返して、そこへ水捌けの良い砂利や芝用の土を入れ、5センチほどに伸びた芝を敷きつめる。
 池に落ちては大変と、脚元にプランターのついた立派なフェンスを仕入れて、池の周りをぐるりと囲む。
 腰を浮かせて用が足せないから、機能の違うトイレと、種類の違う砂を仕入れるなど、在宅介護は、それなりの模様替えが大変です。

 ロンドンでの仕事をテレワークでこなしながら、これらの作業を独力で進め、片や、ちび太には瞬時も目を離さずに世話を焼いている娘の姿を見ていると、母が子に注ぐ愛情とはかくもあるやと、いつになく感動を覚えました。

 娘は、ロンドンで現場の仕事が始まる間際まで頑張って、4月9日に羽田から飛び立ちました。
 覚束なくとも、後を託した母の私には、A4の用紙3枚に、投薬の仕方やら、緊急時の対応などを細々と書き連ねて渡されましたが、どんな思いを抱えての離日だったでしょうか。

 介護役の私は、桜の便りに添えて、 ちび太が機嫌よく庭で戯れている動画を、3日に開けずロンドンに送信しています。

 今年の4月は、卒寿にもう一年の歳と、再び老老介護の役割を頂いた春となりました。

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