音ゲーにおいて『情報強者』になるために必要なこと
※この記事はB4UT Advent Calendar 2022の20日目の記事となります。
はじめに
こんにちは、論文のリミットと日々戦っててなかなか辛い。ひたらぎと申します。2018年から5年間、12/20が誕生日なので毎年この日にAdvent Calendarに寄稿しております(照)
よかったら何か送ってくださると嬉しいです
今年度で大学院を卒業し、社会人となってB4UTも卒業する予定ですので、今までとちょっと方向を変えてB4UTの卒業論文代わりに本記事を書こうと思いました。5年間で学んだことを読み取っていただければ幸いです。
モチベーション・対象者
さて、今現在の各種音ゲーにはSNS及びインターネットが不可欠なものになってきていると考えております。僕が現在メインでプレーしているbeatmania IIDXでもそれは例外ではなく、日々Twitterにはたくさんのリザルトが投稿され、それを見ることなどで日々心を折られて切磋琢磨していることでしょう。
それと同時に、BPLが始まったあたりから「発信者」となる人が多くなってきていると感じています。いわゆる上達論、要は発信した人がどのように実力を付けてきたか、克服してきたかのプロセスをまとめたブログ、動画などが巷には溢れかえっています。
僕も前作あたりからそのような記事を発信していますし、他の人の記した記事を読みながら自分のプレーにそれを取り入れようとして、何度も失敗を重ねてきました。
自分はこうやって上達していきました。という内容のコンテンツはたくさん発信されていますが、それらをどうやって取り入れていけばよいかといった内容のものは少ないように思います。そこで、この機会に上達論の取扱説明書のようなものを記してみようかなと思った次第です。
本noteのタイトルは「情報強者」というワードを入れました。そもそも情報強者とは
というミーニングで使われます。所謂情弱(情報弱者)の対義語ですね。
情強は情報を巧みに使いこなすことができます。ただ情報を知っているだけではダメで、それを自分に合うように取捨選択したりフィットできるように変形させたりすることができます。このnoteがその手助けになれば幸いです。
本noteの対象者は
どうやって上達すればよいかを模索している人
自分なりに上手くなろうと頑張ってたけど案を試しつくして上達論を読み漁ってるような人
だと思っております。自分なりに軸をもって頑張っている人たちにはあまり参考にならないかもしれません。
僕がメインでプレーしていることもあって本noteはbeatmaniaについてを例に挙げて書いていこうと思います。他の音ゲーにも参考になれば幸いです。
TL;DR
上達論を読むためにはある程度のゲームへの解像度が必要
解像度を高めるためにはトライ&エラーが不可欠
アドバイスを求めるときには自己分析を最低限してからしよう
分類
音ゲーは数あるゲームの中でも体全体を用いることが多いと、また視覚だけでなく聴覚を使うという点が独特であるといえます。そしてその性質上、上達論の内容もフィジカル関連とメンタル関連に分類されます。
・フィジカルに特化した上達論の例
・メンタルに特化した上達論の例
この2つに両方とも言及しているものも当然存在しています。そして、同じジャンルに属されている記事でもその書き方は千差万別。内容も全然違うんですよね。
何故こうなっているかというと、音ゲーを上達するまでのプロセスも期間も人それぞれだからです。でも上達論に記載されているのはその人が上達したまでのプロセスが書かれているから、そりゃ書いてある内容はバラバラになります。そして、自分にフィットする記事にたどり着くまでには非常に長い期間が必要になります。
解釈をする、ということ
さて、試しに「○○(プレーしている音ゲー) 上達」でググったら出てくる記事を1つ読んでみてください。
人は、記事を読む際に自分なりに解釈をします。
甲野善紀・方条遼雨著『上達論 基本を基本から検討する』によると
というような意味をとれます。つまり、解釈するというプロセスを通して他人の書いた記事を自分の解像度にフィットさせて読んでいるということができます。
さて、一つ問題が発生しています。お判りでしょうか。
「解釈」というプロセスを通して、人間は書き手である上達論発信者の意図を変形させてしまっているのです。
この事象は、読み手の話題に対する解像度がぼやけているほど起きてしまっているというのが実情です。
具体例を挙げてみます。日本人が英語を習得しようとしたときには英語をカタカナという日本語表記に変換して発音するという行為をしてしまいがちになり、結果としてネイティブな英語の習得というゴールからは遠回りになってしまうということがしばしば起きてしまいます。例えば、「リンゴ(Apple)」はアップルというカタカナを最初に目にし、その後にAppleという英語に変換するといったことをしてしまいます。つまり、
リンゴ→アップル(ここまで日本語)→Apple
というような脳内変換をしてしまいます。
これは、英語初学者が英語を聞きなれておらず、身近なカタカナというフィルターを通して英語を解釈するためにおきます。
逆に発音記号を理解している人ならば、ˈæplを理解するだけで発音1プロセス短縮でき、カタカナ読みをせずとも発音することができるようになります。
このように僕は上達論をより正確に吸収するためには読み手側の物事に対する解像度の高さが必要だと考えます。
ここで、「書き手が幅広い読み手に合うように書けばよいのでは?」と思う人が出てくるかもしれません。ですがそうなると、解像度の荒い内容しか書くことができず、結果としてディープな内容を求める人にとっては無意味となってしまいます。
トライ&エラーをしてみる
そこで、上達論を享受する側の物事(この場合は音ゲー)に対する理解をより深める必要があります。IIDXの段位が六段の人に冥でAAAを出すための様々なコツを教えたところでほぼ100%それは不可能だからです(逆にそれで冥AAAのるならば、皆伝に合格していないだけの人だと思います)
そこで、理解を深めるためにはどうするかという視点が重要になってきます。
馬田隆明著『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』では、
とあります。自分の現時点での理想との差異を要素ごとにピックアップし、論理立てて説明できるといったところだと思います。
例えば、現在中伝の人が「皆伝になりたい」といった目標を立てたとします。
・「皆伝になりたい」→「『地力』が足りない」→「☆12の難しい譜面をノックしまくって勝手に地力が上がるのを期待する」
・「皆伝になりたい」→「卑弥呼の軸を認識できない」→「同じような軸がありかつほどほどの難易度であるG59をハード狙う」
あくまでもこれは一例で上でも時間をかければ地力があがって皆伝に合格することは可能だと思いますが、下の方がトータルの時間を見ると圧倒的に早いと思います。というのは、音ゲーの譜面は特例を除いて体系的に分類できるからです。
ならば系統立てて効率を測ることは十分に可能だと考えています。
上著では、解像度の要素は大きく分けて3つあるとされています。
深さ…どれだけ深く掘り下げて把握しているか
広さ…どれだけ異なるアプローチや視点が検討されているか
構造の把握…把握した原因や要因の関係性を適切に把握しているか
これら3つを全て解決するための簡単かつ正確な方法があります。
それは…
それは……
それは…………………………………………………..
とにかくトライ&エラーを重ねることが必要なのです。
今から2年前、2020年の12/4に放送されたフジテレビ ONEの「いいすぽ!」という番組内でbeatmania IIDXの大会があり、その際に現SILKHAT所属のSEIRYUプロと現LEISURELAND所属の1-PINプロが戦ったことがあります。その時の肩書は
だったのが記憶に新しいです。
ただSEIRYU選手も当然全然プレーしていなくて今の実力になったわけではないというのはその日のうちに、現APINA VRAMeS KENTANプロが行った配信の中で説明されています。
ここで大事なのは、ロジック立てて考える習慣をつけることです。
PDCAサイクルは有名だと思いますが、常に行動してきたことに対して自分なりに
・どうだったか?
・(上手くいかなかったなら)何が、どうダメだったのか?
ということを分析するクセをつけていくことによって最短距離で目的を達成することは可能だと思います。
八段のMiracle 5ympho Xで苦戦しているならば、
「同時押しが見切れない」→「見切るために緑数字を大きくして落ち着いて譜面を認識する」or「緑数字を小さくして認識→反射的に押すという動作を無意識に行う訓練をする」→どうだったか?
といったことをひたすら試行錯誤してみて良かったものをピックアップするといったことが必要だと思います。
実体験
自分自身の実体験をここで話しますが、今年の2月から半年程の期間をかけて今のプレーカスタマイズの原型に持っていきました。
その時のnoteが↓です。
矯正自体は2月から始めたので4か月かけて、様々な設定を家で模索してゲーセンで試しては違うな…と思い、なぜ違うのかを考えてまた違う設定を模索しては試す…といったことをしていました。
その結果、一つの成功とたくさんの失敗を経験しました。その一つの成功例が今のプロトタイプとなって今でもそれに近い設定でプレーしています。
では、たくさんの失敗は無駄だったのか?と言われると、そうではないと思います。なぜかというと、「これはしてはいけない」と理由を持って言えるようになったからです。また、今でも数多ある選択肢を枝切りするための材料になっているからです。
上の「解像度が高い」状態図にもありますが、物事を掘り下げると大量の枝が存在する木構造になります。これを一つ一つ枝切りするためにはそれを否定するだけの理由が必要なわけで、たくさんの失敗によってそれを行えるようになったわけです。
これを繰り返していくことによって大枠のフレームワークができ、誰にも影響されていない自分の適性プレー設定ができるようになりました。
この経験から、情報をたくさん所持するためにはたくさんの試行錯誤をすることが必要条件だということを確信しました。
正しいアドバイスの求め方
ただ、世の中の人すべてが一人で、長時間をかけて、たくさんのトライ&エラーを積み立てて自分にとっての正解を導き出すというプロセスを踏めるわけがないと思っております。
今現在IIDXでは「青龍塾」、「けんたんのIIDXリモート上達講座」、「はるビーマニクリニック」といった有料でプロ選手/プロ経験者がビートマニア上達をサポートしてくれるサービスがあります。勿論それ以外でも皆さんの周りにアドバイスをしてくださる上手い人がたくさんいらっしゃると思います。
その人たちから最大限のアドバイスを引き出すにはどうすれば良いか?答えがありました。
上手い人に質問をできる機会というものはレアなものです。その機会を無駄にしないために、最小限今の現状(段位やレーティング的なものの他、得意、不得意ジャンルや主なスコアや曲のクリア状況、BPM帯、運指、手のサイズ等基本的な情報)を把握して伝えるようにしましょう。
また、どういうアドバイスが欲しいかにもよると思いますが、長期を見据えた質問を考えておくとよいかなとは個人的に思います(コスパいいしね)。段位に受かりたい!っていう目的の質問よりかは、次の次の段位を見据えて、今回の段位を通過点ととらえられるような練習法などを聞けるかな~っていいと思います。
先月に今七段の方にビンゴを作って八段合格を目指そうって思って一緒に頑張っていた時期がありました。
これらのビンゴは全てどんな曲が苦手か?どういう属性に苦手意識があるか?などといったヒアリングを経て作りました。
質問をする上でも、そのようなアドバイスをしやすい観点を意識すると良いかなと思います。そのためにはプレーをある程度重ねて現在の自分についての情報をつかんでおくことはマストだと思います。
最後に
情強の定義を再掲します。
いきなり何もせずにトップレベルにまで音ゲーが上手くなる人はいません。IIDXの現プロ選手のほとんどは大分昔からビートマニアをプレーしてきている人たちが多いと思います。上達論によってその人たちの経験に触れられるようになったことは音ゲーの普及や定着という意味で非常に大きいと思います。
逆に、せっかくそのようなものが増えたからには、享受する側のリテラシー能力も上がると良いなと思っております。本noteや参考文献を読むことでプレイヤー全体の『思考力』が上がればよいなと思います。
質問があったら頑張ってこたえようと思いますのでTwitterかマシュマロまで遠慮せずによろしくお願いいたします!!
おまけというか追伸というか
「解像度を上げる」は元のスライドがwebで公開されてるのでそれを読むだけでも大分理解できると思います!https://speakerdeck.com/tumada/jie-xiang-du-wogao-meru
諸々の大会の参戦記は論文提出したら頑張るかもと思います!研究室内の論文提出デッドラインまであと9日で草。クリスマスあんのぉ?
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