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【詩】夕陽と星空と僕




乾いた空気に乱れた呼吸
空が次第に赤くなる
整備された公園の
脇の茂みの暗がりに
夕暮れの近さに心が翳る



整備された公園の
夜の姿を思い描いた
電灯に煌々と照らされた誰もいない公園で
何かが始まりそうな予感を覚えた



乾いた書籍と緩やかな時間
西陽が室内を赤く染める
埃っぽい図書室で
読書の時間にあの子が読んだ
図書カードに名前を連ねる



カップリング曲の方が好きで
助手席に座って何度も繰り返した
こんな寂しい歌の
どこがいいんだと母が言う
赤く燃えた空が冷えて
星が出てきてあの子を思う
これがいいんだと僕は言う



下校時刻の校庭で
ブランコ漕ぎに粘る友人
女子の姦しい声を聞き
今日のアニメのことを考える
ふいに帽子を剥ぎ取られて
後ろを向くとあの子のドヤ顔



じゃんけんで勝ったら返してあげる
じゃんけんぽん
と同時に帽子をひったくる



勝手に帽子取るなよ
ちゃんとじゃんけんしなさいよ
あの子がいらいらしながら遠くなる
ブランコから友達を下ろして帰路につく
あいつは鬱陶しいやつだ
友達に文句を言う
アニメなんて、もうどうでも良くなっていた



大人の恋はわからなかった
気持ちが通じ合う必要もなかった
自分の中で気持ちは完結していた
人恋しさはわからなかったし
寒さに耐える無邪気さがあった
友達と遊ぶのとアニメが好きだった
夕暮れのもの寂しさには
カップリング曲が寄り添ってくれた



いつか大人になったら
夜の公園にあの子を連れて行こうと思った


いつか大人になったら
何かが始まりそうな気がしていた


あの日々が続けば良かった
夕陽と星空の下
当時の僕は
助手席であの子のことを思った




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ポルノグラフィティの「愛が呼ぶほうへ」のカップリング曲「夕陽と星空と僕」が、リリース当初から大好きです。

最初聴いたときは前奏のズンズンした音が嫌でしたが、母が運転する車の助手席でぼんやり聴いているうちにめちゃくちゃ好きになりました。


当時の僕は小学生で、夕暮れが近づいたときの公園の寂しさ、図書室の守られてる感、友達との遊びや好きなアニメへの関心、気になる女の子への憧れといらだちで、特に冬はもうめちゃくちゃでした。


「夕陽と星空と僕」はだいぶ大人な曲ですが、当時の僕は背伸びして聴いていたような気もします。
今でも背伸びして聴いているかもしれません。



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