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Best Movies 2016

〈概要〉
・日本で2016年に劇場公開、販売(ビデオスルー)、配信された映画が対象
・リバイバル上映などは基本的に対象外
・順位なし

・タイトルを押すと予告編に飛びます。
・一応①~⑩をBEST10のつもりで選んではいます。
・観たのがかなり前になるので感想は短めです。

⓪『アメリカン・ハニー』(アンドレア・アーノルド)

ジャンル:ドラマ
製作国:アメリカ,イギリス

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〈あらすじ〉
 アメリカの田舎町で暮らす少女スターは、問題だらけの家族のもとで貧しく荒んだ生活を送っていた。そんなある日、車で旅をしながら雑誌の訪問販売を行う若者たちのグループと出会った彼女は、そのメンバーである青年ジェイクに誘われ、家族を捨てて彼らに着いて行くことを決意する。

〈説明・感想〉
 第69回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。本作で映画デビューを果たしたサッシャ・レインが主演を務める。
 本作は日本において、劇場公開はされておらず、DVD等の販売もありません。配信という形で日本にやってきましたが、いつ配信されたのかが定かではないため、本国の公開年の2016年に合わせ本記事で紹介させて頂きます。

 本記事で紹介する映画の中では1、2を争うほど好きな映画。
 キャストはシャイア・ラブーフとライリー・キーオ以外、無名と言っても過言ではないが、それがまた良い。キャラクター全員を役者のイメージにとらわれることなくフラットな状態で観れる。まるでドキュメンタリーに近い。

 映像の色味も完璧で、自然と映画の中に入って行けたポイントの一つ。カメラワークも光りの使い方も素晴らしかった。
 自然を壮大ではなく、身近なものとして美しく見せている。自然を壮大に撮る映画監督は数多くいるが、身近に美しく撮るデブラ・グラニックのような撮り方のが好きだ。
 また、映像の比率が1.37 : 1と正方形に近く、狭い映像ならではの味、外側を想像させる作りが見事。

 既存の楽曲が効果的に使用されており、流し方が車のカーステレオから流したり、スーパーで流れたり、登場人物たちが歌ったりといった使い方をしている。
 3時間近い映画だが、あまりの完璧かつ好みの演出に5時間でも観れると確信できる。最高、大傑作。

〈作品データ〉

脚本:アンドレア・アーノルド
出演:サッシャ・レイン シャイア・ラブーフ ライリー・キーオ
   アリエル・ホームズ アイザイア・ストーン
撮影:ロビー・ライアン
原題:American Honey
時間:165分


①『永い言い訳』(西川美和)

ジャンル:ドラマ
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。その時不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。そんなある日、妻の親友の遺族―トラック運転手の夫・陽一とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。

〈説明・感想〉
 是枝裕和監督のお弟子さんの映画です。師匠と同じで演技指導が上手い。子役の演技が演技しているとは到底思えないぐらいに自然。

 2016年は邦画の年でした。本当にここまで"良い日本映画を観た"と思える年は稀。それを代表する上でも、本作を一番最初に紹介する。
 この年のアカデミー賞の日本代表が本作ではなく、『湯を沸かすほどの熱い愛』だったのはかなり不満。『湯を沸かすほどの熱い愛』も2016年を代表する日本映画だけれど、私はあまり良いとは思えなかった。演技指導の面でも、西川美和の方が遥かに上手い。中野量太は役者に頼りきっている印象を受けた。

 違う作品のことを書いてしまいましたが、本作は傑作です。

〈作品データ〉
脚本:西川美和
出演:本木雅弘 竹原ピストル
   藤田健心 白鳥玉季 深津絵理
   堀内敬子 山田真歩 池松壮亮
音楽:手嶌葵
撮影:山崎裕
原題:永い言い訳(英題:Long Excuses)
時間:124分


②『裸足の季節』(デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン)

ジャンル:ドラマ
製作国:トルコ,フランス,ドイツ

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〈あらすじ〉
 13歳のラーレは5人姉妹の末っ子。10年前に両親を事故で亡くし、いまは祖母の家で叔父たちとともに暮らしている。学校生活を謳歌していた姉妹たちはある日突然、家に閉じ込められてしまう。古い慣習と封建的な思想のもと、電話を隠され、扉には鍵がかけられ、自由を奪われた「カゴの鳥」となった彼女たちは、ひとりひとり見知らぬ男のもとへと嫁がされる。ラーレは自由を取り戻すべく、ある計画を立てる。

〈説明・感想〉
 トルコ出身の新人女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン初監督作。世界各地の映画祭で高く評価され、第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート。

 初監督作品とは思えない素晴らしい出来。5人姉妹の輝きに心を掴まれる。

 「ソフィア・コッポラの『ヴァージン・スーサイズ』かと思った」なんて意見も見かけた。たしかにそう思う。軟禁されるというところや、親の古く、堅い考えも。
 私は、本作の方が遥かに好きです。というより、『ヴァージン・スーサイズ』が好きじゃない…。
 辛く、悲しい物語ではあるんだけど、こちらの方が輝きを感じられた。 

〈作品データ〉
脚本:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン アリス・ウインクール
出演:ギュネシ・シェンソイ
   ドア・ドゥウシル
   トゥーバ・スングルオウル
   エリット・・イシジャン
   イライダ・アクドアン
音楽:ウォーレン・エリス
撮影:ダービッド・シザレ エルシン・ギョク
原題:Mustang
時間:94分


③『サウルの息子』(ネメシュ・ラースロー)

ジャンル:ドラマ,戦争
製作国:ハンガリー

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〈あらすじ〉
 1944年10月、アウシュビッツ=ビルケナウ収容所。ナチスにより、同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドに選抜されたハンガリー系ユダヤ人のサウル。ある日、ガス室で生き残った息子と思しき少年を発見したものの、少年はすぐにナチスによって処刑されてしまう。サウルは少年の遺体をなんとかして手厚く葬ろうとする。

〈説明・感想〉
 ハンガリーの名匠タル・ベーラに師事したネメシュ・ラースロー監督の長編デビュー作。2015年・第68回カンヌ国際映画祭でグランプリ、第88回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞。
 アウシュビッツ解放70周年を記念して製作。

 先に書きますが、ネメシュ・ラースロー監督作は2019年日本公開の『サンセット』の方が遥かに好きです。しかし『サンセット』を強く観たいと思ったのは2016年に本作を観ていたから。

 長回しに狭い映像比、そして映像の端はぼやけている。ネメシュ・ラースローは観賞者に"神の視点"で映画を観せることはしない。
 映画を観ていてキャラクターに対し「もっと賢い判断できただろ!」なんて思うことはよくあると思う。しかし、もし自分が当人だったらどうだろう。おそらくパニックになり、どれが最善かの判別など容易ではない。
 心臓マッサージや人工呼吸の訓練を学校や市町村などから受ける機会はあるが、それを実践できるかは別の話。

 ネメシュ・ラースローの映画を観ていると、そういった要素を痛感する。大抵の人は何かしらの組織に属していると思う。学校しかり、会社しかり。しかし、果たして自分はその組織について深く認知し、また理解をしているだろうか。そうではないと思う。
 長くなりそうなので書くの止めます。個別の記事を書くかも。

 息苦しい映像と物語。この映画が自分の好みと合致している訳ではない。しかし、忘れられずにいるのも事実。私はこれからも本作を傑作と呼び続けて行く。

〈作品データ〉
脚本:ネメシュ・ラースロー
出演:ルーリグ・ゲーザ
音楽:メリシュ・ラースロー
撮影:エルデーイ・マーチャーシュ
原題:Saul fia(英題:Son of Saul)
時間:107分


④『ヴィクトリア』(セバスチャン・シッパー)

ジャンル:ドラマ,クライム
製作国:ドイツ

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〈あらすじ〉
 3カ月前に母国スペインからドイツにやって来たヴィクトリアは、クラブで踊り疲れて帰宅する途中、地元の若者4人組に声をかけられる。まだドイツ語が喋れず寂しい思いをしていた彼女は4人と楽しい時間を過ごすが…。

〈説明・感想〉
 全編140分ワンカットで描く。
 2015年ベルリン国際映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞、ドイツ映画祭でも作品賞をはじめ6冠に輝いた。

 本作を未観賞の方にはあまり何も言いたくは無い。賛否分かれる映画だとは思います。私は好きです。

〈作品データ〉
脚本:セバスチャン・シッパー
   オリビア・ネールガード=ホルム
   アイケ・フレデリーケ・シュルツ
出演:ライア・コスタ フレデリック・ラウ
   フランツ・ロゴフスキ マックス・マウフ
   ブラック・イーイット
音楽:ニルス・フラーム
撮影:シュトゥールラ・ブラント・グレーブレン
原題:Victoria
時間:140分


⑤『この世界の片隅に』(片渕須直)

ジャンル:戦争,ドラマ,アニメ
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 昭和19年、故郷の広島市江波から20キロ離れた呉に18歳で嫁いできた女性すずは、戦争によって様々なものが欠乏する中で、家族の毎日の食卓を作るために工夫を凝らしていた。しかし戦争が進むにつれ、日本海軍の拠点である呉は空襲の標的となり、すずの身近なものも次々と失われていく。それでもなお、前を向いて日々の暮らしを営み続けるすずだったが。

〈説明・感想〉
 こうの史代の同名コミックをアニメ映画化。
 第40回日本アカデミー賞でも最優秀アニメーション作品賞を受賞。フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門、審査員賞受賞。

 正真正銘の傑作。これは本物。
 反戦映画と聞くと、どうしても身構えてしまう。単純ではない物事を自分の中に落とし込むことが容易ではなく、エンタメ要素を求めることに抵抗を覚え、もやもやが生まれる。
 本作はそれがないわけではない。しかし、軟らかなアニメーションと役者たちによって"映画を観ている"のではなく"映画に入って行く"感覚にさせている。
 
 上手い映画ではないが、作り手の優しさと思いがつまっている。監督にお礼を言いたい。
 『BLACK LAGOON』を片渕須直はどんな思いで作ったんだろう。気になる。

〈作品データ〉
脚本:片渕須直
出演:のん 細谷佳正
   稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔
   藩めぐみ 岩井七世 牛山茂
音楽:コトリンゴ
原題:この世界の片隅に(英題: In This Corner of the World)
時間:130分


⑥『ボーダーライン』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ)

ジャンル:クライム,ドラマ,スリラー
製作国:アメリカ,メキシコ,香港

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〈あらすじ〉
 巨大化するメキシコの麻薬カルテルを殲滅するため、米国防総省の特別部隊にリクルートされたエリートFBI捜査官ケイトは、謎のコロンビア人とともにアメリカとメキシコの国境付近を拠点とする麻薬組織撲滅の極秘作戦に参加する。しかし、仲間の動きさえも把握できない常軌を逸した作戦内容や、人の命が簡単に失われていく現場に直面する。

〈説明・感想〉
 第68回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品。第88回アカデミー賞、撮影賞、音響編集賞、作曲賞ノミネート。

 天才たちの手によって生まれた映画。
 重低音が響き、ホラー映画のサントラよりも遥かに恐ろしいと感じさせるヨハン・ヨハンソンの音楽。
 画期的かつ、完璧な構図で撮影するロジャー・ディーキンス。
 先が読めず、常に緊張感を維持し続けるテイラー・シェリダンの脚本。
 それらを最大限に輝かせる監督のドゥニ・ヴィルヌーヴの演出。
 国境のシーンは、ここ数年の映画の中で最高の瞬間の一つ。
 天才たちに嫉妬し、惚れる。

〈作品データ〉
脚本:テイラー・シェリダン
出演:エミリー・ブラント
   ジョシュ・ブローリン ベニチオ・デル・トロ
   ジョン・バーンサル ダニエル・カルーヤ
音楽:ヨハン・ヨハンソン
撮影:ロジャー・ディーキンス
原題:Sicario
時間:121分


⑦『アメリカン・スリープオーバー』(デヴィッド・ロバート・ミッチェル)

ジャンル:ドラマ
製作国:アメリカ

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〈あらすじ〉
 新学期を目前に控えた夏の終わり、マギーはプールサイドで自分の夏の“物足りなさ”をなげき、「もっと“楽しいなにか”をするべきじゃないか」とぼやいていた。翌日に街で開かれるパレードで、仲間たちとダンスを踊ることになっているマギーは、ダンス仲間からその日夜開かれるスリープオーバー(お泊まり会)に招待される。

〈説明・感想〉
 『イット・フォローズ』、『アンダー・ザ・シルバーレイク』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル初長編監督作品。
 
 2010年とかなり前にアメリカで公開された映画。
 超低予算で、役者はほぼ無名。おそらくほとんどが新人または、素人で現在も俳優業をアクティブに続けている人は僅か。
 
 この映画がめちゃくちゃ好きです。面白いとか面白くないとかの前に好き。
 輝いてるし、唯一無二だし、音楽もいい。クレア・スロマは私の中で最も印象的な映画ヒロインの一人。
 原題は"The Myth of the American Sleepover"。"Myth(神話)"とある。デヴィッド・ロバート・ミッチェルがこれらのこの一時の瞬間を神話と呼ぶのが凄く分かる。青春時代って神話だと思う。

〈作品データ〉
脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:クレア・スロマ マーロン・モートン
   アマンダ・バウアー ブレット・ジェイコブセン 
   ジェイド・ラムジー ニキータ・ラムジー
   エイミー・サイメッツ
音楽:カイル・ニューマスター
撮影:ジェームズ・ラクストン
原題:The Myth of the American Sleepover
時間:96分


⑧『エクス・マキナ』(アレックス・ガーランド)

ジャンル:SF,ドラマ,スリラー
製作国:イギリス

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〈あらすじ〉
 世界最大手の検索エンジンで知られるブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、滅多に人前に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に滞在するチャンスを得る。しかし、人里離れた別荘を訪ねてみると、そこで待っていたのは女性型ロボットのエヴァだった。ケイレブはそこで、エヴァに搭載されるという人工知能の不可思議な実験に協力することになるが。

〈説明・感想〉
 『28日後...』、『わたしを離さないで』の脚本家として知られるアレックス・ガーランド初監督作品。第88回アカデミー賞で脚本賞と視覚効果賞にノミネートされ、視覚効果賞を受賞。

 事前情報を入れず観て欲しい映画。キャストが僅か四人の比較的低予算な映画。しかし、随所に工夫を凝らし、その塩梅が本作にしかない異様な雰囲気を作り上げている。

 短いですが、以上で終わります。とりあえず観てください。
 余談ですが、母は本作をここ数年で一番と呼んでいます。

〈作品データ〉
脚本:アレックス・ガーランド
出演:ドーナル・グリーソン アリシア・ヴィキャンデル
   オスカー・アイザック ソノヤ・ミズノ
音楽:ベン・サリスベリー ジェフ・バロウ
撮影:ロブ・ハーディ
原題:Ex Machina
時間:108分


⑨『レヴェナント 蘇えりし者』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)

ジャンル:アクション,ドラマ,伝記
製作国:アメリカ,香港,台湾

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〈あらすじ〉
 狩猟中に熊に襲われ、瀕死の重傷を負ったハンターのヒュー・グラス。狩猟チームメンバーのジョン・フィッツジェラルドは、そんなグラスを足手まといだと置き去りにする。

〈説明・感想〉
 実話に基づくマイケル・パンクの小説原作。撮影監督を『バードマン』に続きエマニュエル・ルベツキが務め、屋外の自然光のみでの撮影を敢行した。第88回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞など同年度最多の12部門にノミネートされ、ディカプリオが主演男優賞を受賞して自身初のオスカー像を手にしたほか、イニャリトゥ監督が前年の『バードマン』に続いて2年連続の監督賞を、撮影のルベツキも3年連続となる撮影賞を受賞した。

 予告編をまず観てみてください。リンクには日本版ではなく、海外版を貼っておきました。字幕なんか無くていい。映像に映し出される圧倒的な自然、光り、動物、そして人間。僅か2分の予告編だけで圧倒される。

 やや長く、残忍で過激な描写等で好き嫌いは別れると思う。しかし、好きになろうが、嫌いになろうが忘れられない映画になる。
 傑作。おめでとうディカプリオ。

〈作品データ〉
脚本:マーク・L・スミス アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:レオナルド・ディカプリオ トム・ハーディ
   ドーナル・グリーソン ウィル・ポールター
音楽:アルバ・ノト 坂本龍一
撮影:エマニュエル・ルベツキ
原題:The Revenant
時間:157分


⑩『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二)

ジャンル:ドラマ
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 SNSで知り合った鉄也と結婚することになった派遣教員の皆川七海は、親族が少ないため「なんでも屋」の安室に結婚式の代理出席を依頼して式を挙げる。しかし、新婚早々に鉄也が浮気し、義母から逆に浮気の罪をかぶせられた七海は家を追い出されてしまう。そんな七海に、安室が月給100万円という好条件の住み込みのメイドの仕事を紹介する。そこで知り合った破天荒なメイド仲間の里中真白と出会う。

〈説明・感想〉
 岩井俊二監督が、長編実写の日本映画としては『花とアリス』以来12年ぶりに手がけた監督作。

 変な映画だと思う。面白いのか面白くないのかも良く分からない。長いし。3時間もいるか?と思いつつも、観はじめるとあっという間に終わってしまった。岩井俊二の映画がもともと好きなのも関係しているとは思う。好みが別れそうな映画。

 黒木華による黒木華映画。もう本当に黒木華映画。

 NETFLIXにてテレビシリーズ版として、さらに長尺のバージョンが配信されてます。

〈作品データ〉
脚本:岩井俊二
出演:黒木華 Cocco 綾野剛
音楽:桑原まこ
撮影:神戸千木
原題:リップヴァンウィンクルの花嫁(英題:A Bride for Rip Van Winkle)
時間:180分



『ぼくとアールと彼女のさよなら』(アルフォンソ・ゴメス=レホン)
ジャンル:ドラマ
製作国:アメリカ

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⑪『葛城事件』(赤堀雅秋)

ジャンル:ドラマ,スリラー,クライム
製作国:日本

葛城事件_三浦さんメイン1

〈あらすじ〉
 親が始めた金物屋を継いだ葛城清は、美しい妻・伸子と共に2人の息子を育て、念願のマイホームも建てて理想の家庭を築き上げたはずだった。しかし、清の強い思いは知らず知らずのうちに家族を抑圧し、支配するようになっていた。長男の保は従順だが対人関係に悩み、会社をリストラされたことも言い出せない。そして、アルバイトが長続きしないことを清に責められ、理不尽な思いを募らせてきた次男の稔は、ある日突然、8人を殺傷する無差別殺人事件を起こす。

〈説明・感想〉
 赤堀雅秋監督が同名舞台を映画化。

 日本でここまで質の高いスリラー映画が作れるのかと感動した。
 役者は全員素晴らしいし、演出も実に見事。たしか賞レースからはスルーされまくったが、ここまで素晴らしい演技をする役者たちがいるのに、それを評価する場がないのはいかがなものだろう。
 本作が万人受けしないのはさすがに認めるが。

 BEST10から漏れてしまったけれど、BEST10入ってると思ってください。

〈作品データ〉
脚本:赤堀雅秋
出演:三浦友和 南果歩 新井浩文 若葉竜也 田中麗奈
音楽:窪田ミナ
撮影:月永雄太
原題:葛城事件(英題:The Katsuragi Murder Case)
時間:120分


⑫『ヘイトフル・エイト』(クエンティン・タランティーノ)

ジャンル:クライム,ドラマ,ミステリー,西部劇
製作国:アメリカ

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〈あらすじ〉
 吹雪でロッジに足止めを食らい、一夜をともにすることとなったワケありの7人の男と1人の女。そこで起こる密室殺人。吹雪が作り出す密室で、疑心暗鬼で張り詰めた緊張をほぐすため、またお互いを探り合うため、他愛のない会話をかわす面々。やがてそれぞれの素性がすこしずつ明らかになる。

〈説明・感想〉
 クエンティン・タランティーノ監督の長編第8作。
 第88回アカデミー賞で作曲賞を受賞。70ミリのフィルムで撮影され、画面は2.76:1というワイドスクリーン。

 タランティーノの中ではかなり好きな映画。TOP3に入ると思われる。
 主に一部屋のみで進行され、長尺だが、全く飽きさせることはない。まず、衣装や小物など美術分野が傑出している。美術担当は日本人の種田陽平。ここまでセットの中に入りたいと思う映画はそうそうない。ビンの中に入っている菓子を眺めるだけでも楽しい。なんて良い仕事をするんだ。
 
 俳優陣は全員素晴らしいが、会話劇だけで進むと"声"の印象が強く残る。ジェニファー・ジェイソン・リーといい、サミュエル・L・ジャクソンといい、なんてクセのある素敵な声をお持ちなんだろう。彼女の歌唱シーンはギターと相まって特に逸品。そこだけ何回も観たほど。

 こちらも『葛城事件』同様、BEST10に入ってると思ってください。決めれなかった。

〈作品データ〉
脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:サミュエル・L・ジャクソン ジェニファー・ジェイソン・リー
   ティム・ロス カート・ラッセル ウォルトン・ゴギンズ
   デイアン・ビチル マイケル・マドセン ブルース・ダーン
   チャニング・テイタム クエンティン・タランティーノ
音楽:エンニオ・モリコーネ
撮影:ロバート・リチャードソン
原題:The Hateful Eight 
時間:168分


⑬『淵に立つ』(深田晃司)

ジャンル:ドラマ,スリラー
製作国:日本,フランス

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〈あらすじ〉
 下町で小さな金属加工工場を営みながら平穏な暮らしを送っていた夫婦とその娘の前に、夫の昔の知人である前科者の男が現われる。奇妙な共同生活を送りはじめる彼らだったが、やがて男は残酷な爪痕を残して姿を消す。8年後、夫婦は皮肉な巡り合わせから男の消息をつかむ。しかし、そのことによって夫婦が互いに心の奥底に抱えてきた秘密があぶり出されていく。

〈説明・感想〉
 第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞。

 実に見応えのある邪道を進む、怪作。
 邦画を何本か紹介しましたが、邦画の中では本作が一番ではないかと思っている節がある。しかし、BEST10には入れず。どうしてかは自分でも分からない。本作が面白いのかどうか、はっきりしないけれど、本記事で紹介する邦画の中で最も記憶に残っているのが本作。

 人間にここまで興味を示しているのに、とてもいやらしく描く。人とは簡単に扇動されやすいものかも知れない。僅かな違和感をいかに汲み取れるかが生きて行くために必要なんだろう。
 
 よくここまで浅野忠信を気持ち悪く撮れたものだと思う。一番上手く浅野忠信を起用した映画な気がする。浅野忠信も気持ち悪いが、筒井真理子の存在感も素晴らしい。『オールド・ボーイ』のチェ・ミンシクばりに豹変する彼女には驚かされた。
 本当に凄い映画だった。嫌な予感が常に漂い、とにかく居心地が悪い。この妙な気持ち悪さと空気感を表現したことに震える。

 カンヌでは高く評価されたが、日本においては知名度も低くあまり評価されていないのが残念でならない。

〈作品データ〉
脚本:深田晃司
出演:筒井真理子 古館寛治 太賀
   浅野忠信
音楽:小野川浩幸
撮影:根岸憲一
原題:淵に立つ(英題: Harmonium)
時間:119分


⑭『怒り』(李相日)

ジャンル:ドラマ,ミステリー
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 東京・八王子で起こった残忍な殺人事件。犯人は現場に「怒」という血文字を残し、顔を整形してどこかへ逃亡した。それから1年後、千葉の漁港で暮らす洋平と娘の愛子の前に田代という青年が現れ、東京で大手企業に勤める優馬は街で直人という青年と知り合い、親の事情で沖縄に転校してきた女子高生・泉は、無人島で田中という男と遭遇する。

〈説明・感想〉
 『悪人』に続き、再び吉田修一原作の小説を李相日が映画化。
 
 坂本龍一の音楽が良かった。役者も演技が下手な人は一切おらず、非常にレベルの高い邦画だと思う。
 ジャンルにミステリーとあるが、ミステリー要素はほぼない。事件ではなくあくまでも人間を描いている。私としてそこを高く評価している。
 本格的なミステリーを求め本作を観賞すると、かなり残念な気持ちになると思うのでそこは注意。

〈作品データ〉
脚本:李相日
出演:渡辺謙 宮崎あおい 松山ケンイチ 池脇千鶴
   妻夫木聡 綾野剛 原日出子 高畑充希
   森山未來 広瀬すず 佐久本宝 粟田麗
   ピエール瀧 三浦貴大 水澤紳吾
音楽:坂本龍一
撮影:笠松則通
原題:怒り(英題:Rage)
時間:142分


⑮『海よりもまだ深く』(是枝裕和)

ジャンル:ドラマ
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 15年前に文学賞を一度受賞したものの、その後は売れず、作家として成功する夢を追い続けている中年男性・良多。現在は生活費のため探偵事務所で働いているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳していた。別れた妻・響子への未練を引きずっている良多は、彼女を「張り込み」して新しい恋人がいることを知りショックを受ける。ある日、団地で一人暮らしをしている母・淑子の家に集まった良多と響子と11歳の息子・真悟は、台風で帰れなくなり、ひと晩を共に過ごすことになる。

〈説明・感想〉
 第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品作品。

 さすが是枝裕和。とても良い映画だった。海外でも高い評価を受けているのが納得できる。
 しかし記事を書いている現在、あまり記憶には残っていない。
 
〈作品データ〉
脚本:是枝裕和
出演:阿部寛 真木よう子 小林聡美 リリー・フランキー
   池松壮亮 橋爪功 樹木希林
音楽:ハナレグミ
撮影:山崎裕
原題:海よりもまだ深く(英題:After the Storm)
時間:117分



『有罪』(メーグナー・グルザール)
ジャンル:クライム,ドラマ,ミステリー
製作国:インド

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⑯『ヒメアノ~ル』(吉田恵輔)

ジャンル:クライム,スリラー
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 平凡な毎日に焦りを感じながら、ビルの清掃のパートタイマーとして働いている岡田は、同僚の安藤から思いを寄せるカフェの店員ユカとの恋のキューピッド役を頼まれる。ユカが働くカフェで、高校時代に過酷ないじめに遭っていた同級生の森田正一と再会する岡田だったが、ユカから彼女が森田にストーキングをされている事実を知らされる。

〈説明・感想〉
 古谷実による同名コミックを実写映画化。

 宣伝、及び事前情報をどう発信して良いかが分からない映画。そのため、感想等も省かせていただきます。
 
〈作品データ〉
脚本:吉田恵輔
出演:森田剛 濱田岳 佐津川愛美 ムロツヨシ
   山田真歩 駒木根隆介
音楽:野村卓史
撮影:志田貴之
原題:ヒメアノ~ル(英題: Himeanole)
時間:99分


⑰『セトウツミ』(大森立嗣)

ジャンル:ドラマ,コメディ
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 高校二年生の内海想と瀬戸小吉は、放課後をいつも河原でダラダラと喋りながら一緒に過ごす。性格は真逆のような内海と瀬戸だが、くだらない言葉遊びで盛り上がったり、好きな女の子に送るメールの文面で真剣に悩んだり、ときにはちょっと深いことも語り合ったり……二人でいれば中身があるようでないような話も尽きない。

〈説明・感想〉
 此元和津也の漫画「セトウツミ」を実写映画化。

 この年で一番笑った映画です。僅か75分という短尺。まるで一組のお笑いライブを観たかののような感覚。
 出囃子ともとれる音楽も印象的。面白い映画です。短い時間で、気を抜いて観賞したい。そんな方におすすめ。

〈作品データ〉
脚本:宮崎大 大森立嗣
出演:池松壮亮 菅田将暉 中条あやみ
音楽:平本正宏
撮影:高木風太
原題:セトウツミ(英題:Seto and Utsumi)
時間:75分


⑱『ロブスター』(ヨルゴス・ランティモス)

ジャンル:コメディ,ドラマ,ロマンス
製作国:ギリシャ,アイルランド,イギリス,フランス,オランダ

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〈あらすじ〉
 独身者は身柄を確保されてホテルに送り込まれ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられて森に放たれるという近未来。独り身のデビッドもホテルへと送られるが、そこで狂気の日常を目の当たりにし、ほどなくして独り者たちが隠れ住む森へと逃げ出す。

〈説明・感想〉
 アカデミー外国語映画賞ノミネート作『籠の中の乙女』で注目を集めたギリシャのヨルゴス・ランティモス監督初の英語作品。
 第68回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。第89回アカデミー賞脚本賞ノミネート。

 レア・セドゥに8000点!レイチェル・ワイズにも。
 なんだか恐ろしい画像を貼っているが、設定に関してはコメディ。本当に設定はめちゃくちゃふざけている。ふざけているといってもルールはあり、それを破ったりはしていない、凄く従順。

 設定と脚本に凄まじい魅力があるが、役者によって大きく支えられているのは間違いない。主演はコリン・ファレルじゃなかったら駄目だし、レア・セドゥとレイチェル・ワイズがいなければ成り立っていなかった。

 ヨルゴス・ランティモスは見応えのある映画を撮ってくれるが、心の底から「好きだ」と言えるほど好みには合致していない。というより、嫌いな人も一定数いる気がする。
 ジェシカ・バーデンをジェシカ・バーテンと認識して観ていなかったので、もう一度観たい。

〈作品データ〉
脚本:ヨルゴス・ランティモス エフティミス・フィリップ
出演:コリン・ファレル レイチェル・ワイズ レア・セドゥ
   ベン・ウィショー ジョン・C・ライリー ジェシカ・バーデン
   オリヴィア・コールマン
撮影:ティミオス・バカタキス
原題:The Lobster
時間:118分


⑲『アノマリサ』(デューク・ジョンソン、チャーリー・カウフマン)

ジャンル:アニメ,コメディ,ドラマ
製作国:イギリス,アメリカ

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〈あらすじ〉
 カスタマーサービス界で名声を築き、本も出版しているマイケル・ストーン。私生活でも妻子に囲まれ恵まれた人生を歩んでいるかに見えたが、本人は自分の退屈な日常に不満を募らせていた。そんなある日、講演をするためシンシナティーを訪れたマイケルは、そこでリサという女性に出会う。長い間、すべての人間の声が同じに聞こえていたマイケルは、「別の声」を持つ彼女に興味を抱く。

〈説明・感想〉
 チャーリー・カウフマンが監督・脚本を手がけた、大人向けのストップモーションアニメ。クラウドファンディングで集めた資金で製作された異色のR15指定作品ながら、その独創性が評判を呼び、第88回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネート。

 正直、本作を自分の中に落とし込めておらず、本作の感想を書くことは難しい。

 そういえばジェニファー・ジェイソン・リー、『ヘイトフル・エイト』に続き、本作でも歌ってる。しかも日本語で。

〈作品データ〉
脚本:チャーリー・カウフマン
出演:デヴィッド・シューリス ジェニファー・ジェイソン・リー
   トム・ヌーナン
音楽:カーター・バーウェル
原題:Anomalisa
時間:90分


⑳『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(ギャレス・エドワーズ)

ジャンル:アクション,冒険,アドベンチャー,SF
製作国:アメリカ

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〈あらすじ〉
 かつて平和を維持していたジェダイは滅び、宇宙は帝国軍に制圧されようとしていた。
人間の女性ジン・アーソは孤独ながらも強く生き抜いていた。そんな彼女の父親が、帝国軍が開発中の兵器“デス・スター”の設計に関わっているとの情報を知る。

〈説明・感想〉
 スター・ウォーズシリーズの『エピソード3 シスの復讐』と『エピソード4 新たなる希望』をつなぐ、これまで語られることのなかった物語を映画化。『エピソード4 新たなる希望』でレイア姫がR2-D2に託した帝国軍の最終兵器「デス・スター」の設計図は、いかにして反乱軍の手にもたらされたのか。

 『エピソード7,8,9』、スピンオフの『ハン・ソロ』を含め、ディズニー制作のスター・ウォーズ映画では本作が一番好き。
 というか、フェリシティ・ジョーンズが好き。大好き。「彼女が観れる」もうそれだけで充分。もちろん、映画として好きなのも事実。
 
 完全にファン向けだし、他のスター・ウォーズ映画を観ていないと理解出来ない。オススメはしにくい。

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〈作品データ〉
脚本:クリス・ワイツ トニー・ギルロイ
出演:フェリシティ・ジョーンズ ディエゴ・ルナ
   ドニー・イェン チアン・ウェン リズ・アーメド
   バリーン・ケイン フォレスト・ウィテカー
   マッツ・ミケルセン ベン・メルデソーン
音楽:マイケル・ジアッキノ
撮影:グレイグ・フレイザー
原題:Rogue One: A Star Wars Story
時間:133分



『ザ・ギフト』(ジョエル・エドガートン)
ジャンル:ドラマ,ミステリー,スリラー
制作国:アメリカ,オーストラリア,中国

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㉑『クリーピー 偽りの隣人』(黒沢清)

ジャンル:ホラー,スリラー,ミステリー
製作国:日本

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〈あらすじ〉
 元刑事の犯罪心理学者・高倉は、刑事時代の同僚である野上から、6年前に起きた一家失踪事件の分析を依頼され、唯一の生き残りである長女の記憶を探るが真相にたどり着けずにいた。そんな折、新居に引っ越した高倉と妻の康子は、隣人の西野一家にどこか違和感を抱いていた。

〈説明・感想〉
 日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の小説「クリーピー」を実写映画化。

 藤野涼子がとにかく素晴らしかったので本作を紹介したかった。喋りの演技がとにかく上手い。声のトーンといい、喋る速度と完璧。この年で一番嬉しい女優の発見は彼女だった。
 いくら彼女の知名度が低いとはいえ、ちょっとしか出演していない川口春奈がポスターにおり、彼女が排除されたのは遺憾。

 本作の評判はそこまでよろしくはないが、私自身は嫌いではない。

〈作品データ〉
脚本:黒沢清 池田千尋
出演:西島秀俊 竹内結子 香川照之
   藤野涼子 東出昌大 川口春奈
音楽:羽深由理
撮影:芦澤明子
原題:クリーピー 偽りの隣人(英題:Creepy)
時間:130分


まとめ

 2016年は本当に邦画の年だった。BEST10に入れた本数こそ少ないが、傑作や興行的に大成功を収めた作品が目立つ。『君の名は』『シン・ゴジラ』『湯を沸かすほどの熱い愛』を始め、『ちはやふる』『聲の形』『オーバー・フェンス』などなど。

 日本とアメリカが多いが、ドイツやハンガリー、トルコ、フランスなどが入ってきたのは嬉しい。韓国映画がやや弱かったように思える。


『ケンとカズ』(小路紘史)
ジャンル:クライム,ドラマ
製作国:日本

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