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「でんかのヤマグチ」から学ぶ“高売り”と“アフターフォロー”

先日、DOITシリーズの中でもご紹介した東京・町田市にある「でんかのヤマグチ」の創業者、山口社長に講演をお願いし、若い経営者の皆さんに聞いていただきました。

創業56年。小さな電器屋を一人で始めた山口社長は、コツコツとお客様を開拓し、売るだけでなく、そのお客様が困っていることがあれば、すぐに飛んでいき対応する。そんな地域密着の経営で経営を伸ばしてこられました。

しかし、今から25年前、近隣に大型量販店が続々と進出。半径2キロに6つのも競合が迫ってくる事態に直面します。量販店同士が「他の店より1円でも安く」と競い合うと、地域の小さな店は太刀打ちができません。倒産、廃業が頭によぎったそうです。

悩んだ山口社長が出した結論は、生き残っていくためには量を売ることではなく、少なくてもしっかりと利益が出る商いをすること。つまり、商品を量販の値段に合わせて安く売ることではなく、今よりも高い値段で売ることにしたのです。それが「高売り」。お客様にしっかりとサービスをしていけば、きっと私たちを選んでくれるはず。一生懸命働く社員のためにも、生き残っていかなければ・・・周囲が猛反対する中で、その戦略を貫きました。

まず、遠くのお客様を台帳から外したそうです。すぐに飛んでいける、近隣のお客様を選びました。そして、5年以上購入のないお客様を台帳から外し、値引きを要請するお客様は量販店を紹介するなど、値段は高くても、でんかのヤマグチのサービスを好んでくださるお客様に絞って商いを展開していったのです。電池が切れたと言われたらすぐに持っていく。テレビの操作がわからないと言われたら、わかるまで何度もご説明に伺う・・・それだけでなく、「旅行に行く間、少しペットの世話をしてくれないか」という頼みまで引き受けることにしました。信頼があるからこそ、そんな依頼も「でんかのヤマグチ」に頼まれるのです。

こうした、手厚いアフターフォローの商いを続けた結果、量販店との価格差が3万~10万もあるのに、買いに来てくれるお客様が増え続け、以前は「25%~27%」だった粗利率、今では「45%」に改善。借金もゼロになりました。最近、あるお客様から、「あなたのお店は、もっと高く売ってもいいのでは」と言われたそうです。どんなことにも親切に対応してくれるヤマグチさんに、そのお客様は惚れ込んでしまっているそうです。そんなお客様がヤマグチを支えてくれているのです。

25年前、もし、量販店に対抗して「安売り」をしていたら体力のない小型店はあっという間につぶれていたでしょう。しかし、山口社長は、従業員の幸せを考え決断をしました。売上を上げるために値引きをするというのは、簡単にできること。しかし、簡単にできることが正しいこととは限りません。本当に大切にすべきことを大切にする。それが険しい道、難しい道であったとしても、やると覚悟を決めてやり続ける。すぐに結果を求めたり、すぐに楽な道を選ぼうとしてしまう、私たちに大切なことを教えてくださった講演会でした。

【でんかのヤマグチ】

●所在地:東京都町田市

●売上高:9億円

●従業員:50名(パート含む)

●ホームページ http://d-yamaguchi.co.jp/



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