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深夜2時に映画を観て、4時間語り歩いた話

映画館で観る映画ってなんか贅沢でいいですよね。薄暗い館内、大きなスクリーン、ポップコーンの匂い。家で観るのとはやっぱり違う。

そして、深夜の映画鑑賞もまた贅沢なものでした。
今回初めてレイトショーを観たのですが、深夜の静まりかえった街を歩いて映画館に行き、帰り道はその余韻に浸りながら散歩をする。だんだんと明るくなっていく空を見ながら朝の冷たい空気に触れるのは何とも言い難い気持ち良さがありました。


さて、今回観てきたのは『アリスとテレスのまぼろし工場』という作品。『さよならの朝に約束の花をかざろう』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で知られる岡田麿里監督の最新作です。


製鉄所の爆発から時は止まり、永遠の冬を繰り返す小さな町に閉じ込められてしまった住人たち。この町では変化は悪。変わらない、退屈な日々が続いていた。そんなある日、14歳の少年、菊入正宗は同級生の佐上睦実に連れられて、製鉄所の立ち入り禁止区域に足を踏み入れる。そこで正宗が出会ったのは感情剥き出しの、まるで獣のような少女だった。その日から変わらないはずの日々が、少しずつ変わりはじめていく――。


少しでも気になった方は是非とも映画館に行ってみてください。心が揺さぶられる、本当にいい作品です。


毎日、なんとなく学校や会社に行って、寝て、起きて…。繰り返しの日々の中で、前に進んでるって感覚はないのに、気づいたら年をとっている。
変わらない日常、変えられっこないと思ってしまう諦めの気持ち。あれ、生きてるってどんなだっけ。
こんなに退屈なんだっけ。
どうして、私は変わらないことを望んでしまうんだろう…。
でも、考えてみれば昨日とまるっきり一緒なんてことは無くって。
些細な変化はやっぱりあって。
痛い気持ちも苦しい想いもあるけれど、それでも隣にいてほしい人がいたりする。
大好きの裏には大嫌いがあって、矛盾してるようだけど、そうでもなくて。
子どもじゃないけど、大人でもない。そんな曖昧さもある。
止められない衝動に身を任せることだってある。


あぁ、生きてるってこういうことなのかもな。



エンドロールが流れ、劇場の明かりがうっすら灯る。
席を立つ人がいる中で、いつもよりも強く感じる自分の心音を聞きながら、「私は今、たしかに生きている」という実感を得ていました。本当にいい作品。

映画館をあとにしてしばらく経つと、気持ちも落ち着いて改めて作品が放つ衝撃の強さを感じました。作品を語りたいという想いには、一緒に観に行った友人が応えてくれました。始発の電車もまだ動かないうちから歩き出し、ひたすらお互いの考えを話しました。
共に作品を咀嚼できる人がいるということは、なんと嬉しいことでしょう。一人で噛み締めているのもいいですが、自分と違う考えに出会える貴重な機会を逃すわけにはいきません。
まぁ、気づいたら4時間くらい歩き続けていたので心底驚いたわけですが…。

うん、たまにはこんな日があってもいいな。
朝はカフェでゆっくりモーニングでもいただいて。
眠りにつくのはそのあとの話。