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映画『すずめの戸締まり』考察(ネタバレ有)

はじめに

こちらは映画を見た方向けの記事です。未視聴の方は、ネタバレ含むのでご注意ください。
ストーリーに関する考察は、様々な有識者がされていますので、本記事では主に、主要キャラクターの行動理由について考察していきます。

ダイジンの行動理由

猫の姿の神様。すずめ達を振り回し、厄災を引き起こしているような、いわば悪役の立ち回りでした。
何してんのコイツ? と疑問に思う視聴者もいたことでしょう。猫の行動に一貫性が無いので、敵か味方か不思議に思われたと思います。
ダイジンの行動理由は、実は明快で、最初のすずめの「うちの子になる?」で全て説明されています。
うちの子になる云々は、すずめが伯母さんに引き取られた時にも出てくる台詞です。
母を探して迷子になった幼いすずめ。雪景色の中で、伯母さんはすずめを抱きしめ、うちの子になりなさいと連れて帰った。
冷たい凍えた場所で、温もりをもらった。うちの子になる? と手を差し伸べてくれた。ダイジンがすずめを好きになる理由としては十分です。
伯母さんの台詞と同じ「うちの子になる?」の言葉をすずめに言わせることで、ダイジンの行動理由は説明されているのです。
また、後戸の前で、厄災を楽しんでいるような姿を見せたダイジンですが、それも少し考えれば理由が分かります。
人間の都合で、凍えた場所にずっと閉じ込められ、封印の役目を担わされていた。その恨みもあったでしょう。人間達は守るべき愛しい存在ではあるけれど、愛しいからこそ、見守るだけの優しい感情だけで居られない。
映画の後半、伯母さんがすずめに向かって叫んだように、ダイジンも人間に対して複雑な情を持っていると思われるのです。

草太の行動理由

映画は、主人公すずめの視点だったので、草太の気持ちはあまり説明されていません。特に、草太はすずめが好きなの? と見ていて疑問に思います。
すずめから見て、イケメンで大人で、正義感を持った草太は、惹かれるに十分な魅力的な存在です。
では、草太から見たすずめは?
彼の立場から、すずめに対する感情を紐解いてみましょう。
突然、椅子にされてしまった草太。不安も混乱も大いにあったことでしょう。しかし、彼には「閉じ師」の誇りがありました。
一家で受け継いできた、大事なお役目。自分が背負っている重責。それにすがることで、何とか自分のすべきことを見出し、冷静になっている状態です。
また、年下の高校生のすずめに、不安をこぼしたりできません。彼女は、守るべき子供なのです。
見栄を張って、危なくても、大丈夫だと見せかける必要がありました。
それにしても、椅子にされて自分は人間に戻れるか分からない、かなり絶望的な状況です。草太自身は、結構、追い詰められた状態。
そんな中で、すずめは自らサポートを申し出てくれたので、正直ありがたかったと思いますね。
また、閉じ師という、一般人から見たらフィクションの中の仕事について、自然に受け入れ、「大事な仕事をしてるんだね」と肯定してもらえた。
これは、ある程度、好意を持つのに十分な理由です。
また、草太は大人に見えますが、まだ大学生。
椅子にされた体で、可愛い女の子と間近に触れ合って、多少はドキドキしたのではないでしょうか。
双子の世話をする時に「君は駄目だ!」と言ってるので、すずめを子供扱いしている訳ではなさそうです。
ただし、明確に恋愛までは行ってなさそうな気もしますね。戦友と恋人の中間でしょうか。

芹澤さんの行動理由

もしかしたら、草太の周囲にいて、普通じゃない出来事に遭遇したことがあったのかもしれません。
明らかに真面目系の草太が、連絡なしに試験に欠席するのは、何かあったと言っているようなものです。
そこから、すぐに家業を連想するあたり、芹澤さんは草太の事情を察している感じがあります。
よって、試験日に現れない草太に「家業が大変」「自分の扱いが雑」と言いながら、また大変なことに巻き込まれているのではないかと心配しています。
それにしても芹澤さん面倒見良すぎですね……。

まとめ

すずめの戸締まりを見た感想ですが、閉じ師という仕事が面白いので、陰陽師などのシリーズものみたいに続けられるよな、と思いました。
また、すずめとの恋愛も、恋愛に行き着く手前の状態です。次回は、草太から、すずめに好きと告げる話も、作ろうと思えば作れるのでは。
今までの新海誠の作品と違って、今回は持続性のあるキャラクターを出したなという印象が強かったです。
映画じゃなくていいから、すずめと草太の今後の話も見たいですね。

補足

草太の祝詞の「日不見(ひみず)の神」のヒミズは、ミミズの別名です。あの祝詞は、眼の前で荒ぶっている大地の神(ミミズ)に祈りを捧げ、人間が借りた土地を元に戻します、という意味です。
園芸なんかやってる人は、ミミズの役割についてご存知だと思います。彼らは痩せた土地を耕して、肥沃な土地に変えてくれます。
この映画は、人がいなくなった土地を自然に返還し、命の循環に戻していく、ごく自然な営みを描いているのです。

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