愛館日記_21/11/27 AM6:00

軽自動車に、全く体格の似つかない大男がハンドルを握って停車している。運転席の窓淵に手をついた、これまた派手に着込んだ女と話している。

「202号室 シングル フリー」

何やら暗号めいたフレーズを大男が言うと、女は間の抜けた声で返事をし、ヒールの音を閑散とした夜明けの街に響かせながらホテルへ入って行った。

車が出発する。
何分後にまた帰ってくるのか。
もう帰ってこないのか。
202号室では、金で女を買収した男が「よく来たね」と言いながらまずは缶ビールを手渡すのだろう。
女はこんな朝っぱらからビールなんて飲みたくないが、仕方なく口に運ぶ。
派手に着込んだ服たちを一枚ずつ脱がせながら愛撫し、録音したかのような喘ぎ声を再生し、男を高揚の果てへと誘う。
これを後何件続けるのか、それとももうこれが最後なのか。

女は、体で買った服たちを再度着込み、枯れた心を癒しながら心で唱える。
『業務完了』

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