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篁 牛人を知っていますか?

 妻は一応画家です。「一応」と書いたのはそれでお金も得ている以上プロで単なる趣味とは言えないという意味です。しかしながらたくさん売れているわけではないし、有名でもないので「一応」と買いたわけです。でも?妻の絵は好きですけど。
 結婚するまで僕はほぼ絵とは無縁の人生でした。それが妻からの影響で結婚してからは美術館を訪れることが趣味の一つとなりました。最初は有名どころ?の印象派の画家から入り、少しずつレパートリーが拡がっていきました。妻は日本画を描いているので、日本画家も好きな人が何人かいます。1人だけ挙げるのは難しいですけど、近代日本画壇という枠組みなら山口蓬春が好きです。
 ところで我が家の日曜日の朝はNHK教育テレビの「日曜美術館」で始まります。昨年の12月5日は「発掘!放浪の水墨画家 篁牛人」でした。番組表を確認した時まず「篁牛人」が読めません。もちろん?未知の画家でした。興味深く番組を見ると
・たかむら ぎゅうじん と読む
・富山生まれで、日本中を放浪しながら絵を描いたこと
・酒を愛し、家族を顧みず絵を描いたこと
・晩年パトロンを得て、経済的に安定し、大作を何点も描いたこと
・パトロンがコレクションを富山県に寄付し、富山に篁牛人記念館が開館し 
 たこと
・それでも全国的には未だに無名であること
などを知りました。そして1月10日まで大倉集古館で生誕120年を記念した展覧会が開催中であることを知りました。俄然興味が沸きましたが、師が走る12月でしたから中々時間が取れずにおりましたが、ようやく年が明けてから「生誕120年記念篁牛人展~昭和水墨画壇の鬼才~」に行ってきました。
 日頃の行いがいいので(?)その日都内は雪でした(苦笑)

足元滑りまくり

結論から書くと素晴らしい展覧会でした。大倉集古館のスペースはそれほど大きくありませんから展示作品は限られていました。それでも初期から晩年に至るまで満遍なく展示していて、この展覧会を企画した館長代行の安村敏信氏(富山出身)の学芸員としての力量がよく分かるラインナップです。少し話しがずれますが、安村氏には日本美術を中心に様々な著作があり、元板橋区立美術館館長であった経歴を後になって知りました。板橋区立美術館を1度だけ訪れたことがありますが、その規模の割に(決して大きくありません)度々ユニークな企画展を開催している理由が分かったような気がしました。アクセスが良いとは言えないのがちょっと残念ですが。

牛人は基本墨絵ですが、彩色画もあります。中期には金に困り、本格的な墨絵が描けなくなったようです。番組からの知見ですが、絵を携えて料理屋などを廻り、「この絵で酒を飲ませてくれ」と頼んでいたようです。酒を飲むために描き、描いては飲むという生活を長く続けたようです。それを諌める人もいたようですが、本格的な墨絵よりもこの頃の彩色の方が僕の好みです。

乾坤の歌


墨絵のそれとはタッチが異なります。戯画的といえるかもしれません。図録の解説(「篁牛人展」の図録はお勧め!)によれば牛人はピカソや藤田嗣治、小杉放庵に憧れていたようですが最初に見た時、僕は「アンリ・ルソーのようだ」と思いました。その妥当性はともかくとして、どこかユーモアのある画風です。

この図録は買いだ!

牛人の作品は本格的な墨絵であっても人物の顔はしばしば簡略化されていてイラスト的です。そしてたとえ鬼や恐ろしい老婆であっても親しみの湧き、ユーモアのあるお顔です。そういうところが牛人の魅力の一つだと思います。限られた点数でしたが大満足の展覧会でした。今年中に本家の?富山にある篁牛人記念美術館も訪れたいと思います。
 ちなみに翌日は雪も止み、素晴らしい晴天でした。そして長年行こうと思っていた葉山の山口蓬春記念館に行きました。噂通りの建物自体が鑑賞の対象となる素晴らしい美術館でした。
美術三昧?の2日間で日頃の垢?を洗い流しました笑

入り口
庭からの眺め
館内はアトリエだけ撮影可




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