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【書評】日本共産党(中北浩爾 著 中公新書)

11代伝蔵の書評100本勝負 39本目 

本書は新聞の書評欄に紹介されていたので、手に取ってみました。新書サイズにしては対ぶな本で、読むのに時間がかかりました。
 日本共産党については随分昔に「日本共産党の研究」(立花隆 著)を読みました。内容はほとんど覚えていないのですが、共産党の負の部分に光を当てた著作であると記憶しています。直近の参議院選挙や衆議院選挙で立憲民主党を中心にした野党勢力との連合が模索されています。その可能性を探るためにも本書を読んでみようと思ったわけです。
結論から書けば本書は労作で、100年の歴史をもつ共産党を僕のような支持者ではない人間がアウトラインを掴むためには最適な本だと思いました。立花本によって日本共産党について色眼鏡でしか見れなくなった人間には役立ちます。著者の筆致は冷静で、有体に言えば日本共産党の苦難の歴史をことさら個人的な評価を加えることなく綴っていきます。そして僕が子供の頃、すなわち1970年代共産党が躍進し、いくつかの革新自治体が生まれたことを指摘し、共産党が果たした役割に一定の評価を与えています。その後、保守政党も革新政党も分裂する中で、共産党だけが孤塁を守っています。著者も指摘するように日本共産党の首脳陣はそこに誇りを持ちつつも、党勢が衰微していることに危機感を持っているのでしょう。だからこそ前述したような党是に距離がある政党とも選挙協力を模索しているのでしょう。
 著者は共産党の過去についてはあまり厳しく糾弾をしていません。しかし最終章でいくつかの問題点を指摘し、提言もしています(おそらく日本共産党にとって提言は受け入れ難いものでしょう)。著者が指摘する問題点は大きくいうと二つです。
・献身的な党員が高齢化し財政や活動に支障をきたしていること。また若い党員率が低いこと。
・日本共産党の党是である民主集中制が党改革の足枷になっていること
問題点を踏まえつつ著者は二つの提言をしています。
①‘社会民主主義への転換
②民主的社会主義への転換

①について著者は社会民主党は存在するが存亡の危機に瀕しているのだから、そこへ方針転換することで他の中道野党の連携を模索すべきとする。
②はマルクス主義を含む多様な社会主義に立脚することで、旧来の政策だけでなく、現代的な政策(エコロジー、ジェンダー、草の根民主主義など)を実現できるとしている。ドイツギリシャ、スウエーデンなどの左翼等をモデルとして考えているようだ。
専門家ではないから著者の提言の是非ついては論じることができないが、金科玉条の如く共産主義に固執している限り、日本共産党に未来はないと思う。

最近、日本共産党について話題になったことは党員で過去に要職経験もあるジャーナリストジャーナリストの松竹伸幸氏が除名処分となったことだ。理由として「シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由」(文春新書)を出版したからだという。これが党則で厳しく戒めている「分派活動」に該当するというのです。松竹伸幸氏は異議申し立てをしているので、最終決定ではないですが、注視したいと思います。もし除名処分が覆えなければ、日本共産党の未来は本当にないと思いますが、どうでしょうか?


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