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花巻市議会12月定例会を振り返って(後編)

前回に引き続き、12月定例会の報告をしたいと思います。

議案審議(12月7日)

12月7日の議案審議日。今議会におけるメインイベントの一つである「花巻市市民参画条例」の審議の様子は、12月8日の拙記事で報告させていただいたのでそちらをご参照いただければ、と思います。

今回の「花巻市市民参画条例」の結果だけみると、「にたないは、新たな会派を結成し反市長派に転じた」と思う方がいらっしゃるかもしれません。
実は、何人かの市民の方や市職員の方からそういう反応をいただきまして、やっぱり「わかりやすさの罠」ってあるんだな、と再確認したところです。

「わかりやすさの罠」については深入りしませんが、日常生活における意思決定において、人はどうしても直感的に判断することが多いです。
『市当局の提案に修正案を提出』=『市当局の提案に反対』=『反市長派』のように。
その方がわかりやすい。

これは認知バイアスにおける特徴で、行動経済学者のダニエル・カーネマンはこれを「ファスト思考」として、そのヒューリスティック(経験則や感覚に基づいたパターン化)について「ファスト&スロー」という著書(早川書房 2012 村井晶子著・訳)で詳細に解説していて、このことについては別の記事で書いたことがあります。

逆に言えば、複雑な思考(スロー思考)は気持ち悪くて、にたないの所属する会派は「是々非々だ」というスタンスに対し、「はっきりしてくれよ」という市民の意見もわかります。

ただ、複雑化する現代社会において、一つの命題に対し「YES」or「NO」という単純な二項対立では解決しないことがほとんどだと思います。そこを強引な手法で「こちらの方が正しい」と主張し進めていったとしても、そこにはたくさんの問題点が生じる。

今回の「花巻市市民参画条例」に対し「NO」ではなく「REVISE(修正する)」の立場で挑んだのはそういう理由です。

なかなか分かってもらえないことも多いのですが、市民のみなさんに説明する機会を増やし、愚直に自分の考えを訴えていこうと思っています。

なお、「どうしてにたないは、こんなに市民参画こだわるんだ」という声が聞こえてきておりますので、今年の締めとなる次回の記事で「市民参画がないまちづくりって誰が責任取るんだよ!という話」を書いてみたいと思います。


新花巻図書館建設建設候補地比較調査にかかる補正予算審議(12月14日)

12月14日の定例会最終日。
新花巻図書館建設に係る候補地の決定について建設候補地の比較が不十分であり、比較調査をしたうえで候補地に対する市民の意見集約を図りたいという理由で、市当局から比較調査業務の補正予算が上程されました。
委託にかかる経費は17,966千円。
委託期間は9カ月とのことです。

この提案に対し、当初私は到底賛同できるものではないと思っていて、そのことは12月1日の記事でも書きました。

結果、私はこの補正予算に賛成しました。
私の所属する会派のメンバーも賛成しました。
(ちなみに私の所属する会派では、賛否に対し拘束をかけていません。念のため)

「『市民参画条例』に反対した(正しくは修正案の提出)のに、なんで補正予算には賛成するんだ?」
「新図書館の建設場所を早く決定した方がいいといっていたくせに、9カ月も先延ばしする案に賛成するのか?」
こういった声が聞こえてきそうですが、この「新花巻図書館建設候補地比較調査」については、12月7日の議員説明会において説明があり、議員から多くの質疑がありました。
もちろん12月14日の補正予算審議でも多くの質疑があったわけですが、その中で、花巻市の市川生涯学習部長が説明した内容を紹介したいと思います。

「この9か月の間に、意見集約のための方法を考えたい。その方法として様々な関係者や団体との話し合いや、『市民との対話』を取り入れることも検討している。そのためのやり方を専門家の方に相談している。」

正確な要約ではないですが、おおむねこのようなことを説明されていました。

確かに、多くの市民の方は「これ以上時間をかけずに早期に建設場所を決めるべき」と思っているであろう一方で、建設場所の候補地である「花巻駅前」「旧花巻病院跡地」のどちらに決定するにせよ、遺恨が残る状況にあるように思います。
現在の状況を見ると、旧花巻病院跡地に立地を求める4,700以上の署名が集まった一方で、花巻駅前の立地を希望する方も多く、市民でも意見が分かれている状況です。

今回、9カ月の期間、そして約1,800万円の費用はかけるものの、意見集約として市民対話の手法がとられ、「花巻駅前」「旧花巻病院跡地」の希望者双方ができるだけ納得するような結論が得られれば、それが一番いい。

先日、青森大学社会学部教授の佐藤淳先生をお招きし「場の活性化を促す『SOUNDカード』体験会in花巻」という催しが開催されました。
(この『SOUNDカード』体験会については改めて記事にしたいと思います)当日、佐藤先生からいただいた資料の中に「『対話(ダイアローグ)』とは、あるテーマのもとで、お互いの「意味付け」を確認し、「新しい関係性」を創り出すプロセス」という説明がありました。
また、「『合意形成(コンセンサス)』とは、完全に同意することではなく、『誰一人として同意を拒もうと思うほどに、異論を投じない様な決定を生み出す』こと。」という説明もありました。

対話による合意形成を、新花巻図書館の建設候補地で例えると、

対話により「花巻駅前」「旧花巻病院跡地」のそれぞれの希望者の意味付け(考え方)を理解し、納得した共通認識のもとに、決定(決断)する。


ということになるのではないでしょうか?

意見集約=合意形成と捉えると、今回9カ月の期間、そして約1,800万円の費用かけたとしても、市民が納得して新図書館が建設された方が望ましい。
うまくいく確率は高くないかもしれませんが、「対話」に一縷の望みをかけて補正予算案に賛成をしたというのが、今回の経緯となります。


市議会議員になってまもなく1年半

市議会議員になって、1年半になろうとしています。
今議会での様々な質疑や賛否の判断など、自分の決断に大きな責任が課せられる場面が多くなってきたように感じます。

今後、これまで以上に大きなプレッシャーとなることも予想されます。
そのときに、場に流されて安易に判断をするのではなく「市と市民が協働してまちづくりをする」という判断基準のもとに、対処していきたいと思います。

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