映画『JOKER』を2日連続で観た理由(ネタバレなし)

わたしは、朝はラジオを聴く派だ。
その日は、パーソナリティーが話題の映画についてコメントしていた。

「映画『JOKER』、観たいな~!
スタッフの〇〇さんは1日で3回も観たとか!」

1日に同じ映画を3回も、しかも映画館で観るの!?
信じられん、そう思いながらラジオを聴いていた。
『JOKER』を紹介する際のBGMには、
クリームの『White Room』が流れていた。

その週の金曜日、つまりこの間の金曜日なのだけれど、
そのままレイトショーで観に行ってみた。
ちょっとすごいアメコミの映画を観に行く気持ちで。


結果、全然違った。


わたしはスプラッターな場面のある映画を好まないので、
この映画もたまにうわぁ…となった。
しかし最終的には、事件の凄惨さよりもその事件の背後にある
複雑かつ普遍的な社会と人間の苦悩のほうに強く意識が向いたため、
結局2回もみてしまった。
また観てしまうかもしれない。

この感想は、今度ちゃんと書こうと思うが、
備忘録的に簡単な感想を書きたい。

まず最初に言っておきたいのが、アメコミ系の題材でありながら、
よくあるヒーローものではないこと。
むしろ、よくあるヒーローものへのアンチテーゼとも
いうべき内容である。
善悪の分別がいかに不明瞭であるか、
悲劇と喜劇がいかに紙一重であるか。
差別、弱者排除、抑圧、出自、世間体、貧困、政治、福祉…
様々な要因からくる苦しみは、いつしか主人公アーサーの
狂気を駆り立て、ゴッサムシティを混乱の渦に陥れる
悪のカリスマにしていく。

優しい心を持ち、コメディアンになるという夢を追って
毎日を前向きに頑張ろうとするアーサーが、
生まれ持った障害や出自、不器用さによって社会から
つまはじきにされていく様子は、とても他人事とは思えない。
「いつも笑顔で」という教えを守り、笑いだけが自分を救ってくれると
信じて努力するアーサーだったが、その笑顔こそが
自らを縛り付ける仮面であることに気づき始める。

逆説的ではあるが、彼は、「笑い」を捨てることで
自分にとっての本当の喜劇を見つけたのである。
それまで、「自分を空気のような存在」と言い、
人からのけものにされ、認識すらされなかった彼だったが、
ある時、自分を馬鹿にし、暴行してきた男たちを射殺してしまう。
この事件により、彼は「笑い」の仮面を捨て、
自らの憎しみと向き合うことで、生きる苦悩から解放され始める。
そしてこの行動は、貧困層による富裕層への下克上としてとらえられ、
同じ苦しみを味わう市民から歓待されることとなったのだ。
その証拠に、最後のシーンの彼の笑いは、今までの辛そうな笑いではない。
心からの笑いである。

人は、善悪を常識のルールとして認識し、判断している。
この映画を観れば観るほど、自分の「常識」がいかに
不確かなものであるかを思い知らされる。
事件を引き起こすJOKERの姿は、まごうことなきサイコパスであり、
普通であれば絶対に理解できないはずだ。
それなのに、彼の気持ちや感情に共感し、観る者の心はえぐられる。
そして、ついに悪のカリスマとなったJOKERが、
今までの仮面を捨て去り、緑に染めた髪と赤いスーツ、
ピエロのメイクでびしっと決めて軽快なダンスで階段を下りてくる
シーンの格好良さと言ったら!!鳥肌モノだ。

演者はさることながら、演出がすごくいいのだが、特に気に入ったのは
音楽。劇中歌である。
フランクシナトラやジミーデュランテなど、
鷹揚で明るいイメージの音楽が、ときにものすごく不穏な
雰囲気をまとって劇中を彩る。
先に出てきたクリームの『White Room』、これまた
超絶かっこいいタイミングで流れるので、ぜひ注目してほしい。



とりあえず、Apple Musicで『JOKER』プレイリスト作った。


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