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髪とおさらばしたい

美容院が苦手なこともあって、散髪を先延ばしにして早数年が経ってしまった。おしゃれな女性や美容師からすると、伸ばしっぱなしの髪だなんてありえないと叱られてしまいそうだ。

子どもの頃からなんとなく長い髪の毛が好きだったこともあり、美容室にお世話になる回数はたぶんきわめて少なかった。初めてちゃんと切ってもらったと自分でも覚えているのが、プールでもらってしまった毛じらみをどうにかするためにショッピングセンターに入ってる美容室に行ったときだ。

だいたい、面倒くささが窮まっても自分で切ろう、よし切りに行こうという気がまったくない。
周囲の人間に長すぎるから切ったら?と言われても、なんとなく切りに行こうかなと思っていた気分を台無しにされたような気がしてしまう。あまのじゃくなのは知っている。
母や祖母が「切りに行くわよ」と言い出し、強引だと思うくらいののっぴきならないような状況に追い込まれて初めて、ようやく観念する。
そういえば自分から切りに行こうって思ったこと、ほとんどない。

髪の毛を染めたこともなければパーマをあてたこともない。
カラーリングに興味関心が一切なかったわけではないが、ただでさえ美容院に行かない自分がプリンな頭になるだろう未来は自明だったのであきらめた。プリンな頭が気になるというより、染めた髪の色で人の目にどう映るのかが怖かったというのも大きかったと思う。

頑として切りたくないと思っているわけではない。
長い髪は正直洗うのが疲れる。かわかすのも。定期的に切りに行かなければ梳かれないし、毛先も傷みやすく絡みやすい。

ものぐさでめんどうくさがりの私ではあるが、ここ二年は本音を言うと切りに行きたくて仕方がない。しかしこの長い髪である。
腰を越えおしりまで届く長さ。根本から考えると30cmは優に超えて40cm近いのではないだろうか。
実は長さが25cmくらいに達しようとしていたときに髪の毛が寄付できることを知った。できるだけ長めの髪のがどうやらいいらしい。手入れもしてないが長い髪がもしかしたら役に立つならと思い、そのまま伸ばし続けたものの、新型コロナが広まったことで寄付を受け付けている先が少し減ってしまっていた。いっそ個人で切って売ってみようかとも思ったが、さすがに面倒くさい。切りに行くのすら面倒がっている人間が、わざわざ切ってもらった髪を自分でだれかに売ろうとするのを手間だと思わないはずもない。
そもそも寄付したいと思ったのは伸ばしっぱなしにした髪をそのまま捨てるのはなんとなくもったいないかもな、くらいの気持ちだったのだ。
とはいえ、若い子の栄養がいきわたったような髪でもなければただ単にものぐさで伸ばしっぱなしの髪の毛なので正直思い入れなどもあるはずもなく。
毛先のあまりの傷み具合に、そろそろ普通に切ってもらうしかないのでは……と思い始めたところだ。

それにしても長い髪。
平安時代の絵画に描かれた平安美人が黒髪ロングなのを思い出してほしい。
彼女らは自分ではなく人に髪の毛を手入れしてもらっていたらしいと聞くが、自分で長い髪になって気づいたけれど、髪の毛の手入れは他人にやってもらう方がすごくすごーく楽だということだ。
まず普通に櫛を通すとき、髪の毛が長いので腕が疲れる。手入れがされてない髪なので櫛でいきなりやると絡まるため、最近はもっぱら指を髪の毛にさしいれてある程度ほぐれてから櫛を通すようにしている。……引っかかるときは引っかかるが。

さて、長い髪は髪ゴムで結ぶと、結んだ先に髪の重さで首が持って行かれるので結ばないでいる。するとどうだ、髪がいたるところで引っかかる。
この40cm近くの長さまで伸ばしたのがたぶん初めてだからなのもあるが、まあどこでも引っかかる。
お風呂場の座椅子に座ると、20cmくらいの椅子なものだから頭を前屈みにすると髪の毛が床につく。位置が悪ければ排水溝の中に髪の毛が吸い込まれてしまいそうだ。
さて立った状態で前屈みになると、髪の毛は幽霊のごとく柳かすだれのように揺れる。膝を曲げていたりしたら最悪だ、地面についてしまう。和式トイレが減っていてよかった。
うっかり油断をして扉を閉めると、背中側に流していた髪の毛がドアの間に挟まるのは日常茶飯事。ドアより戸のが挟まりやすいことに気が付く。
寝起きに櫛で梳こうとするとほぼ100%絡まる。力任せにやったら一巻の終わりだ。髪先が絡んでくしゅっと丸まったり引っかかったりして、髪が折れ曲がる。

傷んだ毛先を持っているならトリートメントをするわけだが、うっかりサボってしまうと翌日がひどい。髪の毛を結んで寝なかった日は最悪だ。前日に風呂に入って髪の毛をケアしなかった日も同様。絡まって絡まってほぐすことから始めなくてはいけない。
髪の毛は摩擦で傷むという。

CMに出ているロングの女性たちのあの髪の毛は維持するのが大変なのだと思う。美容院で梳いていても、だ。

と、とりとめもなく書いてみた。
この長い髪とおさらばしたいが、やっぱり美容院を予約しようという気持ちにならない。
……あたたかくなったら、がんばろう。

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