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ピアノの「お見積もり」をやめました

眠っているピアノをまた使いたいというご相談は多いです。

古いピアノも多く、買った当初に数回だけ調律をして10年以上弾いていなかったようなケースもざらです。

使っている方からすると「はたしてこのピアノは直して使えるのか?」「そしてどのくらい費用がかかるのか?」が一番の心配ごとですよね。

実際にたまに、まずはお見積りを...と言うご相談もあるのですが、少し前に「お見積りだけ」のサービスをやめました

古いピアノは大きくわけて4パターン

もちろん古くても使えるピアノはたくさんあります。でも中には残念ながら手の施しようのないピアノもあるので、そのピアノがどのコンディションなのかを見極める必要があります。

A.最低限のメンテナンスで使えるピアノ

調律と掃除、当日できるかんたんな修理・調整でひとまず使えるようになるケースです。費用の目安は調律料金+αで3万円以内のイメージです。

B.ある程度手を入れれば使えるピアノ

最低限のメンテナンスに加えて、別日に再訪や部品をお預かりする修理が必要で3〜10万円くらいで使えるようになるケースです。

C.大きく手を入れれば使えるピアノ

たくさんの修理が必要なケースです。高額になると予算によっては実質使えない状態とも言えます。複数の項目の修理が必要で合計10万円以上。

D.これ以上つかうのは難しいピアノ

修理不能だったり、故障が多すぎて現実的な予算内ではおさまらないケースです。直せるとしても50万円以上からの予算が必要です。
※オーバーホールで使えるようになるピアノも、買い替え可能な価格になることから今回の記事ではこの枠として考えます

見積もりだけでわかるのはごく一部

そのピアノがA〜Dのどれに該当するのか?答えは正直なところ、やってみないとわからないです。

もちろん点検をすればある程度はわかるのですが、あくまで「ある程度」。調律をしてみることで初めて壊れていることがわかる箇所や、修理をした影響で新たに不具合が出るところ、弾くようになると出てくる隠れ故障もたくさんあるんです。

部品がグラグラするのがただのネジの緩みが原因なのかフェルトの劣化なのか、まずはネジを全部しめてみないとわからなかったり。

いざネジをしめると、実はフェルトは逆にきつくて別の修理が必要なことがわかったり。

鍵盤をスムーズに動くようにしたことでハンマーの動きが悪いのが浮き彫りになったり...と色々あります。

ピアノはたくさんの部品が複雑に絡み合っている

「ピアノの状態がわかる度合い」としては、メールなどで症状を聞いた時点では10%くらい、点検見積もりをしてやっと40%くらい、実際に調律をすることで70%くらいといった感じです。さらに弾き込んでメンテナンスを繰り返すことで80〜90%とわかっていきます。

お見積りのみでわかるのは表面的な、あくまで今の状態が最低どれなのか?です。

Aだろうと判断されたピアノはBやCの可能性もあるし、Bと思ったピアノがDかもしれない、Cに見えてもDであると言うことは意外とあります。(逆にCだと思ったらBだった、みないなことは少ない)

点検するだけはコスパがすこぶる悪い

「開けて点検しただけのピアノ」は、同じようにただ閉めて終わりとはいきません。見る前と同じ状態にきちんと元に戻せているか、調律までしたとき以上に気を使います。

出張費やそれらの時間も含めると、見積もりだけでも調律するのとそう変わらない料金設定にせざるを得なくて。なのに正確なコンディションがわかるわけでは無いので誰も幸せにならない。

これらが「お見積もりのみ」をやめた理由で、結局はやってみないことには正確なコンディションもこれからかかる具体的な費用も伝えられらないので、事前に見積もりだけをする費用と時間がもったいないんです。

どんなピアノでも、とにかくまずは一度調律をしてみることがなによりの見積もりになります。

調律の前にはどちらにしても細かく点検をします

やみくもに直すのが正解とはかぎらない

古いピアノで一番怖いのは、最初から費用をかけてたくさんの大きな修理をした後、結局別の重大な故障が発覚してすべてがムダになることです。「BやCだと思っていたら実はDだった」ケースですね。

それを避けるためにも、僕はまずは費用があまりかからないけど優先度の高い作業から順番に、様子を見ながらおこなっていきます。いわゆる「コスパの高い」作業から。

そういった作業をくり返していくうちに、大きな故障や予算を超えた修理の必要が出なさそうであれば、少しずつメンテナンスの範囲を広げていきます。もし途中で思っていた以上に状態が悪そうであれば、その時点で引き返せるので被害が少なくて済むので。

費用面だけでなく、じっくりと本当の状態をあぶり出していくとそのピアノの問題点もよりはっきりと見えてきますし、ピアノに負担をかけずに良くしていくことができるのではないかと思っています。

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