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それは、紙ひとえ(表裏一体透視の二律背反).00

「文化の日」にあなたは何をするか 釣かゴルフか?


日本人の自虐、と称して昨日は記事にしましたが、今朝は「文化の日」でもあるし、朝から難しい話でもしようと思います。

文化の日、ですからそれに関する文化的な話題なんですが、その文化の定義が何かというと、すぐに「 文化       」という単語が頭の真中に出てきて、よくある事件ニュースの解説で「文化      」のようなもの、というので書かれたアレです。

「のようなもの」、ですから特定は避けて、それらしきもの、という判断なのでしょう。そして「文化」、「   」という概念は、どのような仕様で作られるのかYouTubeでも説明してません。

「米国の格差を深刻にしたのは私たちだ」 //courrier.jp/news/ 
ファスト・カンパニー(米国)2023.11.2

2015年にノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートンが、新著『米国の経済学 移民エコノミストが探る不平等の国』(未邦訳)を10月に上梓した。
米誌「ファスト・カンパニー」は同書を「経済学者にとって耳が痛くなる一冊」と評している。  抜粋

昨日書いた記事は「日本人の自虐的記事」でしたが、今日のは、「アメリカ人的自虐吐露」のような記事になってます。

あのアメリカでも最近、そんな意見がある境目から、多くなっているようです。
境目とは、その「     」騒動であることは、云うまでもありません。さらに、選挙準備戦も活況で、来年2024年11月5日に向け民共の舌戦が展開してます。

■共和党候補者の第2回討論会が、      前大統領不参加のまま9月27日に実施された。それでも、早期に共和党予備選が実施されるニューハンプシャー州の世論調査では、      氏が依然リードしている。
ボストンのサフォーク大学が10月4日、ニューハンプシャー州の2024年大統領選挙などに関する世論調査結果(注1)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによれば、2024年大統領選挙の共和党予備選がもし今日実施されれば誰に投票するかという問いに対して、        氏と回答した割合が49%と最も高かった。続いて、ニッキー・ヘイリー氏(元国連大使)が19%と急上昇し、2位だった。これに、ロン・デサンティス氏(10%、フロリダ州知事)、クリス・クリスティ氏(6%、前ニュージャージー州知事)が続いた。ビジネス短信
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/10/f7452f29412fe659.html

その下馬評では、有利のようですが一部ではダメだし論が出ていて、前回予想的中の木村氏が今度は逆の予想でした。と云っても世界は、紛争戦争の情報が乱れ飛んでいて、中東の混沌が、再び世界経済にも影響するという、まったく不安定なトレンドが渦巻いている、といっていいでしょう。

なぜそうなってしまったのか、という推論はいろいろ出てますが、一説には「貧富所得格差」の拡大が、それを助長しているという話しで、今朝の記事も、そのことについて言及したものです。

それをだれが云ったかといったら、経済学者」アンガス・ディートン」というノーベル賞学者でした。

■ディートンは英国女王からナイトの爵位を与えられることになっているのだ。我々がこうして昼食をとっているいま、彼の妻であるアン・ケースは、バッキンガム宮殿でかぶるために注文した帽子を受け取りにニューヨークに行っているという。
「私はいつも、疎外感を味わってきましたが、そんな考えはもう捨てたほうがいいのかもしれません。誰にも認められていないのではと感じてしまうのですが、そんな考えは馬鹿げているし、あり得ないことなのですから」イングランドでは、スコットランド人はよそ者扱いされていましたから。
いつでも何かにつけて、自分の領分から出るなと言わんばかりの扱いを受けていたし、厳然たる階級が存在していました。ですから、私はトランプを支持する人々に心から共感しているのです。(本文一部抜粋)

画像ノーベル賞受賞後にプリンストン大学で開かれた記者会見
PHOTO: JESSICA KOURKOUNIS / GETTY IMAGES


ノーベル経済学賞の受賞者が明かす「自責の念」
「米国の格差を深刻にしたのは私たちだ」https://courrier.jp/news/archives/343115/  ファスト・カンパニー(米国)2023.11.2 経済学者アンガス・ディートン

2015年にノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートンが、新著『米国の経済学 移民エコノミストが探る不平等の国』(未邦訳)を10月に上梓した。米誌「ファスト・カンパニー」は同書を「経済学者にとって耳が痛くなる一冊」と称した。ディートンが、自身を含む経済学者やその助言を受け入れた大統領たちが犯した「過ち」に切り込んでいるからだ。

彼が「格差を招いたのは経済学者だ」と、自らのレガシーにまで疑問を投げかける理由とは──。

移民の経済学者が語る「米国の失敗」 格差は研究対象ですらなかった

──米国に移住したそもそもの理由を教えてください。

あまり高潔ではない理由です。米国のほうが給料が高かったからです。当時はお金に困っていましたから。若かったし、小さい子供が2人いた。彼らの母親は早くに亡くなっていて、家計が苦しかったのです。米国なら不自由なく暮らしていけるのではないかと考えました。それに英国の経済学者の界隈では当時、真にやりがいのある研究ができるのはやはり米国だという雰囲気があったのも事実です。ノーベル経済学賞を受賞した一流経済学者はたいてい米国で研究していました。

──しかし、米国で実際に不自由なく暮らしている人はあまりいません。それに、あなたが経済学者になられたころは、「格差」が本格的な研究テーマだと口にすることさえ憚られたそうですね。

「(格差問題は)素人のテーマだ」と言われたときは本当にショックでした。経済学者たるもの考察すべきは効率性であり、公平か否かは政治家が考えることだと。経済学ではそうした線引きがあって、とりわけシカゴ学派(米経済学者ミルトン・フリードマンが中心となった経済学の一派で、自由経済を重視して政府の介入を否定している)ではそう考えられています。

私が米国に移住した1983年は、第二次世界大戦後の成長期である「輝かしい30年」が終わったばかりで、人々の暮らしが一様に良くなっているように思われていました。そのため、「格差」は研究対象としてあまり注目されていなかったのです。

──しかし新著の冒頭では、米国社会は1983年よりずっと「絶望的になった」と述べています。

80年代、米国の平均寿命はごく並みの水準でしたが、いまや完全に後れをとりつつあります。4年制大学の出身者は結構長生きですが、大卒者以外となると、惨憺たるものです。米国はチャンスに満ちた国だと、私はいまも思っています。ただし、セーフティネット(社会保障)はあまり整備されていません。
チャンスはどんどん大きくなっているのに、セーフティネットは軽視される一方です。これは賃金格差よりもはるかに重大な問題だと考えます。大卒者でない人々は下層階級のようなもの、いなくても困らない存在なのです。
原因は実にさまざまです。70年代を振り返ると、実質賃金は上がり、ブルーカラーの中流層が存在していました。鉄鋼工場や自動車工場で働くブルーカラーであっても、かなり裕福な中流層になれました。マイホームとマイカーを所有し、バカンスにも行くことができたのです。
ところがいまは、当時のような生活を送ることがはるかに難しくなりました。仕事が中国やメキシコ、ベトナムなどに流れてしまいましたから。そうした状態にある人々を実際に気にかける人がいなくなった気がします。

実際に気にかける人がいなくなった気がします。

米国を失墜させた2つの要因

──欧州各国はこのような格差拡大や「絶望死」の急増を免れることができたのに、米国はできていません。その理由は何だと思いますか?

現状を招いた一因は、米国にセーフティネットがないことです。欧州には付加価値税(VAT)があり、税負担が米国よりも大きい。ゆえに細密なセーフティネットがあって、困窮してもたいていは守ってもらえます。英国も米国と同じように製造業が衰退していますが、米国ほど苦労はしていません。失業者扶助がより手厚いからです。米国が現在のような状況に陥ったもうひとつの要因は、あまりにも無残な医療制度です。米国の医療費はGDP(国内総生産)の20%に達しようとしています。こんな国はほかにありません。しかも、医療費のために捻出している資金は本来、セーフティネットやよりよい教育制度などに使われるはずだったものです。

おまけに、多額を医療費に注ぎ込んでおきながら、成果はあまり出ていません。病院や医師、医薬品会社、医療機器メーカーなどのヘルスケア機関はかなり潤っていますがね。米国の医療制度は、膨大なコストがかかるばかりか、実に奇妙なやり方で資金を賄っています。つまり、公的医療保険制度であるメディケア(高齢者向け医療保険制度)の加入年齢に達していない人の大半は、勤務先を通じて民間の医療保険に加入しているのです。

いま現在、民間医療保険の家族プランはだいたい2万ドル(約300万円)。この額は、企業のCEO(最高経営責任者)だろうが、その会社で働く守衛だろうが、まったく同じです。

しかし、守衛が支払うべき保険料まで賄う雇い主などいるのでしょうか。結局、守衛をクビにして、外部の警備会社から雇うことになります。米国外の企業に業務委託できれば安上がりですし、それが無理でも、国内の派遣会社がある。そうした派遣企業が必ずしも労働者にとって優しいとは限りませんが。

──新著は、経済学者であるあなた自身の存在意義を問うような内容に思えます。米国が抱えるこうした問題に対し、経済学者はどの程度の責任を負っているのでしょうか?

経済学者は知識が豊富ですし、有益な成果を数多くあげてきたと思います。数字を得意としており、統計にも詳しい。経済専門家として多くの強みがありますが、経済学者があまり役に立てなかったことも数多くあったと思います。私たちはシカゴ学派が提唱する新自由主義、市場は万能だとする考えにちょっと屈従しすぎました。なにも、自分が正しくてほかの人はみな間違っていたと主張しているわけではありません。私だって同罪です。

私たち経済学者は、金融市場は昔と比べるとずっと安全であり、気を揉む必要はあまりないと考えたのだと思います。それは完全な間違いでした。きっと、ハイパー・グローバリゼーション(行き過ぎたグローバル化)に過度に熱狂してしまったんでしょう。

労働者は仕事を失うだろうけれど、もっといい仕事を見つけられると確信していましたが、そうはならなかった。今後数年で真剣に見直すべきことが多々あると思います。(続く)

インタビュー後編で、ディートンは「経済学者に耳を貸さないジョー・バイデン大統領は、かつての大統領バラク・オバマやビル・クリントンよりもマシだ」と語る。

米国国民を失墜させたのは医療制度とセーフティネットの欠落だと述べたディートン。3つ目の原因として「移民政策」を挙げ、その誤りについて詳述する──。

移民制限が功を奏した例

──新著『米国の経済学 移民エコノミストが探る不平等の国』(未邦訳)では、経済学者が移民政策を強く支持してきたことは間違いだった可能性があるとも書いています。それには驚かされました。なにしろ、あなた自身が移民なのですから。そのような考えに至った経緯を教えてください。

経済学者はみな、移民は誰にとっても有益との見解を基本的には貫いてきました。移民が入って来ても、自国民の賃金にはまったく影響がないと主張してきたのです。しかし、明らかに企業は移民が賃金に影響を及ぼすと考えています。だからこそ、移民政策の継続を求めて熱心にロビー活動を展開しているわけです。ですから、誰かが間違っているのでしょう。

米歴史学者ジェファーソン・カウィーの著書に『大いなる例外』(未邦訳)があります。私の理解が正しければ、米国政府が20世紀半ばに移民を制限しなければ、グレート・マイグレーション(1910~1970年にかけてアフリカ系米国人が農業中心の南部から工場が盛んな北部に大移動した動き)は起こらなかっただろうと、カウィーは考えました。

シカゴやフィラデルフィアなどの工場主は、ドイツ人やセルビア人のほうを好んでいたのでしょう。でも、欧州移民の労働者は見つからず、結果的にはアフリカ系米国人に雇用機会が生まれ、北部への大移動が起きました。政府が移民を制限したことで、主要な人口層の多くの地位が向上したのです。

経済学者は得てして、一般人が移民について何か意見を言うと、それを一蹴します。これに関してよく思い出すエピソードがあります。

ゴードン・ブラウンは英国首相だった2010年、のちに敗北を喫する選挙の運動中に、1人の女性支持者から移民について苦情を言われました。そして、その直後に乗り込んだ車内で側近にこうつぶやいた声がマイクに拾われてしまいました。「偏屈な女だな」ともらしたのです。庶民の考え方をしっかり受け止めようとする姿勢はほとんどみられませんでした。

なにしろ、あなたや私のような国際感覚をもつ人間は、グローバル化が進んだ世界でうまい具合にお金を稼いでいるのですから。

──冗談半分なのか、本気なのかはわかりませんが、ジョー・バイデン大統領はビル・クリントンやバラク・オバマら歴代の大統領よりもマシだとおっしゃっていますよね。バイデンは経済学者の言うことにあまり耳を貸さないからだ、と。

経済学者の仕事は、ただ政策を研究することなのですか。それとも、政策について提案することなのですか。

その2つをはっきり分けられるかどうかはわかりません。政治家は私たち経済学者が助言することすべてを鵜呑みにすることはないと思っています。私たちは大統領にアドバイスするのであって、決断は下しません。ちなみにクリントンは政策オタク、オバマは学者でした。ノーベル経済学賞の受賞後、私が妻のアンとともにオバマ大統領に面会したときの話をしましょう。私たちの共著論文がその6日前に発表されていたのですが、オバマ大統領は脚注に至るまでしっかり読んでいて、その内容についてぜひ話し合いたいと仰いました。学術研究に心から関心を寄せていて、それは米大統領として素晴らしいことです。

とはいえ、私たち経済学者は誰かを代弁しているわけではありません。それに対し、ジョー・バイデンの政治家としてのルーツは労働者階級の労働運動にあります。これは非常に有意義なことで、労働者階級の人々にとってはワシントンで活躍できるチャンスです。その意義は、クリントンにはまったくわからなかったでしょうね。

それでも経済学に期待する理由

──新著の締めくくりでは、格差を解消するための解決策を見つけるのは難しいと述べています。米国は変わることができるのでしょうか。

ここ50年は、政府に対する反感のようなものが漂っていました。その前は、政府に好意的な傾向がずいぶん強かった。ニューディール政策がありましたし、英国ではケインズ主義の経済政策が優勢でしたから。どの政党が政権に就こうが関係なかったのです。

しかし、予測はさほど容易ではありません。経済学者は私を含め、「これは効果がなかったな」と過去を振り返るほうが得意です。「だったら何が効果的なのか?」と問われると、何も説明できずに気まずくなり、恥をかきます。

誰もが好んで引用するのが、イタリアの思想家で政治家の故アントニオ・グラムシの「古いシステムは破綻し、新しいシステムが懸命に生まれようとしている」という言葉です。ただし、新しいシステムがどのようなものになるのかを知る人はひとりもいません。

──こうした状況にありながらも、新著では、米国に対していまでも畏敬の念を抱いていると書いています。希望をもてるのはなぜでしょうか?

米国には本当にチャンスがあります。英国の欧州連合(EU)離脱を支持した人たちは「欧州には立派なセーフティネットがあるのかもしれないが、アマゾンやマイクロソフト、グーグルのような企業が生まれていない」、と訴えていました。

人々はこの2つを関連づけているようです。本気で革新的なビジネスをつくりあげたいなら、恐らくセーフティネットを取り払う必要があるのだと──本当にそうなのかどうか、私にはわかりませんが。いずれにせよ、米国はとても創意に富んだ国です。ノーベル賞を受賞した米国人のほとんどは、移民か移民2世です。経済学の大変好ましいことをひとつ挙げると、思想体系や考え方が大きく異なる欧州や南米、アジアなどの人々をどんどん受け入れてきたことだと思っています。

ですから、つねに希望があり、変化はいつでも起きます。経済学はとても開かれていて、どんどん変化する分野なのです。

政治についてですか?
政治の未来を予測するのは愚か者だけですよ。

ジョナサン・ハイトが解き明かす 「アメリカ社会がこの10年で桁外れにバカになった理由」



ノーベル賞経済学者が語る「格差と幸福とトランプ政権」
「ザッカーバーグが金持ちだから、誰かが貧しいわけではありません」
9min2017.2.28 フィナンシャル・タイムズ(英国) 
Angus Deatonアンガス・ディートン 1945年、英国生まれ。米プリンストン大学経済学教授。専門分野は健康と豊かさ、経済成長など。2015年に消費、貧困、福祉などの研究が評価され、ノーベル経済学賞を受賞。

格差と健康や幸福の関係について、長年研究してきた経済学者のアンガス・ディートンは、2015年にその功績が認められてノーベル経済学賞を受賞した。グローバリズムを支持し、貧しき者に寄り添う目線でミクロ経済学を発展させてきたディートンは、昨今のトランプ旋風やポピュリストの台頭をどう見ているのか。

英経済紙の記者がピノ・ノワールを傾けながら話を聞いた。

ノーベル賞受賞者とのランチに遅刻!

ノーベル賞受賞者との初めてのランチだというのに、遅刻してしまった。
レストランに入ると、2015年ノーベル経済学賞の受賞者、アンガス・ディートンが奥の小さなテーブルに座っているのが見えた。
ディートンが指定したのは、「ミストラル」という名のプリンストンにある小さなレストラン。
地元の食材を世界各国のさまざまなレシピと融合させ、遊び心に富んだ一皿を提供することで知られた店で、ディートンがプリンストンの街で最も気に入っている場所だそうだ。

握手を交わし、遅刻したことを謝罪した。駐車場の入口でクレジットカードが認識されなかったので、しばらくマシンと格闘していたと弁明すると、ディートンは私を許してくれただけでなく、アドバイスまでしてくれた。

その様子はいかにも、名門校の教授といった感じだ。ツイードのジャケットに、丸メガネ、手入れされていない白髪といった風貌がアイビーリーグらしいエキセントリックな雰囲気を漂わせている。

ノーベル賞授賞式に出席したディートン氏 PHOTO: PASCAL LE SEGRETAIN

赤い星模様がついた青い蝶ネクタイは、やはりノーベル経済学賞を受賞した英国人リチャード・ストーンの形見だ。彼はディートンの恩師でもあった。

ディートンおすすめのレストランは、活気に溢れていて、飾られている食器も音楽も趣味がいい。洒落たレストランでオレゴン産のピノ・ノワールを楽しみながら、我々は死、痛み、そしてドナルド・トランプについて議論を交わした。

米国で中年白人男性の自殺が激増

米大統領選を経て、欧米の政治世界が激震しているいま、ディートンはポピュリストの“地殻変動”について語ることのできる数少ない人物の1人だ。

ノーベル賞を受賞したわずか数週間後、ディートンは、彼と同じくプリンストンの経済学者である妻アン・ケースとともに、米国社会の最近の「ある傾向」に警鐘を鳴らす論文を発表した。自殺率、とりわけ中年白人男性という特定層の「死への欲望」が、ここ数年無視できないレベルに高まっているのだ。

彼らの調査によれば、1999年から2013年の間に、当該層の49万人が自ら命を絶っているという。

ディートンとケースの研究結果は、現状に不満を持った白人たちの間を席巻したトランプ旋風にもつながるものがある。オバマ元大統領によってホワイトハウスに招かれたとき、ディートンはこの論文について長時間、質問攻めにあったそうだ。

合理的な米国人らしくきびきびと働くウェイトレスが、フェンネルのピクルスとポテトチップスが添えられたマスのリエットを運んできた。ディートンの好物だ。

ディートンはオバマに会った話の後に、こんな皮肉を付け加えた。

「2016年の最も思い出深い出来事は、オバマ氏と会ったことです。彼はすばらしい品格を備えた人物でした。大統領としての功績は残せなかったかもしれませんが、現状を考えればそれは取るに足らないことです」

トランプが米国大統領となったいま、彼の言うことは確かに当たっている。ディートンはトランプ政権の誕生、そしてその少し前に英国を震撼させたEUの離脱は、どちらも政治エリートの傲慢さがもたらしたものだと考えている。

彼はクリントン夫妻を、特にヒラリー・クリントンを酷評した。夫妻が、すでに弱体化した体制側との間に依然として太いパイプを持っているからだ。

「今回の大統領選では、ヒラリーを好きなふりをしなくてもいいことが、とてもありがたかった」とディートンは漏らしたが、不本意ながら選挙では彼女に一票を投じたそうだ。

だがそれよりも彼をイラつかせるのは、昨今の中道政治の体制に蔓延している無関心さとテクノクラート的な考え方だという。

「初期の頃の英国労働党首たちは、駅のプラットフォームで讃美歌を口ずさみながら出勤していたものです。彼らもまた庶民の1人だったのです。

しかしながら、いまは違います。私が敬愛する元英国首相ゴードン・ブラウンやオバマ氏のような政治家を思い浮かべてみてください。

彼らは庶民ではありません。庶民のために有益な政策を遂行する、進歩的な考えを持った知識人なのです」

エリートになじめなかった学生時代

ディートンの思想は、彼の生い立ちに深く関係している。

彼は1945年、英国エジンバラで生まれた。ヨークシャー生まれの炭鉱夫を祖父に、土木技師を父に持つ。苦学した経験を持つ彼の父は、若き日のディートンに勉学に励むよう厳しく命じ、その結果、彼は奨学金を得て「スコットランドのイートン校」と呼ばれるフェテス・カレッジからケンブリッジ大学へと進学した。
「私は常に自分をよそ者だと感じていましたが、もちろんこれは気分のいいものではありませんでした。フェテスに通っていた頃は、特にそう感じていました。当時のイングランドでは、スコットランド人はよそ者扱いされていましたから。いつでも何かにつけて、自分の領分から出るなと言わんばかりの扱いを受けていたし、厳然たる階級が存在していました。ですから、私はトランプを支持する人々に心から共感しているのです」

ノーベル賞受賞後にプリンストン大学で開かれた記者会見 PHOTO: JESSICA KOURKOUNIS / GETTY IMAGES


ディートンは釣り人でもあり、夏はいつもモンタナ州でマス釣りをして過ごすという。「釣りの後は、すばらしいアイデアがよく思い浮かぶんですよ」とディートン。釣りも彼の思想に影響を与えているという。

「貧しい暮らしを強いられている人々がいて、しかも彼らはそれぞれに異なる価値観を持っています。

たとえば、釣りのガイドには退役軍人もいますが、彼らは健康上の問題を抱えていても無料で利用できる退役軍人用病院で治療を受けようとはしません。それを貧しい者への施しと考えているからです」

だが、ディートンがエリート層に対して疎外感を覚えるというのは、何だか皮肉な話だ。彼自身、それをよく承知している。なぜなら、このインタビューの数日後、ディートンは英国女王からナイトの爵位を与えられることになっているのだ。我々がこうして昼食をとっているいま、彼の妻であるアン・ケースは、バッキンガム宮殿でかぶるために注文した帽子を受け取りにニューヨークに行っているという。

「私はいつも、疎外感を味わってきましたが、そんな考えはもう捨てたほうがいいのかもしれません。

誰にも認められていないのではと感じてしまうのですが、そんな考えは馬鹿げているし、あり得ないことなのですから」

ディートンはロースト・ペッパーとブロッコリー・ラーブのフラットブレッド・ピザを注文し、トッピングに松の実、フェタ・チーズ、レーズンのピクルス、目玉焼きを選んだ。私はビーツと梨とヘーゼルナッツが添えられた、とろりとしたブッラータ・チーズにかぶりつく。「ブッラータが好きなんですか?」とディートンに尋ねられ、私は思い切りうなずいた。そして、「あなたがデータに強いこだわりを持つように、私もブッラータにはちょっとしたこだわりをもっているんです」と白状する。

ディートンは妻のケースとともに、引き続きデータを用いたミクロ経済の研究に取り組んでいる。

大統領選以降、白人の死亡率が高い地域と、トランプの得票率が高かった地域との相関関係に着目している研究者がいる。だがディートンは、それよりも「身体的苦痛を訴える人々が増えているという事実に着目すべきです」と言う。

米国では過去数十年間で、体の痛みに悩む人が急増し、それに伴って鎮痛薬オピオイドの使用が爆発的に増えているのだ。これこそが、白人中年男性の死亡率上昇の原因となっているに違いないとディートンはにらんでいる。

米調査会社ギャラップと協力し、彼は過去24時間以内に何人が体の痛みを訴えたかのデータを収集しているが、米国内ではその数に一定の規則性は見られない。そのため身体的苦痛を抱える人が急増している原因とトランプの躍進との関連性は、まだ明確になっていない。

むしろ原因は、製薬会社や医師がオピオイドを過剰に処方しているからだと、ディートンは考えている。

米国では薬物中毒者が急増している。2016年は、ドラッグの過剰摂取による死者数が交通事故のそれをついに上回った。この問題は人の命にかかわることから、グローバル化や経済不振よりも深刻だと彼は主張する。

幸福は年収7万5000ドルでピークに達する

ディートンはグローバリズムの擁護者でもある。ザッカーバーグが金持ちだから、誰かが貧しいわけではありません」 | ノーベル賞経済学者が語る「格差と幸福とトランプ政権」 | クーリエ・ジャポン

2013年の著書『大脱出』のなかで、我々がいま暮らしているこの世界は、何世紀にもわたっておこなわれた経済統合のおかげで、健全さと豊かさを享受しているとディートンは書いた。

それゆえ、米国ラストベルト地域の斜陽化や英国工業地帯の危機的状況を、すべてグローバル化のせいにしようとするのは間違いだと彼は見ている。「私にはグローバル化が諸悪の根源だとは思えません。そのおかげで貧困から抜け出せた人が何十億人もいるのです。ロボットが今後、人間に与える脅威と比べれば、グローバル化の影響など小さなものだと思っています」

次の料理が運ばれてきた。ディートンの前にはエビのグリルを載せたシーザーサラダが、私のところにはアップルクラウトを添えた白ソーセージのホットドッグが置かれた。

著書のなかでディートンは、進歩と格差との間には切っても切れない関係があると述べている。豊かさとイノベーションについての彼の見解は複雑だ。「マーク・ザッカーバーグはフェイスブックを起業して大富豪になりましたが、彼が誰かを貧困に追い込んでいるわけではありません。

だが、自動運転車のこととなると話はまったく別です。これによってトラック運転手をはじめとする数百万人のプロのドライバーたちが職を失うことは明白だからです」

「経済成長にとって格差は悪か」という問いは、ディートンに言わせれば「イエスかノーの答えを期待するべきではない浅はかな質問」ということになる。だが、富裕層の人々や大企業が金の力で政府を意のままにするせいで生じた格差は、それとは別の問題だ。

「それこそが最悪の状況です。自らの財力にものを言わせて政治に影響を与え、私腹を肥やそうとする人たちが生み出す格差こそが、問題の核心なのです」

幸福についての分析は、ディートンが取り組んでいる研究のなかで最も知られたものの一つだ。彼はかつて人の幸福度は、年収が7万5000ドル(約840万円)に達した時点でピークを迎えると論じた。

トランプは7万5000ドルの年収で幸福を感じるのだろうか? ディートンはどうだろう?

「この研究で言いたかったのは、貧困から抜け出すと同時に幸福感の上昇は止まるということです。私にも経験がありますが、収入の当てがない暮らしというのは実に憂鬱で、惨めなものです」とディートン。彼はさらにトランプについて語り出した。

「もしドナルド・トランプが現在の彼とは別の人間だったら、果たして幸せだったかどうかはわかりません。トランプ氏は自分の人生がどれほど素晴らしいか、どれだけの偉業を成し遂げてきたかをいつも話していますが、それはだいたい彼の莫大な所得に関するものです。だからつい我々も、彼の富にばかり注目してしまうのです」
そう、他人の収入を気にすればするほど、幸福感は減少するというのに。

少し間を置いて、「確かに昨年の私の収入はいつもより多めでした」とディートンは笑う。ノーベル賞の賞金のおかげだろう。

今後、世界はどうなる?

以下割愛


画像は2015年ノーベル経済学賞はアンガス・ディートン氏に | エディテージ・インサイト


クーリエ・ジャポン


■前項、アルゴリズム捕捉回避のため、一部分文字消去した。

後は全く同じ記事である。補足




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