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国運衰退を大いに意味していたキリン広告の扱い?

「日本国運の衰退を意味しない」・・・が予想通りの大炎上のきざし

2024年3月13日 09:39 の続編

エイベックスの松浦勝人会長が文春総局長に宣戦布告記事に続いて、エキサイトなニュース記事がアップされました。元ネタは「2021年12月、インターネット番組『Abema Prime』」ですから、原資は旧いです。

密かに抱いていたその掻痒感「それみたことか、いわんこっちゃない」フレーズが見事に当たり「もしトラ」変じて『抜頭キリン』の様相。

そもそも、取り下げにあたって、キリンビール広報部はメディアからの取材に対して以下次の文言で対応していた。

また筆者「西山守」氏は、
筆者が知る限りCM起用後に起こした問題ではない要因での取り下げに関して、企業側が理由をここまで明確に説明するケースは珍しい。等と説明している。

昨日の私の記事では、その3年前の成田氏発言云々ではなく、広告クライアント契約がありながら、その個人がしたアクションに対して言及していたことで、それは契約にない条項と推察判断していた。

そして今回放ったニュース情報を精査してみれば、

「過去に成田氏の発言の中にあった表現が、比喩か否かは別として、(弊社としては)過度な表現があったと判断をいたしました。今回、WEB広告に対して様々なご意見を頂戴いたしましたので、総合的に判断をいたしまして、一部のWEB広告の投稿を取り下げることにいたしました」、(原文ママ)

と客観的にみても、成田氏が当該広告品に対して「悪態」を放ったわけでは全然なくて、それを「過度な表現があったと判断」とは、なにを持って過度なのか、がすり替えられており、主語の使い方としても、まったく意味をなしていない。

たまさか、その成田氏発言によって社会が混乱し、社会秩序が壊され、指名された御仁が、被害にあったならともかく、「あの若い経済学者」の発言で重大な損害を被ったわけでもなく、そのことが「過度の表現」と形容するその語彙力の貧弱さにうろたえてしまう。

そんなことを深堀りで考えると、そのキリンのとった処置は、成田氏の過去該当発言を全否定し、それによって企業イメージが損なわれた、という二次解釈にも及ぶ。
これは別の案件で重大問題で、成田氏の発言、そして本人キャラクターの
部分否定にも及んで、アバウトに捉えれば人権問題に及んでしまう。

もともと、成田氏への広告依頼は、既成な枠、に収まらないタイプ、としてクライアントしたことは容易に想像される。
だとすれば、これまでの一連のメディア対応、SNS上の批判クレームにしても大方、想像されたはずだった。

計らんや、それは「想定外」だったとは、この場合絶対禁句であり、その「わきの甘さ」を露呈したことであり墓穴、自業自得というほかない。

キリン氷結「広告取り下げ」に見る"空気感の変化" 成田悠輔氏CM中止は「英断」か「過剰対応」か?

東洋経済オンライン / 2024年3月14日 7時20分 https://news.infoseek.co.jp/article/toyokeizai_20240314_740874/?tpgnr=busi-econ

 キリンの缶チューハイ「氷結無糖」のCMが炎上し、早々に取り下げる事態に陥り波紋を広げている。 
【画像】成田悠輔氏を起用したキリンについて疑問の声も相次いだ


東洋経済

 これは経済学者・成田悠輔氏をWEB広告に起用したもの。批判は成田氏の過去の発言が問題視されたことで巻き起こったものだが、どうしてキリンはその成田氏を起用し、早々に取り下げるような事態を招いてしまったのだろう?

取り下げるか否かは難しい判断だった

 今回批判されたのは、2021年12月に成田氏がインターネット番組「ABEMA Prime」に出演した際の発言である。その際の成田氏の発言内容は「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」といった、高齢者に対して批判的なものだった。これが、SNS上で掘り返されて批判され、「#キリン不買運動」というハッシュタグが拡散するに至った。

 取り下げにあたって、キリンビール広報部はメディアからの取材に対して「過去に成田氏の発言の中にあった表現が、比喩か否かは別として、(弊社としては)過度な表現があったと判断をいたしました。今回、WEB広告に対して様々なご意見を頂戴いたしましたので、総合的に判断をいたしまして、一部のWEB広告の投稿を取り下げることにいたしました」等と説明している。

 筆者が知る限り、CM起用後に起こした問題ではない要因での取り下げに関して、企業側が理由をここまで明確に説明するケースは珍しい。

 今回のケースで思い出すのは、2020年、ネット通販大手Amazonが有料会員向けサービス「Amazonプライム」のCMに国際政治学者の三浦瑠麗氏を起用した際に起きた批判である。この時は、三浦氏がメディア上で徴兵制導入を主張していたこと、大阪に北朝鮮の工作員が潜伏していると発言したことなどが批判を集め、Twitter(現X)上では「#Amazonプライム解約運動」のハッシュタグが拡散した。SNS上では取り下げに対して肯定的な意見は多かったが、脳科学者の茂木健一郎氏、メンタリストのDaiGo氏は「解約運動」に対して批判的な意見を述べている。
今回の成田氏の件についても、編集者の箕輪厚介氏がX上に広告取り下げを批判する意見を投稿している。

2つの事例では、下記の点が共通している。

1. 有識者の広告起用において、当人の過去の社会的な発言が洗い出されて批判されたこと

2. SNS上でCMに起用した企業への““不買運動”が起きたこと

3. 取り下げに関して賛否両論の声が見られること

 ただし、AmazonプライムのほうはCMの取り下げを行っておらず、企業側の対応は異なっている。
今回のキリンの案件についても、広告の取り下げを行うべきか否かという明確な判断はしづらかったように思える。成田氏の発言を前後の文脈も踏まえて解釈して不適切であったと断定できるのか?
広告の継続、あるいは取り下げによって商品の売り上げやブランドイメージにどの程度の影響を与えるのか?(SNS上で「不買運動」が拡散しても、実際に売り上げが減少するほどの影響を受けることはほとんどない)といった点を考えると、どちらの選択もありえたように思える。

そもそも、なぜ成田氏を起用したのか?

 SNS上では「キリンはどうして(問題発言のあった)成田氏を広告に起用したのか?」という声も少なくない。
 実際、高齢者をめぐる成田氏の発言は、当時それなりに大きな物議を醸している。キリン側が~それを知らなかったとは思えないし、起用時の検討要素として挙がらなかったとも考えづらい。

 実は、キリンの成田氏の起用は今回が初めてではなく、2022年3月に「麒麟特製 レモンサワー」のWEB動画に成田氏が出演している。この起用は、成田氏の高齢者に対する発言がなされてさほど時間が経っていなかったタイミングである。しかし、この時点では発言は炎上しておらず、起用についても目立った批判を浴びることはなかったし、当然のことながら、動画は取り下げにもならなかった。口コミを見る限りでは、動画の評判も悪くない。

 このたびの氷結無糖での起用においては、発言から時間も経っているし、成田氏は現在でもテレビに継続的に出演している。
 キリンの担当者が「起用しても問題はないだろう」と判断したことは想像に難くない。騒動に発展したのは、前回と比べて、今回は少し目立ち過ぎたことが理由だろう。
これまでCMに起用されてきた小峠英二氏、若槻千夏氏に今回、成田氏が加わるという形になり、グラフィック広告とWEBムービーで展開されることになっていた。前回の起用とは規模感が大きく異なっている。SNSでの批判は事前に予測しづらいというのが実際のところである。
SNSで批判されるか否か? 批判がどのくらい拡散するのか? といったことは、偶発的な要素に左右されることも多く、いくらSNSに日常的に親しんでいても、いくらSNSの口コミを分析していても、完璧に見通しを立てることは不可能である。

 そもそも、批判を浴びた成田氏の「集団自決」発言にしても、番組で発言があった段階では、さほど大きな問題になっていたわけではない。弁護士のインフルエンサーが成田氏の発言を発掘してSNSに投稿し、それがきっかけとなって成田氏がテレビ番組にコメンテーターとして出演していることが疑問視されて、批判が増幅されていった。
 海外メディアでも取り上げられ、それが国内メディアでも報道されることで、問題はさらに大きくなった。
 程度にもよるが、こうした騒動を回避したいのであれば、あらゆる可能性を想定したうえで、リスクがあると見なされる場合は起用を見送る――という判断をする他はない。

発言内容で判断することは意外に難しい

 出演タレントが不祥事を起こしたとか、広告に不適切な表現があったとか、そういったことであれば、取り下げを判断することはさほど難しくはない。しかし、出演者の社会的、政治的な発言によってCM起用の是非を判断することには様々な困難が伴う。もちろん内容にもよるが、表現の自由は尊重されるべきであるし、広告活動とは直接的に関係しない個人の思想や信条を広告起用の判断要素にするべきなのかという議論もある。

 明確な差別発言や、社会正義に反する言動であればもちろんCM起用にはデメリットも大きいが、そうではない発言の場合、明確な線引きは難しい。

 この問題は、有識者のみでなく、芸能人の起用においても顕在化している。芸能人が政治的な発言、社会的な発言を行うことは、以前と比べて一般的になっているし、芸能人自身がSNSアカウントを開設して情報発信をしている現状では、芸能事務所側が発信する情報を逐一管理したり、統制したりすることは現実的でなくなってきている。そうした中で、CM起用の基準に関しても何度か議論が巻き起こっている。
 2018年に、タレントのローラさんが、沖縄・辺野古への米軍基地移設計画に関するインターネット署名への協力をSNSで呼び掛けた際に、出演CMが降板になる可能性が指摘された。2020年にも、検察庁法改正案に対して多くの芸能人がSNS上で反対を表明したが、この際にも出演CMに対する影響が懸念された。実際には、芸能人の「政治的発言」によってCMが降板になるという動きは見られてはいないが、起用された芸能人、起用した企業が批判を浴びるという現象は起きている。

 最近で言えば、昨年末(2023年12月)に日清食品「どん兵衛」のCMにタレントのアンミカさんが起用された際に巻き起こった批判が思い出される。この時は、アンミカさんが杉田水脈議員の言動に対する抗議として発した「日本は世界の恥」という発言が「反日的」とされたことや、北朝鮮から日本に密入国してきたとする真偽不明の話が拡散され、「不買運動」がトレンド入りするに至った。なお、日清食品はCMの取り下げも行っていない。批判が巻き起こったからといって、安易に取り下げを行ってしまうと、別の批判を招いてしまう可能性もある。批判自体が正当なものなのか、一部の人が批判しているのではなく、多くの人が問題と感じる事象なのかといったこともしっかり検討する必要がある。

 また、アンミカさんは「どん兵衛」以外にも複数のCMに出演しているが、大きな批判は起きてはいない。

キリンの広告取り下げは英断か、過剰反応か?

芸能人の事例を見ると、今回のような、出演者の社会的発言での広告の取り下げの決定は、異例のことのように見える。

キリンが取り下げの判断に至った要因としては、下記のことが考えられる。

1. 芸能人ではなく、有識者の言動であったこと

2. キリンが社会的責任を非常に重要視する企業であること

3. 高齢者批判が以前ほど受容されなくなっている可能性があること

 1点目については、芸能人と比べると、有識者は言論活動によって、その人のキャラクターやイメージが構築される部分が大きい。過去の発言であったとしても、当人が発した言葉は、その人の「人となり」を表すものとして必然的に重視されることになる。

 2点目について、キリンは「社会との価値共創」(CSV:Creating Shared Value)を掲げ、企業活動の中で様々な社会貢献活動を展開している。成田氏の起用に対する批判の声の中には、同社の高齢者福祉の活動との整合性を問うものも見られた。氷結無糖のメインユーザーは高齢者ではないとはいえ、高齢者も含む包括的な社会貢献活動を行っているキリンとしては、成田氏を継続起用する判断をした場合、誰もが納得できるような説明を行うことは難しいだろう。

 3点目については筆者の私見も入るが、高齢者批判が日本社会でこれまでほど受容されにくくなっていることも背景としてありそうだ。同世代でも格差が生まれている状況や、ジェンダー格差の問題など、多種多様な問題が顕在化している中で、高齢者の問題は相対的に後退しているように思える。また、社会的に人権意識が高まっていく中で、高齢者をこうした形で批判することに対しても抵抗が強まっているようにも思える。

 以上、成田悠輔氏の広告取り下げを題材に、広告起用の条件や、その背景となる世相の変化について論じてきた。過去の言動が掘り返されて批判されることが多くなっている現在、広告起用に際して、これまで以上に「素行調査」を丁寧に行う必要があるだろう。特に、有識者の起用においては、彼らの主張や信条が、企業の理念や活動内容と合致しているのかどうかも確認しておくことも欠かせない。

西山 守:マーケティングコンサルタント、桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

https://news.infoseek.co.jp/article/toyokeizai_20240314_740874/?tpgnr=busi-econ


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