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ユークリッド幾何学

フロイト的分析
 「ドクターフォックス教授の名講義」という逸話がある。 科学の世界では有名な例え話として流布している。ある種の「ドッキリ」だが、それは捏造実験と紙一重、被害者がでれば詐欺罪となり、まったくそれは完全な剽窃ということである。

 内容はこうだ。
 すべて完璧にセットされた大学の講義室。さながら「マイケル・サンデル」氏がポケットに手を突っ込み颯爽と登壇、というところか。挨拶もそこそこに、難しい講義内容を喋り始めた。そのアクション話術はギリシア哲学者のように饒舌で、口角泡飛ばして発する言語はイタリア歌劇のように情緒的、書き記す数字はユークリッド幾何学のそれであり、喩えに引用した話題はさながら精神分析入門著者、「フロイト」のようでもある。そのはずで、彼はハリウッド界きっての役者のようでもあり、スタイルも知的好奇心を満足させる雰囲気を漂わせる。黒のスーツを着こなし頭髪はニュートンのようにフサフサし、その動きには無駄がまったくなかった。ほぼ90分の講義を終え、裏に控えていたスタッフが受講者生徒30名にアンケートを配布した。「ただいまの講義に関して意見を述べてください」、と。
 
その解答には、ほとんどの生徒が絶賛しほめていたが、ただ一人、その真贋を見抜いていた生徒がいた。結果、「ドクターフォックス」教授は、雇われ役者で、講義の直前に台本を渡され、そのすべてを頭の中に叩き込んだ。後は普段どおりの演技力で生徒を騙せばよかった。俳優が扮する「ドクターフォックス」が、ハーバードの「マイケルサンデル」教授でないことは明らかだ。

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ウイキペディア ユークリッド



地動説を唱えたコペルニクス
 ニコラウス・コペルニクス(1473年2月19日 - 1543年5月24日)は、ポーランド出身の天文学者、カトリック司祭である。当時主流だった地球中心説(天動説)を覆す太陽中心説(地動説)を唱えた。これは天文学史上最も重要な再発見とされる。コペルニクスはまた、教会では司教座聖堂参事会員(カノン)であり、知事、長官、法学者、占星術師であり、医者でもあった。暫定的に領主司祭を務めたこともある。

「天体の回転について」とローマ教皇庁 1616年、ガリレオ・ガリレイに対する裁判が始まる直前に、コペルニクスの著書「天体の回転について」は、ローマ教皇庁から閲覧一時停止の措置がとられた。

 これは、地球が動いているというその著書の内容が、『聖書』に反するとされたためである。(因みに「聖書」には天動説が載っているわけではなく「初めに、神は天地を創造された」という記述があるだけである。)

 ただし禁書にはならず、純粋に数学的な仮定であるという注釈をつけ、数年後に再び閲覧が許可されるようになった。

 アメリカ合衆国の科学関連のゴンゾー・ジャーナリズム雑誌OMNIの創設者の一人であるアマチュア科学研究者ディック・テレシによると、「このアイデアはアラビア自然学からの剽窃であり、また近代社会における西欧の興隆にともない西洋中心主義および白人中心主義史観によって」、非西欧文明圏の影響を故意に見落としてきたことがあるとしている。

(注・アイデアはアラビア自然学からの剽窃、と云う指摘は正しいと思う。紀元前ギリシア自然学・哲学は、アレキサンダー大王により時代とともに近隣諸国に拡散しアラビア世界にも伝播している。その古い著書はアラビア自然学にある、といってもいい。筆者解釈)

 天動説では周転円により説明されていた天体の逆行運動を、地球との公転速度の差による見かけ上の物であると説明するなどの理論的裏付けを行っていった。ただしコペルニクスは惑星は完全な円軌道を描くと考えており、その点については従来の天動説と同様であり単にプトレマイオスの天動説よりも周転円の数を減らしたに過ぎない。実際には惑星は楕円軌道を描いていることは、「ヨハネス・ケプラー」により発見された。もっとも天体が円運動を描いているという仮定により、天文学者は天体の逆行運動の説明を迫られたのであり、そういう思い込みが存在しなかったのならそもそも天体運動を探求する動機すら存在しなかったのであり、コペルニクスが円運動にこだわった限界はやむを得なかったとする評がある。

 天動説では周転円により説明されていた天体の逆行運動を、地球との公転速度の差による見かけ上の物であると説明するなどの理論的裏付けを行っていった。ただしコペルニクスは惑星は完全な円軌道を描くと考えており、その点については従来の天動説と同様であり単にプトレマイオスの天動説よりも周転円の数を減らしたに過ぎない。実際には惑星は楕円軌道を描いていることは、ヨハネス・ケプラーにより発見された。
 もっとも天体が円運動を描いているという仮定により、天文学者は天体の逆行運動の説明を迫られたのであり、そういう思い込みが存在しなかったのならそもそも天体運動を探求する動機すら存在しなかったのであり、コペルニクスが円運動にこだわった限界はやむを得なかったとする評がある。(引用〆)

 コペルニクス的転回という形容は、物事の概念が根底から覆ってしまうときによく使われる。それほど革命的な理論革命であったのだろう。コペルニクスは、ポーランド出身の天文学者、カトリック司祭であったが、そのことも関係して、カトリック宗教界との軋轢もあったようだ。かのニュートンも同様だ。
 しかし特筆すべきは、天文、科学、宇宙など語るときに「すべては神の意志によって」というカトリック宗教世界で、いや違う、人智を超えた領域によって宇宙はあり、ある数式的規則に支配されている、と異をとなえることは、命と引き換えだったに違いない。
 現にイタリア出身の哲学者、ドミニコ会の修道士ジョルダーノ・ブルーノ(Giordano Bruno, 1548年 - 1600年2月17日)は、異端審問によって火あぶりの刑で命を落とした。

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STAP細胞はUFOと同じ!? 科学者が語る、「なぜ捏造は繰り返されるのか」

[日本分子生物学会副理事長、九州大学教授]中山敬一 【第447回】 2014年6月10日 DIAMOND.jp

いまだかつて科学的な話題が、これほどまでに日本のTV、新聞、雑誌等のメディアを騒がしたことがあっただろうか。

STAP細胞論文捏造事件は、今なお、大きく世間を揺るがしている。

(編集部注:STAP論文細胞論文の共著者であるチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授が、先月末に論文取り下げを求める書簡を、ネイチャー誌に送っていたことも明らかになっている)

この事件は、小保方晴子氏という特異なキャラクターが産んだ空前絶後なものと世間一般には受け止められている。しかしこの事件は、実は日本の科学界が内包する構造的な歪みが限界まで達し、起こるべくして起こったものなのである。

「空前」でもなければ「絶後」でもない。むしろこのままその歪みを放置すれば、さらに多くの研究不正が堰を切って流れ出すだろう。今こそわれわれ科学者は、この大問題を契機として、自らその改革に乗り出さなければならない。

私は、日本分子生物学会という生命科学で最大級の学会において、研究不正を撲滅する取り組みを8年前(2006年)に始め、そのリーダーとして様々な不正事件に関わってきた。その経験を基に、科学界が内包する矛盾点をずばり解剖し、病理を調べ、その「治療方針」を示したい。

小説『貞子』の母のモデル 御船千鶴子の事件
科学史上最大のねつ造「シェーン事件」と酷似する小保方事件 
 科学における史上最大の捏造として有名なのは、米国の名門ベル研究所で起こった「シェーン事件」である。
 当時ベル研にいたヘンドリック・シェーンが、2000年から2001年にかけて高温超伝導に関する論文をネイチャー誌やサイエンス誌に次々と発表したが、後にデータが捏造であることが判明し、全て撤回された事件である。

 シェーン事件と小保方事件は、いろいろな点で酷似する。シェーンは当時若干30歳ながら傑出したスター級の科学者という扱いを受け、一時はノーベル賞の受賞も確実と言われたほどであった。小保方氏も奇しくも同じ30歳であり、若くしてわが国で最も権威のある理化学研究所のユニットリーダーとなっている。それに加えて、「リケジョ」と称される今時の女性科学者と言うことで、シェーン以上にメディアで騒がれる素質は十分であった。さらにシェーン事件がベル研という世界屈指の研究所で起こったことも、今回の事件の舞台が理研であることと符合する。ちなみに、この事件の後、ベル研は一部を除いてほとんど全てが閉鎖された。

船が沈没したため

証拠を提出できない!? シェーンによる捏造が発覚したのは、やはりデータの切り貼りと使い回しである。ある科学者が、シェーン論文の異なる図中のノイズが同一であることに気づきネイチャー誌に連絡したが、シェーンは「誤って同一の実験のグラフを提出してしまった」と単純ミスを主張した。しかし他の図にも、またしても同じノイズが見つかった。調査委員会は生データの提出をシェーンに要求したが、研究所のノートには記載がなく、元ファイルは彼のコンピュータから消去されていた。実験サンプルも提出されることはなかった。

 このような言い訳は全ての捏造家に共通したものである。ノートは紛失した、コンピューターは壊れた、実験サンプルを保管していた冷蔵庫は爆発した、等は普通で、もっと凄いのは、実験サンプルを積んでいたコンテナが海に沈んで回収不可能になった、なんてスケールの大きなものもある。

 シェーンは当時、ベル研以外にドイツの大学にも研究室を持っており、それらを往復していたが、これも小保方氏が理研とハーバードを背景として事件を起こしたことと酷似している。複数箇所で研究を行うことによって、それぞれの場所において捏造が発覚しづらい環境ができ上がるのだろう。総じて今回の小保方事件は、シェーン事件のデジャビュを見ているが如しである。

 この事件の詳細は、取材にあたったNHKの村松秀氏による『論文捏造』(中公新書ラクレ)に詳しい。

 私は日本分子生物学会で「アンチ捏造」の委員会を主宰しているが、日本の生命科学は毎年のように大規模な捏造事件が発生している。決して小保方事件だけが突発して起こったわけではないことも付け加えておきたい。

> STAP細胞はUFOと同じ 1234

今回の事件が特異なのは、科学的な事件に一般の人々が興味を持ったことであろう。町中でのインタビューでは「研究不正よりも、STAP細胞が実在するかどうかが問題だ」という意見が多いことに、正直ビックリする。

 今回の事件では、「研究不正があったのかどうか」と「STAP細胞が実在するのかどうか」の二つの点が混乱して取り扱われているが、それは全く違うイシューである。論文に不正があった時点で、「STAP細胞は存在するのか」と問うこと自体が無意味なのだ。

 例えば「UFOを見た」と主張する人が差し出した証拠写真が、タライを糸でつり下げたようなチープな合成写真だったら、その人がUFOを見たという主張を信じる人はいないだろう。UFOはどこかに実在するかもしれないが、それとこれとは全然違う次元の話である。UFOがいるという証明は、本物の証拠が一つあればいいが、UFOがいないという証明は宇宙空間を全てくまなく探さなくては結論できない。STAP細胞の作製も、何億回失敗しても「ない」とは言えない。こういうのを「悪魔の証明」といい、現実的にはほぼ不可能な証明なのである。

 イギリス出身の哲学者、カール・ポパーは、このように「反証が不可能」な問題は、既に科学ではないと述べた。

 UFO議論は、現時点では科学ではないし、ネッシーも雪男も同じだ。STAP細胞も、現時点では科学ではなく、オカルト(似非科学)の範疇にあると言っていい。今からSTAP細胞の実在を証明する実験をするというのは、「雪男を探しに行け」ということと同じことなのだ。それを自腹を切ってやるならともかく、国民の税金を使って理研で行うというのだから、開いた口が塞がらない。

 科学者というのは厳密さの世界に生きているので、可能性がゼロでない以上、「UFOはない」と断言することはできない人種である。正確性を期すが故に、科学者は「UFOがあるという証拠はないが、絶対に否定することもできない」というような持って回った言い方をする。しかし、それでは世間はなかなか理解してくれない。小保方氏のように「STAP細胞はありまぁす」と断言した方が世間には受けるのである。全く根拠がないにもかかわらず、である。

多くの生命系の論文

 再現性が低い 研究は登山に似ている。道を間違えたら引き返す勇気が大切で、それができなければ「遭難」する。山には紛らわしい道が多い。いかにも山頂への近道のように見えても、途中で崖になったりして行き止まりの道もある。そういうことは経験のある研究者なら、よく知っていることである。しかし、小保方氏はそうではなかったのだろう。山頂が見えた途端、そこまでの道を妄想し、山頂で万歳する姿を合成写真で作ってしまった。

 捏造事件を見て、いつも感じることがある。手法が一般的に稚拙なのだ。

 もし本気で初めからストーリーを偽造するつもりなら、もっと上手にできるはずである。今回の事件はわずか1週間でばれるというあまりに粗雑な捏造であった。小保方氏が貼り合わせた2枚の写真は、もう一度サンプルを電気泳動すれば、わずか30分で一つの写真に撮り直すことができる。もちろんこれも不正なのだが、こうすると第三者が見抜くのはなかなか難しい。

 なぜ30分の手間を惜しむのだろうか。博士論文の写真をネイチャーに使い回したのもそうだ。同じ時に撮った別の写真を使っていたなら、今でも捏造はばれていなかっただろう。シェーンも同じ図を使い回していた。ちょっと手間暇かければ、ばれていなかったのに……捏造するならもっとうまくやれよ、と言いたい(いや、そもそもそんなことはしてはいけない!)。

 もしかすると、稚拙な捏造だけがばれて、巧妙な捏造は未だにばれていないのかもしれない、と背筋が寒くなることもある。しかし、捏造がばれてはいないとはいえ、所詮嘘であるから他人が再現ができない。

 実は、多くの生命系の論文は再現性が低いことが指摘されており、その可能性の一つとして捏造であることも捨てきれないのが現状だ。

 もしくは、次のように考えることもできる。つまり巧妙な捏造家などはおらず、基本的に全ての捏造家は楽して儲けようという輩であるから、そのさもしい根性が結果的に命取りになるというものだ。小保方氏のように30分の手間を惜しむ余り、捏造がばれるきっかけとなる綻びを生んでしまったのだろう。(引用〆)


voice. KORGコルグ 


「原論」(エレメンタ)

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