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浮世絵「春画」の取り扱い(日本)

春画 秘めたる笑いの世界
ヘルシンキ市立美術館 浮世絵春画展 2003年
磯田湖龍斎 勝川春章 鳥文斎栄之 月岡雪鼎 宮川長春(図録)|売買されたオークション情報、
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イギリス「春画展」日本初の春画展開催へ 春画は「わいせつ」か「芸術」か?2015/6/11(木) 11:00配信

 THE PAGEイギリスで大盛況を博した「春画展」が今秋、日本でも開かれることが決まりました。
 本格的な春画展は国内初開催となることや、概要発表会見に細川護煕元首相が登場したことで話題になっています。しかしこの春画展、これまではスポンサー獲得に苦労するなどの苦難を強いられていました。春画は、性器が露骨に描かれているといったこともあり、刑法上の「わいせつ」物にあたる懸念があったためです。 春画は「わいせつ」物なのでしょうか。

愛知県美術館「わいせつ写真に布」の波紋
「わいせつ」の定義とは? 
「わいせつ」とは、抽象的で分かりにくい言葉ですが、判例では「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とされています(最判昭和32年3月13日 チャタレー事件)。この判断にあたっては、作品の芸術性などの社会的価値も踏まえて全体的・相対的にみて、主として見る者の好色的興味に訴えるものと認められるかどうかを考えます。

 局部にモザイク処理をしたDVDや動画が堂々と世に出回っているため、性器部分が露出しているかどうかがわいせつを判断する基準になっていると誤解されがちですが、そうではありません。たとえ性器部分に処理がされていたとしても、全体としてみて「わいせつ」と認められることもありますし、逆に春画のように性器部分が隠されていないものであっても、「わいせつ」とは言えない場合もあるのです。
 かつて「わいせつではない」判例も 裁判の場で、春画にわいせつ性はないという判断がされたこともあります。成人向け漫画のわいせつ性が争われ、問題となった漫画と比較するために、春画が証拠として提出されたものですが、裁判所は「春画は……著名な浮世絵作家の作品として、あるいは懐古趣味に応える歴史的文物として、興味を抱かせるものであり……専ら読者の好色的興味に訴えるものとはいえない」としました(東京地判平成16年1月13日)。
 しかし、甲南大学法科大学院教授の園田寿弁護士は、「この裁判例は一般論として語られているに過ぎず、あらゆる春画が、わいせつでないと言い切れるわけではありません」と指摘します。どういうことなのでしょうか。「判例は、わいせつに当たるかの判断にあたって、全体としていやらしさを感じさせるものといえるか、また性器の結合部分についてデフォルメされておらず、写実的に描かれているかを重視しています。春画についても様々なものがありますから、あまりデフォルメがされておらず、ポルノとしての側面が強いものが存在する可能性はあります。全体としてわいせつ性があるかどうかは、現物を見た個別的な判断になってくるでしょう」
 春画は浮世絵という芸術だから問題はない、といった単純な話にはならないようです。「ただ、春画は浮世絵という描き方が特徴的な絵画で、写実的な描写の要素は大きくありません。特に、著名な画家の作品ということにもなれば、その芸術性の高さも社会的に承認されていると言えますし、わいせつ性は認められないことが通常だと思います」(園田氏)
 国内では長らく「ポルノ」扱い 春画は海外では高く評価され、積極的に展示がされてきましたが、国内においては江戸時代のポルノグラフィという固定観念があり、公に出すことは長らくタブー視されてきました。しかし、現在では多くの無修正の春画が、出版物として普通に販売されています。自主規制が「解禁」されたのは、1991年に学習研究社が「浮世絵秘蔵名品集」を出してからです。わいせつ物頒布罪(刑法175条1項)に触れるリスクはありましたが、出版後も刑事上問題とされることはなかったため、その後は多くの春画がオープンにされるようになりました。
 もちろん、当時、春画にポルノグラフィとしての面が全くなかったというわけではありませんが、そのような面だけを強調することは誤った理解だといえます。春画は、大名や旗本など位の高い家で、なんと嫁入り道具とされていたものでもあったのです。
 「春画展」を行う永青文庫の三宅秀和学芸課長は、次のように語ります。
「前近代では、家の存続すなわち子孫繁栄ということが最も重要でした。その子孫繁栄に不可欠なのが、男女の営みなわけです。嫁がせる側は、絵描きに発注して春画をわざわざ書かせ、子孫繁栄の象徴としての嫁入り道具として持たせていました。地位の高さに応じて、それぞれ高名な浮世絵師に依頼することになりますから、当然、大名などが発注した春画の中には、質の高い絵の具を使った肉筆による、浮世絵として極めてクオリティの高い作品が存在します」
 明治時代に欧米化が進み、キリスト教的倫理観が持ち込まれる前までは、日本において性は全くタブーではなく、実にあっけらかんとしたものだったようです。
 また、春画は勝絵(かちえ)として合戦に勝ち、生き残るためのお守りとして考えられてもいました。戦場に向かう際、武将の鎧櫃(よろいびつ)の中に入れられ、持っていかれたこともあったのです。
 「当時、春画は『生きる』ということに対する根源的な力を象徴したものと考えられていたのだと思います。本当にいいものを見てもらわないと、『春画は単なるポルノグラフィ』という誤解された固定観念は払拭できません。芸術の価値は、社会的に支持をいただけることが大切だと思いますので、この度開催される春画展では、誰が見てもこれはアートだと思っていただける極上の作品をご紹介します」(三宅氏)
 「わいせつ」概念は、時代によってその中身も変わります。以前は「わいせつ」と考えられていたものであっても、社会の価値観に変化が起きれば、高い芸術的価値が認められるようになるということはあり得ます。過度に「わいせつ」にあたることを恐れ、表現すること自体が難しくなってしまうのは、妥当とはいえないでしょう。ポルノとアートの境界線は、難しい問題ですが、鑑賞者が自分自身の目で見て判断する機会を作ることは、大切にしたいものです。(ライター・関田真也)

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https://blog.news-digest.co.uk/2014-01-07/by 編集部員(籠)英国ニュースダイジェスト読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もどうか宜しくお願い申し上げます。皆様は、クリスマス休暇、新年カウントダウンの花火、冬のセールなどを堪能されましたでしょうか。僕は2014年最初の週末に、大英博物館の春画展に行って参りました。昨年から大きな話題を集めていたこの春画展。本誌でも何回かに分けて取り上げてきたのですが。










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