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百貨店は時代の変化と向き合っているか

私の年代だと百貨店は何かワクワクする特別な場所と感じている人は少なくないだろう。
若い頃に東京で銀座の三越に初めて行った時、とてもドキドキした。
まずは1階の化粧品売り場に行き資生堂で何かを買ったと思う。
そこではお化粧もしてくれてときめいた気持ちになった。
しかし、銀座でもここ数年インバウンドの爆買いが始まり、銀座通りに大型バスが何台も連なって駐車されるようになった。
買う量がものすごいのでかなり百貨店は儲かったと思う。

これまで地方の百貨店は人口減で大変な所もあるけれども、都内は少なくともインバウンドの爆買いがあったので活気があった。
その頃、銀座の三越に行くと爆買いのお客さんに店員が注力しているような光景がみえた。日本人には目もくれないで観光客の対応をしているため、化粧品を買うためにずっと待たされて、やっと順番が回ってきた時に、自分の横には日本人は1人もいなくて、なんてこともあった。買い物だけでなく嬉しそうにお化粧をしてもらう観光客もいてぎっしりだった。
それ以来、1回も銀座の三越の化粧品売り場には行ったことがない。

また、通勤路の途中にある池袋の西武は三越よりももっとインバウンドに熱心だったようにみえた。実際、館内放送も中国語で化粧品売り場にはブランドの化粧品の袋を2、30個も手にして通路脇で荷物を整理している観光客も少なくなかった。
まるで激混みの免税店と化した百貨店、売れ筋をインバウンド好みにしレイアウトも変更した結果、日本人のお客さんは引いてしまったように感じた。

一番がっかりしたのは日本橋が日本をメインに出すのではなくアジアの商品を売るということにシフトしたことだった。台湾などの好きな飲み物が飲めるのは嬉しかったが、なんでまた日本橋でという残念な気持ちもあった。

私は最近コロナであまりお化粧をする機会がなくなった。きっと今ならゆっくりお化粧してもらえるのだろうな~と思いつつ、家でお化粧をする習慣のない私は「どうせマスクするし買っても使い切れないかな」などと思ってしまう。戸外に出る機会が多い田舎ではアウトドアでは蜂が寄ってくるので香りのする化粧品はそもそも使えない。

そのような中、今年になってから、招待制お得意様ゴールドカードの審査難易度が高いと評判となっている某デパートが、FacebookなどのSNSにお得意様ゴールドカードの広告を出すようになった。「お得意様ゴールドカードを作りませんか?」という宣伝なのである。
想像通り、SNSにありがちな「誰でも作れるならお得意様ゴールドカードの意味がない」というコメント投稿でタイムラインが賑わった。これも残念な出来事だった。

ところで数年前に女子学生にインタビューをしたところ資生堂やカネボウの化粧品を使ったことがないし名前すら知らないという学生が多い結果に驚いた。化粧品はInstagramなどのSNSの情報をみて買う。

これらのことから百貨店が巻き返しを図るにはやはりデジタル化。インターネットを使った顧客情報管理と対面の組み合わせではと思う。

一部の富裕層には営業の方も色々な商品情報だけでなく株や政治の知識、ニュースをみて世間話の対応も必要だ。営業の基本は相手を知ることだ。今ならデータで何をお得意様が購入しどういった家族構成なのかみればすぐにわかる。

しかし外商制度も対象の顧客の数を絞らず人数を増やしたために、昔よりも営業の質が落ちたのではないだろうか。ラウンジを改装して空港カードラウンジのようにして、しかも待たされるという光景も見かけているがこれではお得意様への対応とはならないだろう。しかしいくら日本のお得意様に頑張ってもらってもインバウンドには勝てないのかもしれないが。

顧客の数を減らして選択と集中で富裕層のみを対象とするといった方法も成り立つだろう。イギリスのハロッズに行くと徹底した富裕層向けの家電コーナーが設置されていた。

一方でSNSの活用など、集中型とは逆に、分散型でお客がお客を呼ぶようなインターネットを介した方法が今は必要だと感じる。
いずれにしろ若いこれからの人たちがわくわくできるような場がメタのようなバーチャルな場所かもしれないし、通貨とてこれからは紙幣や硬貨の時代ではなくなるかもしれないので早くそういった仮想空間にも活路を見いだすことも必要なのかもしれない。

NFTも話題となっているが、物を買って家に持ち帰るということそれ事態が変化するだろう。場がバーチャルにシフトするならば、今のうちにリアルとバーチャルの両方に対応できる百貨店が生き残るのではないかと感じている。リアルで商品を手にしてその場でスマホでネットで購入という現象も数年前から起きているけれども、これからはそれどころか、バーチャル空間が中心になりバーチャルで体験したことをリアルの場で再現する流れになるケースもあるだろう。

そんな時代を読み店内装飾もARやVRを使って日本の百貨店の先鞭をつけた渋谷のPARCOがどうなっていくかが気になっている。リアル&バーチャルで体験するXRカルチャーイベントもあるようだ。これが上手くいけば日本のショッピングスタイルもどんどん変化をしていくと感じる。また、そういったICTの購買を将来牽引していくだろう子どもたちのICTスキルの向上も重要と感じる。

百貨店はデータ活用とICT化が肝である。店内に入ればどういった人で前回はいつ来てというのがわかるようになる時代が迫っている。また、世界中のどこに居てもバーチャル空間でゆっくりショッピングできるような体制も求められている。そのためにはデータを扱う専門家と英語と中国語が堪能な職員を雇う必要もあるかもしれない。もっとも日本でなくても現地からでもどこでも仮想空間にアクセスできるから、そうなると日本人の就活のライバルは日本人ではなくなるということも起こってくるかもしれない。

ちょっと先の未来を読むことも難しい時代になった。10年前のスマートフォンの普及率を考えると思った以上に社会変革のスピードが早まっている。そのICTありきのスピード感に向き合っているだろうかと疑問を持った西武の撤退のニュースだった。

ニュースでは「通販にシフトしたから」というが、私はそうは思わない。今はコロナで少し静かだけれど音楽イベントには多くの人が集まる。購入のスタイルはむしろ多様になってきていると感じる。

買いたい商品は自分のライフスタイルそのものと捉える人も増えてきているという。特定のブランドの特定の商品が気に入って買うのではなく、それを身につける自分のライフスタイルにシフトしたいから買いたい、という話があると聞いた。つまりそのブランドについて詳しくない人も購入するのだ。

やはり百貨店の不振は複合的な要因が絡まっているように思えてならない。時代、それもスピード感のある時代に向き合うこと、これがどんな業界にも必要となってくる。そういった意味で百貨店は時代と向き合っているのだろうか。UBERもネットフリックスもYouTubeも店舗を持っていない。空間(スペース)の意義も時代に合わせて問い直す必要がある。

どの業界にも言えることかもしれないが百貨店が好きだからこのようなことを考えた。https://news.yahoo.co.jp/articles/2f1b021e2e71703ed2e8f8f5906156dd6f079a99?page=1


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