ゲーマー読書日記2『ドラえもん短歌』

 こんにちは。2Fと申します。20代のゲーマーです。前回書きましたが、ゲーム仲間で読書会をすることになりました。

 前回の記事を書いて数日、1/31に記念すべき第1回読書会が開かれました。そこで俵万智さんの『生まれてバンザイ』をテーマに語ったところ、短歌についての解説などが結構好感触だったので、調子に乗って大好きな歌集を紹介してみたいと思います。

どんな本?

 「ドラえもん」なんていうだけあって小学館から発行されたこの歌集は、2006年に歌人の枡野浩一さんの一声で募集された「アンソロジー」の歌集です。

 様々な方から投稿された短歌を編者の枡野さんが集めて一冊の本にまとめました。テーマは「ドラえもん」です。短歌という全くなじみのない文学と、ドラえもんという国民的なアニメ、一見ミスマッチに見えて意外と「エモい」一冊に仕上がってます。(ドラ”えも”んだけにね!)

 ドラえもんという単語が入っている必要も、あの世界の人たちの歌である必要もなく、例えば「ドラえもんをかつて読んでいた俺」みたいな人が主人公の歌がメインです。うまくいかない日常でドラえもんを頼ってみたり、逆にドラえもんに頼らずに自分で頑張ってみるよという歌だったり。「のび太」みたいな”何者でもない”少年たちが主人公だから、それを読んだ”何者でもない”僕たちからも等身大の歌がいっぱい出てくる。

 そんな愛すべき小市民たちの歌を少しだけ、僕の解釈や解説、もといオタク語りを添えて紹介してみたいと思います。本当にただのオタク語りだしもっといい読み方もあると思うので「へぇ~」くらいで読んでもらえると嬉しいです。読みやすいと思うものを3首紹介します。

……と、その前に、僕なりの「楽しい短歌の読み方3ステップ」を置いておきます。この記事を読むあなたも、よければ一緒に短歌を鑑賞してみてほしいです。

①歌の情景や感情を画像・映像として思い浮かべてみる
②それらを思い浮かべた「理由」を考えてみる(歌の中で手掛かりを探してみる)
③その「理由」を見つけるまでの自分の思考を振り返って、自分の経験とかと重ねてみる

じゃあ、やってみましょう。


1首目

ドラえもん 話を聞いて そばにいて ひみつ道具は 出さなくていい (作者:麦ちよこ)

 ドラえもんって、どうしてもひみつ道具の便利さが目立ってしまうんだけど、何が欲しいかって聞かれたらこの人はドラえもん本人を選ぶっていうシンプルな歌。

 僕の好きなドラえもんのお話に「走れのび太!ロボット裁判所」というお話があるのですが、それがまさにこの歌のようなお話で、ひみつ道具に頼り過ぎたのび太君がドラえもんの人権を無視しているとして裁判にかけられてしまい、ドラえもんと引き離されそうになる、というお話。紆余曲折いろいろあって意識不明になったドラえもんに最後にのび太君がかけるセリフが「道具なんていらないから目を覚ましてよ!」なんです。

 それを見た裁判官は感動してのび太君は無罪放免となるわけですが、本当に大切な親友に求めるものって、能力みたいな付属品じゃなくてその人そのものなんだな、って温かい気持ちになる歌でした。大好き。


2首目

引き出しを 開けても出ない ドラえもん 余計なものが 詰まりすぎてて (作者:加藤千恵)

 っはぁ~~~。良(よ)~~~~。

 ドラえもんの初登場は引き出しからぬっと顔を出すシーンです。それ以降のび太君の机の引き出しはタイムマシンの出入り口になるわけですが、たしかに、それ以前におそらく入っていた文房具とかノートとかってどこに行っちゃったんでしょうね?

 僕の実家の勉強机の引き出しには使い古した鉛筆とか、黒歴史ノートとか、昔こっそり買ってきたToLOVEるの単行本とかが入っています。確かにこんな引き出しじゃタイムマシンの出入り口にするにはじゃまだよね、と思うけど、でもそれらすべてが僕にとっては大切な思い出の一つ一つでもあります。「余計なもの」と書いてはいるけど、「いらないもの」ではないところに、退屈な日々の尊さみたいなものを垣間見ることができます。すこすこ~~。


3首目

君とした 「ひみつ道具で どれが好き?」 みたいな話 ばかり思い出す (作者:仁尾智)

 最初に「読みやすいやつ集めた」って言いましたね、あれは嘘です。これマジで∞パターン読める。

 主人公が「君」と昔していた他愛もない会話を思い出している歌なのですが、主人公と「君」の関係性が全く読めない。多分仲いい、くらいまで。

 シンプルに読めば別れた恋人を想う歌なのか?と思っていますが、全く自信がない。疎遠になった同性の旧友でも全然成立するし、子供が巣立った親とかでも余裕でありうる。そしておそらく、それらがすべて同じくらい妥当な解釈になるように作られてる歌だと思う。ヤバい。

 普通、会話って内容によってだいたい相手との関係性がわかるものだと思うんですよ、「昨日のアメトーク観た?」とか「その表現は性的搾取です!」とか。なんとなく相手の属性とか慮れるものが多いじゃないですか。でもこの「ひみつ道具でどれが好き?」についてはマジで子供から大人まで成立しうる話題なんですよね。「ドラえもん」という国民的コンテンツがテーマだからこそ可能な歌。この歌が出ただけでこの企画大成功だったと思う。

 「ドラえもん短歌」を作るうえでここまで見事なセンテンスってたぶんないんじゃないかなって思えるくらいハマってる。

 この歌をテーマにしたアンソロジーとか読みたいもん。任意の推しカプ入れてみ?アイマスとかでやったら偉いことになると思うよ。

 みんなにこの歌の解釈を聞きたい。十人十色な素敵な物語をいっぱい聞けると思うから。


おまけ

 二次創作短歌って結構少なくて、本になっているものだとドラえもん短歌くらいじゃないかと思う。許可とかとったりするのもそうだし、読む人に知識ありきで読ませてしまうこともそう。何より二次創作にしちゃうことで短歌を詠んだり解釈したりするときの幅が狭くなりかねないからだと思う。

 そんななかでかなり唯一性の高いコンテンツなんだなって改めて思ったし、短歌面白ぇ……ってなった。

 今回挙げたのは好きな歌ではあるけど自分の中のランキングで1~3位というわけではないです。もっともっといい歌が見つかると思うので気になった人は買ってみたらいいんじゃないでしょうか。僕はこの本を10年くらい読んでます。でもまだ楽しいや。


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ゲーマー読書日記

第1回 『チ。―地球の運動について―』1~2巻


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