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だから音楽は素晴らしい。

『LET IT BE』 - THE BEATLES
『YOU'VE GOT A FRIEND』 - CAROLE KING (JAMES TAYLOR)
『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』 - SIMON & GARFUNKEL

1969年〜1971年にかけて、英米で大ヒットした曲だが、これらすべてに共通するのが、困難からの救いに向き合っている歌詞、そしてそれをゴスペル・ミュージックに仕立てていることだ。(ベトナム戦争を始めとする分断と暴力の時期だったのだ、50年前も)

『LET IT BE』を1970年にフィル・スペクターが改作していること。『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』は、そのスペクターのサウンドに影響を受けたプロダクションであることはトリビアとして残しておけばいいぐらいなものだが、なかなか興味深い関連だ。

『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』のピアノは、1981年公演などでのリチャード・ティーの演奏が印象に残っているが、原曲がラリー・ネクテルによるもので、しかもドラムがハル・ブレイン、ベースがジョー・オズボーンだなんて、アメリカン・ポップスのオタクとしては心が弾むのを抑えられない事実だったりする。3人とも神様のような名手だからだ。

ポール・マッカートニーが『LET IT BE』を歌う様子は何度か観たが、キャロル・キングの公演には足を運んだことがないし、ポール・サイモンのコンサートは観たが『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』は歌わなかった。

『LET IT BE』と『YOU'VE GOT A FRIEND』が収録された、それぞれの本国原盤レコードは高いお金を払って買ったが、そういえば『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』はなぜレコードで持っていないのだろう。理由が分からない。明日あたり探しに行こうかなと思う。

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こんな、どうでもいい、アメリカン・ポップスのオタクのひとりごとをわざわざnoteに残しておく意味は、僕の父親にある。彼が大学生の頃に大ヒットしたこの曲は、彼のその後の暮らしと無縁ではなかっただろう。

さて。

彼を取り巻く状況はかなり厳しい。(あえて、抽象的な表現にしておく。分かる人には分かる)

それゆえに歪で時に憎しみを含む関係にあった、僕と父、それぞれの向き合い方の変化を感じている。そのひとつにあるのが、『BRIDGE OVER TROUBLED WATER(明日に架ける橋)』にまつわるエピソード。

彼と先月にハワイへ行ったとき、一度だけピアノバーに弟も連れて足を運んだ。すごく高いバー。各人2杯ずつのお酒で、400ドル。そこにいたピアニストに、父がリクエストしたのが『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』だったことが、妙に頭にこびりついている。

父との雑談でポール・サイモンとアート・ガーファンクルという存在がでてきたことはおそらくない。(むしろ彼はキャロル・キングの熱狂的な支持者だ。)

そしてその場では、彼がお気に入りのバート・バカラックの名曲が忠実に奏でられていた。なぜラウンジの大家の曲が続く中で、ポール・サイモンの作品群の中でもゴスペルの要素が強いあの曲を求めたのだろう。そう考え続けている。

ただの直感、聴きたくなったのだろうか。
それとも、自分の肉体や精神の状況と向き合い、この曲を内発的に求めたのだろうか。そもそも英語に疎い彼は『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』が苦難からの救いの道を描いた曲だと理解しているのか。
僕には分からないし、理由を聞き出せるかも未知数だ。

あるがままに。
君は僕の友だち。
苦難の嵐にかける希望の橋。

「感謝はしてるけど、尊敬は皆無」と面と向かっていうほど、あんなに嫌み憎しんだ存在に思いを馳せる。特に『BRIDGE OVER TROUBLED WATER』を聴くとき、今後、彼の姿がどこかにこびりついていく気がする。

だから音楽は素晴らしい。


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