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トメに会いに栃木に行って、トメと一緒に東京に戻る。
レンタカーの中でもトメはおとなしかった。
途中、サービスエリアの駐車場でおしっこもした。

「さぁ、着いたよ」と声をかけて、
ケージから出し、リードをつける。

当時住んでいた麻布十番のマンションは、
目の前を首都高が走っていて、周りはビルだらけで、
数時間前にいた栃木とは何もかもが違った。

「トメは驚くかな」と思ったけど、
本人は無邪気にアスファルトの上に降り立つと、
すぐに歩き始めようとした。

レンタカーを返しに行く旦那さんを見送りながら、
僕とトメにとって、本当の意味での初めての散歩に出る。

「こんなに小さいのに」と驚くくらいの勢いと力で、
トメはぐいぐいと前に進む。
「待て待て」と言いながら、後を追いかけるのも楽しい。

途中でおしっこをして、僕はさも慣れたように
ペットボトルに入れた水をおしっこの上にかけて、
マンションの周りをぐるりと一周して、帰宅。

マンションのエントランスを入ろうとしたら、うんちをした。
おぉ、すごい。

これまた、さも慣れた風に、掃除をして、
旦那さんと合流して、家に入る。

麻布十番の家は、玄関を入ったら、ドーンと部屋があって、
キッチンも寝室も同じ空間にある間取りだった。

トメはフローリングの床をテテテテと歩き進み、
部屋の様子を確かめていた。

迎えに行く前に買った網の策のケージを指して、
「ここがトメのおうち」と説明すると、
一回、中に入って、すぐに出た。

「まぁ、慣れるまでは、好きなところにいてもらおう」
旦那さんはそう言った。

ちゃるさんから1つアドバイスと忠告をもらっていて、
それは、トメは基本的に穏やかで優しいけれど、
食事については、前のめりすぎるところがある、
つまり、強欲だ、ということだった。

「多分、前のところでは、子供を産まされていた頃は、
 十分にごはんを与えられなかったんだと思う」

水とフードとをお皿に入れると、トメはものすごく近くに寄り、
勢いよく食べた。

「お手」も「お座り」もまだ知らないトメは、
それをどうやって教えていいかわからない男2人の足元で、
ガツガツとフードを平らげた。

それから人間の食事。
足元で、でも少し距離をとって、トメがそれを見ている。

そんな風にして、2人と1匹の生活は始まった。

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