#7だから何度も言っているように、

私は後方支援に興味がない。

もちろん春陽のことを下に見ているわけではない。だけど、見たことのないものを誰より先に見たいと言う気持ちが抑えられないのだ。

ベガは先遣隊が探査し終わった星だ。その星に危険因子がないことを確認し、次に鉱石や植物などを調査して、有益な情報を持ち帰る。その調査の時点で私たち学生を駆り出し、探査の訓練も兼ねて人件費を削減しようという魂胆だ。

だから特に興奮したりせず、訓練を適当にサボって森へ進んでみた。見たことない植物もあるように見えるが、図書室の図鑑で見たような気もする。単に勉強不足だろうか?そんなことを考えていると、「見たことないものを"見たことがない!”と言えるのって、実は難しいことなんじゃない?」と呟いた春陽の顔が浮かんだ。そんな説教くさいこと言うなよーと普段なら茶化していただろうが、その言葉はなんだか頭に残っている。

二本目の煙草を吸い始めた時に、森の奥から声をかけられた。
あんまり驚きすぎて腰を抜かしてしまった。何が探査科だ情けない。
「ーーーーー。」
見たところ男のようだ。レスポールスペシャルの銃口を下げながらこちらに話しかけているようだが、言葉がわからない。
「お前、どこからきたんだ?アトムスカの先遣隊の残りか?」
もしそうだとしたらこの言葉遣いに叱責を受けていただろう。
男は言葉が通じないとわかって呆れたような目をしている。
装備品を見るからに、ついさっきまで戦争でもしていたかのような泥があちこちについている。男が狙撃手をやるなんて聞いたことがない。珍しい。

あんまりジロジロ見るのも良くない気がして気まずくなった。煙草を差し出すと断られたが、他に挙げられるものも手持ちにない。二度目も断られたら立ち去ろうと考えたが、受け取ってくれた。

なんだかもの悲しい表情で煙草を吸うその男を見て、保護しなければならないと感じた。

通じないながらも説得すると、ふらふらしながらも男はついてきてくれた。

もしかしたらこれが"見たことないもの"かもしれない。

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