「甘いものとタバコは合わないの。なんか口の中で混ざり切らないんだよ」
風香が制服から着替えた後は耳にピアスがたくさんぶら下がっている。
重そうだし、引っ張ったら痛そうだからあんまり長く見ていられない。

「甘いものが食べれなくなるなんて最悪じゃんそれ。やめなよ」
何度も言ったセリフを、もはや冗談のように言う。私は死ぬまで吸い続ける、と風香はいつも言った。

学校の近くの自販機にはいろんなフレーバーのたばこがあるのに風香はいつも青いパッケージの飾り気のないものを選んでいた。私は白っぽいパッケージにバニラと小さく描かれたタバコを選んで買っていた。

あと何年かしたらこの駅にも喫煙所ができるらしいよ。
「最悪だわほんと。考えらんないよね。どうしてもそうしなきゃいけない理由でもあるのかな。」
売店の新聞の一面を眺めて言う。タバコを吸う場所を限定されるなんて想像もつかない。

「春陽の学校は男子結構いんだよね？」
「そうだよ、確か今年から男子も制服スカート選べるようになるらしい。」
最近は電車で痴女被害が相次ぎ、男性専用車両ができたようだ。被害者の男性には申し訳ないが、他の車両が混んでいるのに男性専用車両が空いているのを見ると少し理不尽に感じる。