#3だから何度も言っているように、

春陽が一番怖い。

私に対してネガティブな行動をとるから、と言う意味ではない。
むしろ逆だ。

今は私の後ろをつかず離れず歩いている春陽が、知っている人間の中で一番怖い。それは、すぐに怒るだとか、腕っ節が強いと言うわけではない。むしろ、怒らないのだ。たとえば、誤解で男子のいじめの犯人にされたときも、自分以外のミスのせいで訓練が伸びたときも、不良に喧嘩を売られたときも、怒りを顔に出すことは一切なかった。

希望する学科に特化している今の学校へ転校した後は、学校内はどうだか知らないが、放課後の様子から察するに変わっていないようだ。
かといって弱そうな印象はなく、あの自信は一体どこからくるのだろうかと会うたびに不思議に思う。

ショップに着くと雑誌で何度も見た憧れの機種があった。
「うおーSVBの旧型だ!!めずらしいなあーーほしいーー」
「マニアックな趣味してるよねぇ風香も」
そう言いながら春陽はグレッチのコーナーへ歩いて行った。

明日の校外学習ではリアブリッジにある二校が合同で探査に出る。目的地であるベガは探査本隊が何度も往復していて、安全が確保された状態らしい。

「春陽は後方部隊の希望でしょ?今回の持ち物は多いんじゃない?」
「まぁそうはいっても見学くらいだよ。機材も大体向こうに置きっぱなしらしいし。そっちの前線組は今回やることないんじゃない?」

そうなのだ。彼女の言う通り今回は安全確認済みの地点のため、前哨の訓練をするにとどまる。探査の醍醐味である未開の地をゆく感覚は今回味わえない。

「そうなんだよ。せっかくの校外なのになぁ」

今買うには到底及ばないSBVを横目に、予備のカポタストを買って店を出た。

「夕飯どうする?」
「ん〜今日は自炊がいいな」
「おっけ。材料余ってるし、帰ろうぜ」


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