きゃわふるTORNADO 定期公演【ビッグオニオンつれてくよ〜】#22

仕事帰りに押上へ。 定時で逃げ出せば(多少残業しても)十分間に合う時間なのは有り難い。

「特典会はハロウィンコスでやります」との事であった。淫祠邪教のカボチャ祭りに何の思い入れもない私のような者にとっては「ああそうですか」くらいの感慨しか無いが、本人たちが楽しそうなのは良い。(血だら真っ赤みたいなのは御免蒙りたいが)。

去年のハロウィンで死霊の盆踊りみたいなのをやって不評を囲ったのに懲りたのか(各方面へ与えた衝撃も大きくは合ったが)、今年はライブ本編は(けものの耳が付いたりはしていたが)いつもの衣装。
例によって激しく踊るので、石川以外のメンバーのそれは外れ始める(微動だにしない頑なさ加減が、実にどうも石川らしい)。 こうなると鬱陶しくなるのか自ら引き千切って袖に投げ棄てるのだけれど、散乱するヘアピンを然りげ無く拾って片付ける道地文子が健気だった。

そんな道地文子は毛先を軽く内巻きにしたショートポブ。
これがまた、直視するのが気恥ずかしくなるくらい良く似合っていた。
これで堕ちた人も居たのではないか。

神咲くるみは、なんと言うか、そこに存在するだけで「救いが有る」感じ。
ふんわりと柔らかく温かく、時折気高い。

石川野乃花と杏斉ゆかは、「自分にしか歌えない歌」を会得しつつ有る。
それが喧嘩せずに共存しているのも、このグループの面白さであり、まだ荒削りながらそこに割って入ろうとしている別所佳恋も頼もしい。
別所は将に「伸び盛り」と言う感じ。 激しく大きいだけでなく、歌声にも動きにも情緒が乗りつつ有る。

さて、学業やら体調やらで活動停止していたメンバーが復帰して初めての定期公演。
宮瀬しおりの体調が見るからに悪く、曲間に袖で咳き込んだり、後ろを向くタイミングで咳き込んだり、自分の歌割りが無いところで咳き込んだり、隙きあらば「この世の終わり」みたいな顔で咳き込んだりしており、よろけて後ろの壁にショルダータックルをぶちかましたりもしていたが、自分の歌割りはきっちりこなし、咳き込んでいない時は常にニコニコと歌い踊っている。
やる気と体調が噛み合っていないけれど、やる気は満ち溢れているのが見て取れる。
やらせるか休ませるか判断に迷うところだったと思うが、私は休ませたほうが良かったと思う。
良いときも悪いときも、割りと長い事見てきているが、これ迄で一番ハラハラする一時間ではあった。

こうした場合、そこにだけ目が行ってしまうことがままあるが、そこはそれそうならないように他のメンバーがチョコチョコと「いつもと違う何か」を盛り込んで、視線がそちらに行かぬようカバーしていた。
良いチームだと思う。

出張帰りに押っ取り刀で駆け付けたり、夜勤前に「眠い」とボヤきながらも見に来たり、客の方もそれなりに無理をして見に来てはいるようだったが、それだけの価値はある充実した一時間。
私も私なりに仕事上の宿題や懊悩を抱えているので、帰って酒呑んで寝っちまおうかとも考えていたが、矢張り見ておいて良かった。
彼女らのライブに身を委ねることで、時間と空間を共有することで、何かを頑張ることに肯定的になれる。

人生は案外捨てたものではなく、世界はときどき美しい。

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