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『SUNDAY GIRLS』season2 ep.4

満員札止になるかもしれないと聞き、早めに行ってみたが出足は何時も通り。
遅い時間の出演者目当ての客が出番の時間に来たらしく、終盤に鮨詰め。

客の方が所謂「対バン ライブ」に悪く慣れてしまっているのだと思う。
SUNDAY GIRLSは、主催の関美彦が見たい出演者だけで顔付けしているので、始めから終わり見どころだけで出来ている。 思わぬ拾い物に唸らされることも屡々。
物販が基本的に終演後なのは、全部見て欲しいと言う考えからであると、私は受け取っている。

リハーサルが長引いて遅延することがままあるが、今回はオンタイムで開場。
終わってから逆算したり考えたりしてみると、楽器と合わせなければならない演者が、今回は少なかったようだ。

マイモーフ
いろいろあったらしく、代理ボーカルとして新山ひな(うさぎのみみっく!!)。
持ち歌ではない上に新曲だったりもして歌詞が憶え切れてはおらず、作ってきたカンニングペーパーを見ながらの歌唱。
あまりにも負担が大きいので、4曲中1曲は新山ひなのソロ曲「よく晴れた日には」、こちらは後ろが苦労することでバランスを。
松尾宗能の書く曲は本人曰く「大滝詠一イズムに影響されているので」、譜割りが難解。
歌いこなすところまでは行かず、懸命に音に言葉を重ねる感じではあったが、それでも「歌」として聴かせてしまう。
出そうしなくてもにじみ出る個性。 追い詰められたところで一と際強く輝くのかも知れない。

ミア・ナシメント
矢舟テツローがポロポロと弾き始めたピアノがいつしかイントロダクションとなり、ミア・ナシメントが登場。 この辺りの舞台設定も良い。

昨年目にしたMILLI MILLI BAR(ミア・ナシメントがボーカルを務める)の惹句
「座って聴ける、オトナのアイドルポップス」
蒙を啓き、絵解きをしてくれたのが、この一文だった。

矢舟テツローのピアノはジャズ寄りで、うねって跳ねて華やか。
ミア・ナシメントの歌は嫌味無く巧くて、スパイスは利いているが、耳には優しい。
そう、私が聴きたかったのはこう言うものだったのだ。

桜愛美
出番前の転換時に、スタッフがスタンドごとギターを倒してしまったが、素早くチューニングし直して舞台へ。
LinQのOGには珍しく、刈り込む芸。

ギターが躰の一部のように、意図したとおりの様々な音を出していて、そこに噛み締めて味の出る歌声が乗る。

宗像明将
アイドル界に衝撃を与えた時事ニュースに話題は集中するのだけれど、そこに挟み込まれる関美彦のアイドルプロデュースに纏わる話は更なる衝撃を開場に与えた。

天野なつ
歌は上手いし曲も良いのだけれど、客に対する圧が強い。 これはまぁ盛り上げようとする善意でやっているのだけれど、客との掛け合いが多く、同調圧力も強めで、ちょっと私は居心地が悪い。
参加して当然、やらない者は悪であるかのような「ラインダンス案件」「肩組み案件」などに比べれば平和な上にも平和なのだけれど、譬え善意から発したものでも、客を統制する仕掛けを、私は好まない。

そのあたり差し引いてもプラスなのは、兎に角曲が良く出来ているから。
自分でもやりたくなる気持ちは分からないでもないが、これだけの作り手が揃っているなら任せてしまって良いような気もする。

なんちゃらアイドル
ゆるく始まるかと思いきや、意外に激しい。

アイドルをやりたくてアイドルをやっていると言う感じではなく、何かやりたい面白いことがあり、手段としてアイドルという形態を採っている感じ。
アイドルと言うものを狭く捉えようとする向きは多く、言いたいことも分からないではないが、なにか面白いことをやろうとする時に「アイドル」と言う形態を採り「アイドル」と名乗るのは悪いことではないと私は思う。
事実、目の前で歌い踊るなんちゃらアイドルは、まつろわぬ民の宴のようで実に面白かった。

CHiSEMiKU
歌って踊れて喋れる。 LinQとしての紆余曲折とか、婚期を逃したとか、自虐とボヤきを織り交ぜながらも明るく楽しく、そして激しく。

客のガヤも拾うべきは拾い、流すべきは流す。 良い意味で年の功。

WAY WAVE
ここだけ完全撮禁。 「見て欲しい」「聞いて欲しい」と言う事なのだと了解している。
ANNASとしての二人は歌もダンスも金の取れる芸なのだけれど、WAY WAVEは歌に特化してきていて、繊細でありつつ力強い。
上から下まで音域は広く、駆け上がったり駆け下りたり、透き通った裏声から野太く張った低音まで、囁いたり叫んだり。
涼しい顔で割りととんでもないことをやっているので、見ていて思わず笑ってしまう。
ケレン味なく、歌声だけで惹き付けて離さない。
オケをパッケージとして組んだ上でPAに渡されているのだと思うが、曲順も繋ぎも良く、「一と幕物」として巧く作られている。 この辺りは西田一生の仕事か。

姫乃たま
昼間からどれだけ飲んだのか分からないが、開演からでも4時間経過しているので、かなり聞こし召していたのだと思う、が、顔には出ない。
そもそも素面でも酔っていてもあまり変わらない。
(ちびりちびりとやりつつ、着実に量を減らしていく呑み方の業の深さは、また別の話。)

会場全体に目配り出来る箱だと無類の強さ。 全盛期の林家三平(※先代)もかくや、目に付いた客を上げたり下げたり。
そしてアサダ二世のように、なんとなく客を巻き込んで行く。

「根多が決まっているのが漫談、決まっていないのがフリートーク」と前田隣先生は定義していたが、これから歌う曲・歌い終えた曲については大体根多は決まっており、歌謡漫談の趣。
分かっていても面白いのでホンモノだと思う。

で、ヘラヘラ笑いながら見て(聴いて)いるのだけれど、曲はきっちり作られている。

アイドルとしてSUNDAY GIRLSに出演するのは、恐らくこれで最後と言うことで、関美彦のピアノで一曲。
アイドルを辞めても「人間として出ます」とのことで、しんみりはせず。

いつも何かしら発見があるSUNDAY GIRLS、次回は5月頃だろうか。


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