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刺激が足りないあなたへ。


洗車機ってかけたことありますか?
アレはすごい。すごいよね?
めっちゃスリリングじゃない?


まずはじめの難関。

あの、鳥居を進化させて
あらゆるフォルムをそぎ落として枠だけにしたら
こんなんなりました、羅生門でもきっとこうなると思います。


みたいな、まっ四角で愛想のない外観の
洗車機の内側にエルビス・プレスリーの
モミアゲを彷彿とさせる
洗車ブラシがぶら下がっている。


だいたいどこの洗車機も薄汚れたブラシやから
まず、その段階で二の足を踏む。


なんか、めっちゃ汚れてない?
あの汚いブラシで わたくしの愛車を
ゴシゴシされて、大丈夫?
ブラシの汚れが付きそうじゃない?


と、すでに汚れが溜まり過ぎて
呪われたような黒い三本線を
あちこちからツララの如し垂らしていることを
棚に上げて悩む。


悩むけれど、致し方ないとアクセルを踏む。
洗車コースを選び、支払いを済ませて更に進む。


さぁ、こっからが正念場です。

十分に幅をとってあるのでしょうが
狭い。もっと広くしてほしい。
洗車機のあの門が子ども用トイレのように
小さく感じる。


高さは問題ないけど、幅や幅。よ・こ・は・ば。
ケチケチせんと、あと、1.5倍は広げて欲しい。

毎回、左右どっちかのボディを洗車機に
こすられるんちゃうかと冷や冷やする。


何となくの大体で「ここや」と
位置を定めて停車するので、完全に一か八かで
いつもお腹の奥が痛くなる。
せやから外に降りて確認したいのに


クルマ カラ オリナイデ クダサイ

と、機械音が案内するから渋々
車内に留まる。(しゃーなしやで、しゃーなし)


でもさ、車に乗ってる必要ってあるぅ?
ピチピチに窓を閉めて
エアコンもエンジンも切って何するん?
ハンドブレーキ引いて、パーキングにもしてますやん。

洗いあがってから、ドア開けて
乗ったら、それでよくない?


って思うけど、洗車機に入る前の
窓をビッチビチに閉めたり
耳をたたんだりの直前準備のところで

あ、耳ってサイドミラーのことな。


いつもアワアワしてしまって
まだ何も準備してないのに
最初にエンジンを切ってしまうから
もう一回エンジンかけて全てをやり直すうちに
我を失う。

そしたら、車から降りるタイミングも失う。
そんなこんなで、車から降りたことはまだ、無い。


そうこうする内、こちらの都合はお構いなしに
洗車機が寄ってくるから、目を閉じて天を仰ぐ。

「神さまーーーーー!!!」
(こすらんといてー)


祈りだけでは不十分やから、わたくしめも
運転席でちいちゃくなって車幅のダイエットに貢献する。


そしていよいよ、擦るかもしれない
あの恐怖の瞬間を迎えるときは

予防接種の際に注射針を見ますか
それとも見ませんか問題よろしく
決められないままその瞬間がやってくるので
薄目で対応。


よかった~
擦ってないわ~


と、安否確認をしてホッと気を許すと
エンジンがかかっていない車に乗っているのに
車酔いが襲い掛かる。


だってな、ほんまは洗車機が動いているのに
車が動いているんちゃうかって錯覚に陥らせる
あの洗車機の前後の動き、あかんて。


高層エレベーターで上階から降りてくるときの
「うぉん」て、みぞおち辺りで感じる
あの気持ち悪いのんの横揺れパターン、な。


エンジン切ってるハズの車がなんで動くん?!
と、さりげなく左脳にジャブを打ち
アロハなハワイアンダンスのような前後運動を
繰り返すことで、断続的なフックを右脳に仕掛ける。


意識が朦朧としたところで洗い上げの水が
ザバーと発射されるから車中にいながら
思わず息を止めてしまう。


もしかして、まさかの欠陥車両やったら
隙間からお水が入ってくるかもしれんやん?


息を止めながら最後のあがきで
無意識に窓を閉めるあのスイッチを
カチカチこの後に及んで触ってしまう。

もちろん動きませんから。
エンジン切ってますからね。


ぎゃー、絶体絶命
車から出してーー!!!



と、気力も体力もその全てを使い果たし
打たれたボクサーのように
グデングデンになったころ
ようやく洗車が終わり

エンジン ヲ カケテ クダサイ

の、あの機械音で我に還る。



はぁ〜、よかった〜
無事に出られる〜…



極限状態からの解放に
感謝の気持ちと生かされている感動で
目頭を熱くしながらエンジンをかけて
わたくしめのワールドワイドなアドベンチャーが終了!


なんか最近、ちょっと刺激が足りひんわ。
なんて思ったときは
お近くの洗車機へどうぞ。

脚本で韓国デビューを目指す会社員です! もし、アタイをサポートしてくれはるのなら…あなたのおはようからおやすみまで笑いで見つめるライオンと化します(ガオー)