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大山崎山荘美術館 木版画「蘭花譜」の存在

大山崎山荘「美術館」

この山荘とその施主については、私のゴルフアカウントの下記の記事で紹介しました。

明治の洋館目当てで行った大山崎山荘で、この洋館を建築した加賀正太郎氏と茨木カンツリー倶楽部の関係を知っただけでなく、「美術館」としての奥深さも感じたので、ここではそれをご紹介できたらを思います。

施設内案内図(パンフレットより)

まず安藤忠雄氏設計の建物に西洋絵画

案内図の中にある円形の建物は、安藤忠雄氏が設計した「地中の宝石箱」というコンクリートの建築物です。
ここに、モネの「睡蓮」やユトリロの西洋絵画が展示されています。

正直、「お金持ちが購入した絵画が展示されててそれを観ることができる」という意味ではよくあることです。
もちろん、少しの拝観料で実物を見ることができるわけで、それだけで庶民の私にはありがたいことなのですが…。

「蘭」を愛する

加賀正太郎氏がイギリスで吸収した知識は、ゴルフだけでなく、蘭の栽培に関してもでした。
イギリスのキュー王立植物園で洋蘭栽培を目にし、この山荘の裏手に温室を設け、1万近い鉢を栽培するに至ります。そこでは、交配種がいくつも作られ、それらの記録として制作・監修したのが「蘭花譜」(1946年発行)です。

ただの植物図鑑ではない木版画「蘭花譜」

現在、公開されている(2024年5月12日まで)「蘭花譜と大山崎山荘」という展示はこの山荘の「夢の箱」という建物で行われています。
この「夢の箱」という場所も、安藤忠雄氏が手掛けたもう一つの建物で、温室に続く通路の先に作られました。
(この通路もいいんですよ。案内図の右端に写真が出ていますが、穏やかな時間が流れている雰囲気のある通路です。)

最初、展示されている欄の絵を見て、「日本画?」と思われるぐらい淡い色調で、まさか版画と思いませんでした。
しかも1枚の作品を作るために80版もの重ね摺りを繰り返すというのです。動画でその様子が映されていましたが、1ミリどころか、まったくズレることなく色を重ねるなんて神業です。そしてその作品が100枚以上ある…。

自然を愛する気持ちと技術、芸術センスの融合

美しい蘭を栽培する気持ち、版元や摺りの技術、使われる和紙へのこだわりなど、この「蘭花譜」に集約されたものは心を打つものがあります。
そして、こうして後世に残る文化にお金を使うことを惜しまなかった昔の「セレブ」がいたからこそ、今、こうしてその芸術とその人の生き方に触れることができる。

とても心が動いた展覧会でした。


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