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世界陸連による陸上シューズのソール厚さの基準改定について

厚底シューズの新規定

7月28日に世界陸連(World Athletics)から陸上競技場で行われるレースにおける着用シューズの基準再改定について発表がありました。これは今年ずっと話題になっている、シューズのソールの厚みについての新基準となります。

修正後の新基準は、以下のように、ソールの最大厚さが規定されます。

・フィールド競技は3段跳び以外は20mm、3段跳びは25mm

・800m未満のトラック種目(800mは除く)は20mm

・800m以上のトラック種目は25mm

・クロスカントリーは25mm

・マラソンや競歩などのロードレースは40mm

・マウンテン、トレイルランニングは規定なし

今後、この規定に準じないシューズの着用はできなくなりました。ルール改定以前の記録については、旧ルールに準じたシューズでの記録であればそのまま有効となります。

また7月13日に公認シューズの第一弾リストが発表されました。今後、随時シューズが追加されていきます。

日本陸連からもこのルール改定について、日本語での説明がなされました。正確なルール改定内容についてはこちらの情報を確認してください。ソール厚さの計測方法例も説明されています。

日本国内の競技会における適応の詳細については追って通知されますので、国内レースの詳しい対応は続報を待ちたいと思います。

この規定によりランナーたちには少なからず影響があると思いますが、特にトラックの長距離種目全てで厚底シューズを使用することができなくなったことは、プロ・アマ問わず多少の混乱を招いているようです。

規制の目的は?

世界陸連によると、これらの規制は延期になった東京オリンピックまでに、現在のシューズテクノロジーの状態を維持するためのものだということです。

"The purpose of these amendments is to maintain the current technology status quo until the Olympic Games in Tokyo across all events until a newly formed Working Group on Athletic Shoes, which includes representatives from shoe manufacturers and the World Federation of the Sporting Goods Industry (WFSGI), have had the opportunity to set the parameters for achieving the right balance between innovation, competitive advantage and universality and availability."
引用:"World Athletics amends rules governing shoe technology and Olympic qualification system", World Athletics,  3 Aug 2020, https://www.worldathletics.org/news/press-release/shoe-technology-rules-tokyo-qualification-roa, (参照2020-08-15)

ソールやカーボンプレートなどシューズテクノロジーの発展と記録への寄与度が大きくなってきたこと

その技術発展に伴って、選手へのシューズ提供の偏りが選手の優劣を左右する可能性があること

これらが特にエリート選手の公平性を崩し、また各社による技術競争によってそれが加速していくことを懸念して、今年から様々なシューズの規制が行われているのだと思われます。

世界陸連では、高機能シューズが全ての選手に公平に提供されるための制度作りも始まっています。スポンサー契約をしている選手とそうでない選手との間で、シューズ提供の差が選手のパフォーマンスの差へ寄与する、つまり

シューズの技術に記録が左右される可能性が高まってきたために、スポンサー契約で優先的に高機能シューズを提供してもらえる選手が有利になってしまうということですね。

記録を出したのはシューズか?人か?

シューズに使われているテクノロジーはとても興味深いですし、これからまたどんなシューズが出てくるのか楽しみな反面、ランナーが努力により積み上げたパフォーマンスがシューズの機能によって隠されてしまうという懸念も少なからずあると思います。ランニング界の中では様々な意見があがっていますが、その辺りの考え方や価値観が変化し新しいものに順応していくのか、それとも大きな技術革新は強く制限されるようになるのか。

公平性を保てるようなルールは必要だと思いますが、長い目で見ればランナーを取り巻く環境は様々変化していき、昔と今の記録を比べるのは難しくなるので、新しい技術や価値観の中に順応していくことは必要だと思います。でもそれではシューズメーカー競争にランナーは振り回されてしまうのだろうか?

今後の動向を気にしつつ、ランナーにとって、シューズの変化が純粋にワクワクするものであることを願いたいです。

またクリエイティビティは限定されたリソースの中の方が高まることが分かっています。自由よりも、ある程度制限があった方が考えやすいのです。スパイクも含め規制の中でまた新しいイノベーションが起こる可能性も高いのではないだろうか。

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僕は一般の市民ランナーで趣味として走っているので、実際にはあまり気にならないというのが正直なところですし、好きな靴を履いて自由に走っていきたいなとも思います。

まぁでも1500mとかトラック競技も参加したいと思っているのですが。

最近ちょうどレースシューズを探していたのだけど、何にしよう...

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