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スポーツとブランク

100mハードル日本記録樹立 

 また一つ陸上の日本記録が誕生した。女子100mハードル寺田明日香選手が日本人では初めての12秒台を記録し12秒97日本記録を樹立した。この記録で寺田選手は世界選手権の参加標準記録も突破している。

 寺田選手は2013年に一度陸上競技を引退している。陸上を引退した後に7人制ラグビーへの転向や、出産を経験し、29歳の今年、6年ぶりに陸上に復帰した。

スポーツとブランク

 この寺田選手の日本記録更新を受けて、スポーツにおけるブランクの捉え方について少し考えた。

最初に陸上を引退するまでは日本選手権を三連覇するなどすでに日本のトップ選手であった寺田選手だが引退してから今年まで6年のブランクがある。彼女自身はそのブランクについてネガティブな感情を持っていないかもしれないが、陸上競技というスポーツから離れた期間があるのは事実だ。

その間に7人制ラグビーに転向しアスリートとして活動していたが、陸上とは全く別の競技だ。さらに出産も経験し、年齢も重ねて、もう一度陸上でトップを目指すことは身体的にも精神的にも難しいことだと思う。

しかし寺田選手はそんなブランクなど関係ないと思わせる走りで日本記録を更新した。陸上から離れた期間をどのように埋め、乗り越えたのか?

最も高いのは心理的ハードルか?

 僕もスポーツをずっと行ってきた。一般にスポーツ選手は一つのスポーツ、種目を専門にトレーニングを継続して行う。

トレーニングを継続するというのは競技力を向上させるのはもちろんだが、それと同じぐらいトレーニングをしっかり行ったという心理的充実度のようなものを満たす要素もあると思う。そしてそれは自信につながる。

例えば、怪我などで長期間トレーニングができなければ、焦燥感や不安感にさいなまれる。そのブランクを取り戻すためのトレーニングも大変だが、それ以上に、ブランクを取り戻し、もっと上を目指すんだというポジティブな思考と強い意志が必要になる。

多くの人はブランクがあったり、歳を重ねると、もう全盛期には戻れないと思ってしまうのではないだろうか。そしてそれは肉体的な要因よりも、心理的ハードルの方が高いのかもしれない。

ブランクを乗り越えて

 寺田選手曰く、ラグビーでの経験も陸上競技に役に立っているという。また結婚や出産を経験して、昔との身体のギャップや家庭環境の変化についてしっかりと受け入れた上で、そこから変えていくことで昔の自分を超えて進化していけると信じて練習をしてきたとのこと。

ラグビーで得た経験も力にし、ブランクを補うためにトレーニングを積んで、過去の自分そして日本最速の記録すらも超えてしまった。

寺田選手が教えてくれたのは、様々な経験は自分を強くするためのトレーニングの一部になるということ。そして昔と今のギャップや現状を認め、そこからまた一つずつ努力を重ねることで、まだまだ成長していくことができるということ。

競技者のレベルは様々なれど、スポーツに向き合う姿勢や心持ちは同じ。どんなアスリートでも、寺田選手のような現状を理解し成長していこうという姿勢が大切であり、それがブランクの乗り越え方なのだと思う。